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8 つくられた『神』

 「しかし」

グローガンは20人も手下がいたらアスラが落ち着かないといって手下どもをさがらせた。

「『親』はアンタの叔父さんなんじゃねぇのかよ? 泥棒といって怒っていたぜ? 」

ファルコが俺のわき腹を小突き、軽く靴の先端を絨毯にこすり付ける。

 「クロスボウ きをつけろ」の合図だ。

クロスボウは素人でも撃てる命中率と腕二本や巻き上げ機を利用するため、恐ろしい程の破壊力を誇る。


 要するに、下がった部下に何かあったら即攻撃するように指示したようだ。

禿の癖にやりやがる。


 「アスラは。『生命の樹』から魔導の力で『作られた』のです」

な?「なんですって? 」「魔導だと? 」「みゅ? 」


 「俺は、叔父とやらがアンタを犯して作ったって言われたほうが納得できるんだが」

グローガンはそういうと、『ククリ』という鉈を構えて言う。


 「うごくんじゃねぇ」

おそらく、わざとククリを落とし。それを合図に一斉に矢と網を放つのだろう。だが。

「グローガン、多分、『あかるきおおぞら』と『やさしきだいち』は嘘ついてねぇぞ? 」「なの! 」


 「それに、お前らじゃ勝てん」

ロー・アースがやる気なさそうにつぶやいた。

「二人は、上位巨人族ハイ・ジャイアントだからな」「へ? 」

『あかるきおおぞら』と『やさしきだいち』は苦笑いした。「見抜いていらっしゃるんですね」

「上位巨人ってアレか? 『神』だとか言われている」グローガンが呆けたように呟く。

そう、エルフや上位精霊、上位巨人たちは神族そのものという説がある。異端だがな。


 「でね、でね。『アスラ』ってのは、正義の神様の名前~」

「『ヘカトンケイル』やアスラ神族、センシュカンノンとか呼ばれる一族だな」

ファルコの説明に、ロー・アースが補足する。


 次元を超えた複数の腕を持って、人々に救いの『手』を差し伸べ、

正義の怒りによって悪を討ち滅ぼす。ただし、その苛烈さから悪魔と同一視もされる一族だ。

特に、アスラは自らの娘を汚された怒りで戦った神として伝えられている。


 「つまり」「命名法則的に」同じ巨人族でも、別種族ってことか。

「……御明察、ですね」悲しそうに青年・『あかるきおおぞら』は呟いた。


 「アスラは、私たち『上位巨人族ハイ・ジャイアント』の『生命の樹いでんし』から魔導で創られた存在です」

「エルフ、上位巨人、竜、魔神、上位妖魔の『生命の樹いでんし』を合成して創られた、人造ヘカトンケイル。それが、この子」

な……。


 「なんだって……」

グローガンは青ざめている。


 「アスラくん」「……そういうことか」

ファルコとロー・アースが歯を食いしばる。勿論俺も。


 「『神』を創ることで、この世を支配するつもりなのです。叔父は」

『あかるきおおぞら』たちは、『神』と呼ばれる種族同士で叔父の暴挙と闘っていたが。

「この子は、生まれてしまいました」幾多の犠牲を其の身に宿して。


 「叔父は、今も罪を重ねています」

「罪? 祝福だよ。ちっぽけな蛆虫ウジムシどもが這いずり回る地上を浄化し、我ら神の時代を取り戻すためのな」


 いつの間にか近くに立っていた青年が微笑む。しかし、其の笑みは。邪悪な炎そのもので。

「アスラッ!!!!!! 『父』の言葉は絶対だっ!!!!!! このモノどもを滅ぼせっ?! 」


 「おぎゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!!」


 「アスラっ?! 」『やさしきだいち』が手を差し伸べるが、

その手は炎に、鎌鼬かまいたちに、氷によって砕かれる。


 ボコボコとアスラの背が沸騰するかのように煮立ち、

何本もの、何本もの腕が生えていく。まるで百足か、蜘蛛のように。


 「畜生ッ! 畜生ッ! こんなってあるかよっ?! 」

グローガンがナタを構えた。泣いている。アスラが泣いている。


 『アスラ』の腕から複数の氷が、炎が、風の矢が、稲妻が放たれる。

たまらずよろめく『あかるきおおぞら』。其の血が俺たちにかかった。


 「おぎゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!!」


 百八の腕を持つ人造神。『アスラ』はムカデのような動きをして、俺たちに迫る。

その腕の一つ一つに、炎氷風闇光樹雷土……人の悪心を象徴する武器を宿して。


「ふははははっ!!!!!!! ウジムシどもを血祭りに挙げろっ!!!! アスラァ!!!!! 」


 ファルコは小声で呟いた。

「大丈夫。僕らが、止めてあげる。あすらくん。なかないで」


 「……死刑」

意を決して呟くファルコ

ロー・アースの『武具着脱』の術により完全装備を果たした俺たち。

剣を抜き、矢をつがえて。


 涙を堪えて、叫ぶ。

「てめえの好きにさせるかぁあああああああああっ!!!!!!!! 」

アスラ。大好きだよ。

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