9 ねこまた これまた
「この猫、尻尾二本あるぞっ? 」叫んだ俺に。
「猫又だからな」とロー・アース。
「東方の珍しい猫だったっけ? 」こっちはファルコ。
……なんじゃそれ。
「我らは猫族の王だ。もっとも独立独歩のわが一族。そう簡単に令を下すことはないがな」
猫は尊大にこたえたが、木片にしゃぶりつきつつしっぽをふわふわ動かしているのでなんとも締まらない。
「え~と」自信はないが。「ポチさん? 」「にゃ~♪ 」あ。やっぱり。
ポチはララさんのご主人さん一家の猫である。本当は犬の名前らしい。
「えっと、よくわからんのですが、ララさんのご主人さんの家に一度戻ってもらえませんか? 」
そう頼んでみると。
「ララ?? ああ。昨今まで乞食をしていた元男爵家の正妻か」さすが猫。すごい調査能力。
「家庭教師としてカントの娘の世話をしておるな。愛い奴じゃぞ」
話を聞くと、ふわふわの毛のついた棒で超遊んでくれるらしい。
あの愛想のいい性格だし、一度猫と遊び出したらとまらないんだろう。
……娘さんの学力がいまから心配である。
「それはそうと、なんでゼム商会の猫もされていたんですか? 」本気で気になるが。
「何故? 複数の奴隷を持つのは猫族のたしなみであろう? 」おれら奴隷っすか。そうですか。
さすがにイヌハッカ棒攻撃には閉口して変身を解いて逃げてしまったそうだが。
にゃぁと鳴けば食い物を即座に提供するニンゲンをたくさん確保するのは猫の甲斐性らしい。
狩もロクにできない奴隷にはネズミやゴキブリを捕ってみせて範を示すのも慈悲らしい。
それであいつらうれしそうにネズミ持ってくるのかっ?? 狩人としては複雑な心境だ。
「もっともカントは我が友でもあるがな」はぁ。
聞けば東方貿易でやってきたカントことララさんの雇い主一家のご主人はポチさんの命の恩人で、
その縁でカントの一族を護るためはるばる海を越えてやってきたそうである。お疲れ様。
「しかし、困ったことになっておるのだ」???
「ゼム商会は麻薬と人身売買に手を出している」なっ???!
「しかも、カント商会を乗っ取る腹らしくてな」なんとっ???!
「もしよければ、協力してほしいのだが」