第十二夢。ロー様は魔王?! プロローグ
注意!!!極めて残酷で不快な表現を含みますので、今回はスルー推奨です。
「R15」「残酷な描写あり」タグをつけました。該当の方は気をつけてください。
普通の汚れ仕事の餓鬼族退治。
返り討ちにあった新米冒険者たちの敵討ちと山奥の寒村に乗り込んだ『夢を追う者たち』であったが……?
「そんな話があってたまるか!!??」チーアの絶叫が響く。
メモ
ジール 戦士 ばか。ばかゆえに他の5名を引きずってくる強引さや決断力に優れる。
ジョージ 戦士 理知的な青年。実質のまとめ役。
ゼシカ 狩人の子 若干だが戦神の加護を使える。
キャル 精霊使い 黒髪黒目の半妖精。
ショーン 神官の子 知識神の使徒。体力がない。
ジェイク 魔導士。実は盗賊。最年長。
「最近、餓鬼族の動向が良くないわね」
暖かくなれば増えるし、寒くなれば襲撃も増える。嫌な風物詩だ。
餓鬼っていうのは妖魔種の一種である。毛のないサルのような容姿と道具を使いこなす知性、
常時腹を空かせていて泥から自分の糞から肉や野菜まで何でも食うという性質の悪い連中だ。
駆け出しの冒険者が王家の軍隊や貴族の私兵に代わり妖魔種の掃討戦を行う。
初歩的だが比較的気持ちが傷つかない汚れ仕事として極めて需要がある。
冒険者を呼べば多少は金を取られるが、いつ来るか解らん軍隊より早くて確実だし、少数だが強い。
伝説的な冒険者達の英雄譚だと最初の仕事として位置づけられていることが多い。
コレは仕掛けがあって、同じ歌の該当者の名前と行動を差し替えると別の英雄の初仕事に出来るからだ。
「らしいなぁ」
俺はため息をついた。相変わらず仕事がない。金がない。
俺の名前はチーア。黒髪黒目の半妖精で……目立つ容姿らしい。
俺に話しかけた娘はこの冒険者の店。『五竜亭』のウェイトレスでアキ・スカラー。
「ジールたち、かわいそうだったわね」
餓鬼族は人間より小柄で敏捷性に劣るが十から百くらいの群れを成す。
単体では弱い魔物に位置づけられているがサル並みの腕力がある。
サルの腕力って奴は侮れない。金属の棒でも折り曲げたり出来るらしい。
餓鬼族にとりつかれて内臓をごっそり食われる村娘の話はまれに聞く。
「だから、冒険者なんてやめろって一度は親父さんが追い返したのに」
農村出の若者が冒険者になろうと冒険者の店の扉を叩くことはよくあることだ。
大概の冒険譚はそうなっている。農村出の若者が町に出て冒険者となり、
餓鬼族退治を契機にさまざまな仕事をこなし、最後は竜を倒してお姫さまを助けて王になる。
勿論。大嘘だ。魔物どころか、追い詰められた野生動物は猫一匹でも人一人が戦うには強い。
餓鬼族は弱いものは苛め殺し、強いものには媚び諂うかすぐ逃げ出す卑怯な性質があるが別段弱いわけではない。
毒も扱う……というか、不潔極まりない(ウンコまみれの)破損寸前の錆まみれの武器を好む。
錆まみれのボロボロの剣で攻撃を受けると、鋭い剣より癒しにくい。
普通の人間が振るう錆まみれの武器ならしっかりした鎧で防げるのだが、
小柄で怪力な連中からすればこちらのほうが使い勝手が良い。最適な選択である。
また、毒代わりに塗りこまれたウンコで破傷風になる。
多少ながら策も弄する。数がそろえば小さな村など容易く滅ぼす。
「仕事の依頼きてるんだけど」「どんな? 」
決まってるでしょ。とアキは肩をすくめた。
「ジールたちの敵討ちよ。……報酬は少ないけど……受けるでしょ? 」ああ。俺はそう答えた。
銀の短剣を砥ぎ、弓と矢の具合を確かめる。問題はない。