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2 怠惰の爪

 「掃除だの、洗濯だの、子守にドブ掃除にトイレだの、薪拾いだのなんだとおもってやがるんだ」

依頼を受け、町に向かう俺たち。郊外の森のど真ん中にある『五竜亭』は地味に便利が良くない。

一応、二号店ってのが街中にあって、エイドさんやアーリィさんはこの二店舗を忙しく出入りしている。


 「……う~ん? 」

横をてくてく歩くファルコ。


 よく見ると俺の脚に追いつくためにその両足は少ない歩幅で滑るように飛んでいる。器用な技だ。

どうも苛立ち任せに早足で歩いてしまっていたらしい。ロー・アースが走って追いつこうとしている。


 「えとねぇ……えとねぇ」なぜ考え込むのだ。

「えっとね! えっとね! 」

ぴょんぴょん飛びながら楽しそうなのは解るが早く言え。


 「便利や(屋)ね! 」

天使もかくやの微笑みを下から向けるファルコ。


 ……。

「言いたいことはそんだけか~~~??? この口かぁ~~~!?? この口か~~!!???? 」

くだらない駄洒落を言う奴は嫌いだ。ファルコの口に両手の指をねじ込む。

「あ"い~~~ 」涙目のファルコをロー・アースが抱き上げる。

あ、ファルコめ。アカンベしやがった。後で殺す。



 「楽な仕事と思ったら……もうたまったもんじゃねぇ。俺、猫嫌いになりそう」

(盗賊 仮名レッド・レッドさん 自称21歳)

「ねこ ねこ ねこ ねこ ~!!! 」

(精霊使い フレアさん 『自称』15歳)

「……話すことなどない」

(聖騎士 バドさん 22歳)


 あの三人の話ってあんまり参考にならなかったんだが。

「結構しっかり調べているから捕まえるだけなら意外と楽そうなんだが」「うん」

「該当する猫の姿形はフレアから『聞いて』いるんだろ?」ああ。


 「あのねあのね~黒いネコさんさがしてるの~♪ 」

近くの猫に話しかけるファルコ。通じてるのか?


 一応、精霊の言葉って奴は便利なもので情報量が半端ない。当然のように画像つきだったりする。

もっとも、完全な容姿がわかるからっていって、猫固体の見分けが俺本人にできるかと言うと疑問だ。


 「盗賊の符丁で書いてるな……」

レッドが調べた情報は盗賊の暗号で書いてあった。何がなにやら。


 「ファルコ、ちと悪いがこの金で果物でも買ってきてくれ」「うん! 」

レッドの符丁は難解らしい。頭をひねりつつロー・アースが読み出す。読めるのか。すげぇ。


 「星(猫)の夜明け(出現時刻)は……か。これは場所? 」

意外と丁寧な字でビックリだ。レッドは育ちが良いのか?


 「えと、ネコさんは ゆうがたの 鐘4つで○○通りのドブ川ちかくを通ることがおおい? 」

いつの間にかファルコが戻ってきていて、ロー・アースの持つメモに目を通し、瞬時に解読してみせた。すげ。


 「……流石だな」

グラスランナーの駆け足と暗号解読能力マジ凄い。ロー・アースも俺もちょっとビックリ。流石本職(?)。


 「へっ! へぇ~ん! 」

元気に胸をはるファルコ。だが。


 「……果物は? 」何故か手ぶらなのが気になる。

「たべた!!! 」元気にうれしそうに答えるファルコ。


 「……あん? この口か? この口か? 勝手に三人分食うのはこの口か???!! 」

両のほっぺを引っ張るロー・アース。両脚をつかんで振り回す俺。食い物の恨みは恐ろしい。


 ……。

仕事の引継ぎの各所挨拶周りはエイドさんがやってくれるらしいので、

おれたちはレッドたちの調べた資料と自分たちの人脈で解決に向かうだけでいい。

ようは猫だけ探せってことである。

おれたちはファルコの財布から果物代を徴収して果物を食いながら町を歩く。


 「……おにいちゃんたち果物ちょうだい! 」

乞食? いや身なりが違うぞ……綺麗な身なりだがこの子は。


 「ローラ? 」

知り合いだった。ローラといって以前まで乞食をやっていたが、

様々な事情により、現在は正義神殿の神官をやっている少女である。


 正義神の神官服を身にまとって冗談(?)を放つ少女はついこの間まで母と物乞いをしていたとは思えない気品だ。

「……ローラちゃんだ~! レィは?? 」「あれ? 今日はワイズマン様いらっしゃらないのですか? 」

……レィが哀れすぎて俺は彼の無事を祈った。


 レィっていうのは何故か正義神殿で聖騎士見習いやってる糞餓鬼。備考として手癖が悪い。

「……あ、うん! え、えとレィは隊長さんと山に薪拾いに! 」ナニやってるんだよ?!

行き先を聞くと魔物の住む山だと評判の山だった。がんばれレィ。ガッツだ。


 気がつくと俺の果物を食っているローラ。どうもファルコが掏りとって渡したらしい。あとでしばく。

「おまえ、髪染めてね? 」「かつら! かつらを編みこんでいるの! ちょっと頭かゆい! 」そりゃそうだな。

普通の金髪じゃなくて『高貴なる金(ほんとうに金の色そのもの)』の髪ってのは目立つし仕方ないのかもしれない。


 「おいしいごはんが食べれるの~! べんきょうはめんどうだけどきらいじゃないの~! 」

楽しそうに言うローラに笑顔がこぼれる。


 「そういえば皆さんはここで何を? 」「猫鯖シー! 」元気に答えるファルコ。???

「……猫ちゃんを探しているのですか? 」「そうともいう」……よく会話が成立するな。


 「へぇ。銀貨一万枚って凄いですね! 」

楽しそうなローラとはしゃぐファルコ。


 「お前、『バイト』どうした? 」と聞くと今日は出歩いていい日らしい。

「……外出許可証は? 」慈愛神殿でも厳しいがあっちは罰則つきでめっちゃキツイ。門限もキツイ。

「聖女さまが偽造したようです」……あいつドミニク、マジで聖女か?


 「それより、ロー・アース様。出来ればお母様にあってほしいのですが」

「うん? どうかした? 」俺は横から話に入る。


 とある事件のせいでたった十二歳で『使徒』になってしまい、母と離れて過ごす彼女の願いなら。

(そのとき同席していた母親も厳密に言えば『使徒』だが基本的に周囲には内緒にしている)


「お母様のお勤めしている屋敷の猫ちゃんも失踪しているそうなんです」

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