第十一夢。赤ちゃんは冒険者がお好き?! プロローグ
「や、チーア」
手を振り上げるアキ……この店のウェイトレス。アキ・スカラーを見て俺は嫌な予感がした。
俺。チーア。
ユースティティアとかティアとか言ったら殴る。
爽やかな風が吹く森の中にある冒険者の店。『五竜亭』。
俺たちは其の店に所属する見習い冒険者。である。
「俺、忙しいんだが」トート先生の手伝いがあるし、
神殿関係で呼び出されたりするし、コイツの所為で「婚約」する羽目になったり。
とにかく、昨今ロクでもないからだ。
「『糞を追うもの』のチーア君に頼みたいことがあるのだ」
「しばくぞ。コラ」
ちなみに、先日下水道に侵入したからそういう渾名がついてしまった。
ケタケタ嗤うアキに拳を震わせる俺。
アキは愉しそうに嗤うと、「『館』からの依頼なんだけど? 」そういった。
「……『まぼろしのもり』の依頼か」
「そそ。しかも、チーアたちを直接指名」
以前、鍛えると称して小悪魔に化けて俺たちに『館』の掃除をさせた
古代魔導帝国時代のエルフの大魔導士。『まぼろしのもり』。その実力は計り知れない。
興味を抱いた俺にアキは。
「手間は取らせないわ。簡単なことを指定の日と時間だけやってくればいいだけ。
時間が過ぎたらトート先生のトイレ? だったっけ。それの建設の手伝いにもいってくれていいわ」
ふうん。それならやってもいいかな?
「どんな仕事? 」
もとより、この娘の陰謀で借金漬けにされた俺に選択権はない。
「子守♪ 」
「バカにすんなぁあああああああああああああああああああああああっっ??!! 」
なんで冒険者が子守する必要があるんだよっ?!!!!!!
……しかし、コレがまた難物の依頼だったことを、俺たちは後に知ることになる。
え? どうしてかって? その子供だよ子供!
赤ちゃんの子守って大変なんだぜっ? 知ってたか??!
しかも。その赤ちゃん。2メートルもあったんだぜ。……マジで。
この物語は、巨人の赤子を世話する羽目になった、俺たちの苦闘の記録である。