8 これより式を始めます
パンパンとジェシカが手を叩き注意を惹く。
ジェシカも往き遅れだが、カレン(御歳45歳とは思えない)についで美女である。
大騎士の一族出身だけに一挙一動に華があり、嫌でも人目を惹くのだ。
その服装は裏方専門の侍祭らしく質素。悪く言えば地味だが。
……めっちゃくちゃ人目を惹く。引くんじゃなくて惹きつける。
そりゃ、なんども昇格を辞退するわ。目立ちすぎる。
そんなジェシカが参列者や新郎新婦に今日の式の解説を始める。
侍祭歴10年以上。進行を担当した結婚は1000組を余裕で超える。
言葉は少ないが身振り手振りでそつなく説明。解りやすく、それでいて楽しい。
……自分の式でなければなっ?!!
「相手コレとか」「……御互いさまだ」早くもおれ達『夫婦』の仲は最悪である。
祝福を与えるのは本来花形職の司祭であるモニカだが、今回は高司祭さま直々の儀式。
非常に大きなイベントになるので、まったく関係ない人々も来場している。
「恐ろしいほどの美男と如何なる花も霞む美少女の結婚式」
そんなフザケタ前評判で指定席のチケットがダブ屋で売られるほどらしい。
高司祭さまはダブ屋どもを見逃す振りして見事に抱きこみ、
彼らを衛視に突き出す代わりにかなりの売り上げを巻き上げたことを追記しておく。
聖女の癖にやることがマジえげつない。あんた失恋したばかりじゃないのか。
「では、三度の鐘が鳴る刻限に儀式を始めたいと思いますが。
……皆さん。体調が急に悪くなったかたはいらっしゃいますか? 」
「おれ……もといわたし」「俺です」
手を上げる俺とロー・アース。
「いらっしゃらないようですね」
にこやかに微笑むジェシカの目が殺す気だった。