11 黒猫と黒ローブと夢追い冒険者
一斉に作業員たちが短剣を抜く。
が。「「『眠りの雲』」」ローとポチが魔法を使うと作業員たちはパタパタ倒れた。
「役立たずどもめ……」黒ローブが舌打ちする。
俺は黒ローブに弓を放つ。が。「! 」
強烈な突風に吹き飛ばされる俺。くそ。やっぱり闇司祭か。『気』で矢をはじきやがった。
タン! と音がして女が消える。上からまたタン! と蹴る音。
女が大剣を手に俺の上から襲い掛かるが、ロー・アースが立ちはだかり、俺を突き飛ばした。
「あらあら♪ 坊や♪ やるわねぇ??! 」
必殺の一撃を止められた女は楽しそうに笑う。
闇司祭と黒猫はあちらで激しい魔法の応酬を行っている。
「貴様らっ?? 何故っ???!! 」
先日までの依頼人に牙を向くのは心苦しいが致し方ない。
「麻薬製造現場を押さえに来ただけさ。ゼムさん。あんた、やばいぜ?! 」
「慈愛神殿と正義神殿が人身売買の現場を押さえにいったの! ひどいよね! 」「なっ??! 」
「戦神神殿の精鋭部隊も向かっているぞ」「なっ?! 」
「貴様が金貨を渡した連中のリストは既にカントに渡っている! 」
ポチは叫ぶが、ゼムは誰が叫んだか判らないらしい。
「アナタたちぃ? 何者? 」女がおとなしい服を脱ぐ。
娼婦を思わせる露出度の高い動きやすい服。
大柄な体格にふさわしい真っ赤な長剣に舌を這わせる。
……俺たち?
「俺たちはっ!!! 」一斉に叫ぶ。
「「「夢を追うものたち!!!」」」
「へぇ? 悪夢もびっくりの不思議悪夢って噂の? 」
「「「余計な事言うなっ!!? 」」」三人で叫んだ。
なんじゃそりゃ??!
「遊んでいるなら私から行くわよ? 」
女は微笑むと大剣を手にダッシュしてきた。
「行くぞっ!! 」「おうっ!! 」「うんっ! 」
ロー・アースは俺の前に立ち、女と剣を交える。
「……なんて怪力だ」「あら? 素敵な坊や?! 残念ねっ? できたらベッドの上で会いたかったわ?! 」
激しく剣を交える両者。俺は魔法でローを支援する。
「いらずら好きの精神の精霊よ! 『混乱』! 」「……ウザイ子」俺の魔法は効かないらしい。
「男女の睦言を邪魔するコは、おしおきしちゃうわぁ? 」
大剣の一撃を銀の剣で逸らすロー・アース。かなりの強敵だ。
ファルコはおっさんの前に立ちふさがる。
「餓鬼がっ? この私に敵うと? 」「思ってる」
てぃ! とファルコは叫ぶと、ゼムの顔に大きな靴型がついた。
おっさんは一撃で昏倒した。
「フン。役立たずめ」
女はゼムに一瞥をくれると剣を軽く振って俺たちを威嚇する。
その剣に「キン! キン! 」と何かが当たる音。ファルコがダートを投げたのだ。
「僕もいるってこと忘れてない? 『おばちゃん』?! 」ファルコがにこりと笑う。
「三人がかりは分が悪いわね」女は苦笑する。
黒ローブも黒猫相手に苦戦しているらしい。
「贄どもよ。我が神の力となれ」
黒猫を魔法で捕らえた黒ローブが叫ぶ。
ポチは動けない。駆けつける俺の目の前で。
黒ローブは短剣を振り上げ。「ポチッ!!」
だが。その一撃はポチではなく、黒ローブ自らを貫いた。
なっ??!
……ボコボコと地面が波打ち、腐敗臭を伴う肉の塊となる。
「ふはははっ!!! 」黒ローブは自らの絶叫と哄笑と共に肉の塊に飲み込まれた。
「!! 」「見るなっ!! 」
ビチッ。ビチビチビチ……。
「なんて、ことを」
黒ローブは肉の塊に飲み込まれ、
あちこちに目玉や牙の生えた醜悪な肉の塊の魔物へとなっていく。
その姿はエイに酷似していた。
「ふふふ。どうする? 」女は楽しそうに笑う。
「……とても。かわいそうなんだけど」ファルコがつぶやく。
「死刑」