6 ヒゲをつんつんチクチクさせて
「なんと、このような魔物が邪魔していたとは?! 」
おっさんは大仰に驚いて見せたがかなりわざとらしい。貴様。実は知ってたんじゃねぇか?
「……この棒を押し付けている限りは大丈夫のはずです」
俺はイヌハッカを固めた棒をおっさんに見せる。
「ほう。このような便利なものがあったとは!?? 」
おっさんはうれしそうに棒を手に取る。
「ほーれほれ♪ よーしよし♪ 」
おっさんノリノリだな! 気持ちはわかる! わかるぞ! かなり楽しい!
「この棒を譲っていただけませんか??」まぁそうなるよな。
「いいよ~」ファルコはのんびりと答えた。
そして。おっさんの次の台詞はトンでもないものだった。
「では銀貨で一万二千で」「「「ぶっ!!! 」」
俺たち三人は絶句した。なんちゅう高額!??
「依頼の猫はまだ見つけていないのですが」「いえ。もう要りません」へ??
「こっちのほうが面白いですしっ! 可愛いですっ! 」ツボに入ったのか。酔狂な。
「ありがとうございました。今日のところはお引取りください」
……。
見つけてもいない猫を見つけた扱いで銀貨一万二千枚。いろいろありえん。
商人の家を追い出された俺たちは『五竜亭』に向かう。報告義務あるし。
肉屋に荷車代をはずんでやったので沢山スジ肉やスープ用の骨をもらえた。
今夜は鍋でも作ろうかな?ああ楽しみだ。
「ちいやのごはんおいしいの~」
うむうむ。ファルコ。愛いやつめ。
エイドさんたちに報告を済ませると、皆に一杯おごれとタカられた。
と、いうか存在を忘れつつある借金のカタにされて持っていかれた。
ま た 、 貧 乏 じ ゃ ね ぇ か !
嫌だといったがアキが勝手にドワーフ火酒やビールの入った樽を出してきて宴会が始まってしまう。
ああ、俺の銀貨四千枚が野郎どもの餌にされる。
「あ、そのスジ肉と骨でスープ作ってくれたら代金弾むわよ? 」……泣くぞ。
「……困ったわねぇ」
厨房に入るとアーリィさんが悩んでいるので「どうしました? 」と聞くと、
「白身魚を沢山手に入れたんだけど……すっごくプリプリで美味しいのよ? 」おお!
「でもね。骨が多い上にきつくて……どうしようかなぁ」任せろ!!!
「すごい料理を考えましたよっ??! 」
アーリィさんの表情が不安一色になった。
今から作る料理は下手に食事当番を任せたら熊をロープで絡め獲ってきたり、
骨だらけの魚を頭からバリボリ食べようとするやつ。
……つまりファルコがいるのでもう少し食いやすい物をと考えた料理だ。
白身をすり身にしちゃって、でもってスジ肉の塊を細かく切ってちりばめて、干しキノコも。
これで肉と魚とキノコのうまみがつくはずだから蒸して……。
「なに? それ」
アーリィさんやアキ、アキの母のメイが見守る中完成。
「おいしそう」とアーリィさんがつぶやく。うん。骨が気にならない肉もどきの完成。
「あ、いいにおい! 」というアキ。
「ホント! お前は料理だけは上手だねぇ! 女の子みたいだよ? 」メイがいらんこと言う。
……女だけどな。あと実は裁縫やら刺繍も得意だけどな。
「肉の代わりにシチューに入れてもいいスープが取れる筈だぜ」
よっしよし。試食試食。おお! いけてるいけてる! 及第点!
軽く焼き目をつけるとさらに香ばしくなる。
「厨房任せたら薪代がすごいことになるわね……」
「チーアには別の意味で厨房任せられないよね」
うっさいなぁ。食ってみなよ?絶対美味いって!!
その日は肉もどきを肴にどんちゃん騒ぎ。
スープができた後はレッドに無理やり酒を呑まされ、何があったのかは正直覚えていない。
ロー・アース曰く。
「 お 前 は 二 度 と 酒 呑 む な 」とのことだが気になる。
……うううう。気分わりゅい……これが二日酔いって奴か……死ぬ……。