5 豪華にやりましょう。素敵な式を
「『上手く進行すればそのまま王族並みの豪華な結婚が出来る』が最大の報酬だからね」
アキはカラカラと楽しそうに笑っている。
「……あのな」「意義ありまくり」ロー・アースと俺は抗議する。
だいたい、俺、『男』で通っているのに。
あと、寝込んだ親はどうした。
「そうだね。ばれたら流石に春祭りの冗談でしたですまないかもな? 」
エイドさんも楽しそうだ。
……なんでそんな仕事仲介したっ???!!! 舐めてるのかっ!!??
「そうね。ここに性転換の秘薬があるわ」「アーリィさん……移籍しますよ?」
性転換の秘薬はかなり貴重だが、元が男でもしっかり子供を宿せる身体になれる魔法の薬だ。
ついでに必ず前よりは容貌に優れた身体になるというオマケがついてくる。
「コレより可愛くなるの???! 想像も出来ない……嫉妬……」
アキが凄い勢いで睨んでくる。睨みたいのは俺だっ??!
「ロー・アース! お前が飲めっ??! 」
「俺には効かん」マジかっ?!
「この薬作ったのは俺だ」……。
まさかこういう形で使われるとは数ヶ月前の俺を呪うぜと彼は嫌そうにため息をついた。
「呑むの? 」男になっちまうけど。
いや、ロー・アースに「不束者ですが宜しくお願いします」と
頭を下げてリードされて処女喪失も凄く嫌だが。アー! な展開はもっともっと嫌だ。
「今なら無料よ」
アーリィさんが楽しそうに言う。悪魔だろ。
「まぁ、当日まで持っていて良いぞ。捨てたら罰金貰うが」楽しそうなエイドさん。
「……嫉妬を禁じえない」アキが睨んでいる。
ロー・アースの化けっぷりはマジ凄い。周囲の女冒険者たちも俺を睨んでいる。
目が合ってしまった。即座に彼女たちは目をそむける。
「なによ……男の癖に……可愛い」「私、そっちに目覚めちゃうかも……」
酒場の喧騒紛れの小声ですが、半妖精の耳には聞こえてしまいます。ううう。
「おい。チーア。今晩いくらだ?初夜の練習しね?」
お前ら、春祭りで花畑で呑みまくってたのは知ってるが、いくらなんでも悪酔いしすぎ。
特に知り合いの盗賊はマジ酷い。アイツ酒乱の癖あったっけ?
「チーア! チーア! 今すぐ取り下げて俺と結婚しろ!! 」と大暴れ。
ギャグにしては気合入りすぎ。むしろマジに見えて怖い。
「いやいや俺が」「俺が」「チーアは俺の嫁! 」
「男? むしろ大好物だ! 」「むしろ大歓迎」「贅沢はいわん。初夜だけでよい」
「俺は毎日添い寝してやる」「いやいや俺が毎日7回はイかせてやる」
他の連中も悪乗りして同意してるから更にタチ悪い。
「そういえばファルちゃんは? 」
アーリィさんがファルコ用に作った料理を手に小首をかしげている。
「……ロー・アース。お前の背中、羊皮紙張ってるぞ? 」
なんか書いてる。読めないけど。
『誰も相手してくれないので、一人走ってきます。ファルコ』
羊皮紙にはそう書かれていた。
……すまなかった。ファルコ。