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エピローグ。あの『腕が』あれば

 俺たちは一粒一粒がリンゴなみに馬鹿でかいぶどうを報酬にもらったわけだが。

「葡萄なんかもらってもなあ」「なの」「ああ」 ……一口食ってみる。恐ろしく。美味い。


 「……ま、これはこれで」「おい! しー! のっ! 」「ああ」

俺たちの脇からすっと白い手が伸びる。アンジェだ。


 「……この葡萄って」

「おい。アンジェ。俺の分までとるなって」「いや、これは俺のだ」「ぼくのだよっ! 」

俺たちを無視して葡萄の粒を持って走り去るアンジェ。


 俺たちは、あいかわらず喧嘩している。

え? 『平和』? なにそれ? 美味しいの?


……。

 ……。

 「あら。美味しい」「これは、美味いな」

そういって「あーん♪ エイド♪ 」とか、「あ~ん♪ お前♪ 」とかやってる美女と野獣。

勝手に俺たちの報酬を取らないで欲しいんだが。


 え? なんで奪い返さないのかって?

店で喧嘩してエイドにされているから無理だ。うん。

あのときの『腕』カムバック。


 「これって」

アンジェに渡された葡萄を見たアキが五月蝿い。

「エイドさん。……これ、上位巨人族の葡萄よ。『貴腐』っていって食べる秘宝って言われているわ」

「は? 」「なに? それ? アキ? 」「……私も食べるのは初めてだけど……間違いないわね」

アキは慎重にその林檎並みにデカイ葡萄の粒を見定めると、保存用の容器に入れた。


 「これは、食べた人の生命力を活性化させるとか、

食べた人は一度死んでもよみがえることができるとか言われているわ。

わざと腐らせると、プツプツと泡を放つ美味しいジュースになって、やがて最高のお酒になるの」

へぇ。そうなのか。そんなのはどうでもいいから助けてくれ。起こしてくれ。

「伸されているの……かわいそう」アンジェはそういうと、俺に蹴りをいれた。

「今回は『貴腐』も含めてこの程度で許してあげる♪ 」

アンジェはそういって動けない俺の頬にキスして去っていった。

脱がされるよりマシかも知れないが、むかつく。


……。

 ……。


 「俺たちは無敵のグローガン一家様よっ?! 」

騒ぐ禿ども。マジ五月蝿い。彼らが上位巨人族を斃したのは間違いない。

でも、アレ、神と呼ばれる各種族の力を奪った一時的なものだからなぁ。


 あ。知り合いの盗賊のレッドがグローガンたちを殴ってる。精霊使いのフレアまで。

……俺とめねぇからな。勝手にやれよ。おっと、テーブルは壊すなよ?


 「ちぃや。『平和』使わないの? 」

ファルコがのんびりと言う。ばっか。


 「あいつらは、アレで良いんだよ」

俺はそういって、笑う。良い薬だ。


 「すいませんでした」「宜しい」

笑っているアキ。店の石畳に『正座』させられているヤクザ者20名ほど。

「いい歳して、最強とか、痛すぎるし! 」「本当なんですって……」

「最強だったら、私に投げられない」そうすまして応えるフレアだが、コイツは巨木を片手で引っこ抜く。

 「おっかしいなぁ。スッゲーパワーついたはずなのに」

「そうそう。もう世界一つええっておもった」「俺も俺も」「俺も」

ヤクザ者どもが五月蝿い。まったく、良い大人が一時的な神の加護程度で調子のってさ。恥ずかしいぜ。


 「なぁ。アスラ」「きゃきゃ」

俺は普通サイズになった赤ん坊を抱き上げた。

もうすこしで、走り回るようになるんだろうな。


 「アスラ~。笑ってないであの『腕』くれよ~」

泣きそうなグローガンたち。無理言うな。もうこの子はただの赤ん坊だ。


 「あ、おしっこ」

「あ~あ。仕方ないなぁ」

ファルコとロー・アースがおしめを換える。

『やさしきだいち』が微笑んでみている。『あかるきおおぞら』も。

とんでもない美男美女の来訪にみな、呆然としている。無理もないか。

二人もまた、アスラの『腕』に命を救われた。


 「本当に、本当に、皆様ありがとうございました」

そういって頭を下げる二人に、慌ててかしこまる俺たち。

「あ、いえいえ! 」「これからもよろしくおね」アキは情け容赦なく、そのチンピラの正座している膝を踏みつける。

激痛に絶叫する彼にニコニコ笑いながらアキ。「誰が動けと言ったかしら? 」


 「神様~~! 俺達が何をしたんですかああああああああ?????! 」

ハゲどもの悲鳴が、平和な酒場に響いた。


 もし、君が叶わぬ願いに心を痛めているなら。

もし、郊外の森の奥。奇妙な形の冒険者の宿を見つけたのなら。


 迷わず、『俺たち』を指名してほしい。

きっと。願いは叶うから。


ただし、『余計なオマケは』。自己責任で。

(Fin)

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