表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/323

第一夢 始まりは本編より長く プロローグ

夢を追う者結成前の物語になります。

グローガンさんはこの時点では角が取れていないのでビックリするほど悪党になっています。

プロローグ。チーア


 ……あれが、車輪の王国の王都かぁ。

街道沿いに親父とテクテク歩いて歩いて、

やっと見えてきた王都は遠目から見ても小奇麗な街だった。


 親父曰く車輪の王国の王都は世界一でかい都らしい。

他の町と明らかに違う特徴として、冗談みたいに高い塔が馬鹿みたいに沢山立っている。


 「馬鹿と煙は高いところに昇るそうだ」

高い位置から親父の声。2m近い大丈夫だが、顔立ちは端正だったりする。黙っていれば。

旅から旅の生活をするようになって何年にもなる。田舎から田舎に、街から街に。


 俺は荷物を持ってくれる暴れ馬を宥めながらいった。

「親父よ。塔を建てた魔道士どもが聞いたらカエルにされっぞ」

この暴れ馬はとある草原で出会い、二週間ほど揉みあった末に俺の相棒となった奴だ。


 「馬鹿じゃなければ魔導帝国は滅んだりしねぇよ」

親父は笑った。本当に、この性格なんとかならんか。はぁ。とため息を俺はついた。


 「あの塔の塊どもは、昔はもっともっとでかかったそうだが、

古代の都市の上に今の街を乗っけてああなっている」

ふーんと言う俺に「ウソじゃない。本当だ」

……と言う親父だが、虚言癖が激しい親父のことである。


 「あんな街にアニキがいるのか?」「いたらしいぞ?」

おい?!お前本当に父親か??!


 俺、チーア。元狩人の親父と旅から旅への生活をしている。

何年も前に独り立ちしたアニキは冒険の旅に出て、今では慈愛の女神神殿の高司祭さまだとか言うが。


 「今更になって息子に会いに行くってまさか路銀タカリに行くんじゃねーだろうな?」

疑いの視線で親父を見る。親父はカカカと大笑いした。

「いや、あの街は俺と母さんの友人が多いんだ」「どーせ胡散臭い連中だろ」「酷いな」


 今までの実績があるからな。娘ほっぽりだして娼館で路銀使い切っただの。

「……いや、アレは男には必要な事なんだよ!!」「ウソツケ」


 「黒髪黒目の半妖精は珍しいんだっけ?大迷惑だったんだが」

「反省してます。すみませんでした」


 よろしい。

あ~。言い忘れたが、俺は一応、女だったりする。自覚は無いが。

『そのうち女の身体になって、色っぽくなって、男連れてきて……くうう!父ちゃんは泣きそうだ!』

と。親父は言うが、まったく想像できん。

とりあえずもうちょっと背は伸びてほしい。


 「ドライアドは凄かったんだぞ?エルフなのに乳尻ボインボイン」「やかましいわっ!」

胸と尻を手の動きで示す親父に俺は怒鳴りつけた。


とんだエロ親父だが、お袋もなんでこんなのと森を出てまでして結ばれたんだか。


 「襲ったのか?」

「失礼な。そもそも最初は乳尻どころか穴が無い」

阿呆な話題だが、何十回目かわからん会話だ。

……うそつけ。俺たち、木の股から産まれたのかよ。


 「本当だぞ? 妖精の女房ってのは子供を産みたいって心の底から望んで、

メシ一杯食って身体を作ってからじゃないと子供作れんのだぞ?」

マジでこの虚言癖何とかならんのか。親父は。


 街道の小石を蹴ろうと思ったが、整備された街道には小石ひとつ落ちていない。仕方ないから地面を蹴る。


 「で、当面の稼ぎはどうするんだよ?」

俺達親子の路銀は親父が引き受けてきたややこしい仕事とか、

狩人ギルドに一時登録して狩に参加したりして稼いでいる。


 「それなんだが」「?」「お前も14になるな」「ああ」

「そろそろ自立しろ。飯は自分で取って来い」「はぁああああ???!!!」


ナニ言ってるんだ糞親父???!!!


 「お前には狩りの技術や医者の技、料理に馬術と一通り仕込んだ」

殆どアニキの指導だと思うのだがっ!!!


「文字とか学問を覚えようとしなかったのはちと残念だったが」

やかましいわ!旅先で本なんか持ち歩くな!


 「あの王都の郊外の森に昔のなじみが経営している『五竜亭』っていう宿があってな」

それは知っている。冒険者っていう荒くれだかヤクザだか便利屋だか遺跡荒らしかわからん奴らが集う宿だ。


 「父さんが昔暮らしていた小屋の管理を任せてある」はぁ。

「俺に其の家に住めって言うのか?」舐めんな馬鹿親父。


 「いや、俺は隠居してそこに住む」

おい! お袋探すんじゃないのか?!!


 「俺も15のときに独り立ちしたもんだ」「俺はまだ14だっ!!!」

「あんまり変わらん」「変わるわ!ボケ!」

「とりあえず、自分の飯は自分で取って来い。ベッドは二つあるから寝に来るだけならかまわんぞ」


 ……おい。馬鹿親父。

「親父。殴っていいか?」

「勝てるもんならやって見ろ!」

今年に入って45回目の親子喧嘩に敗北した俺はこうして「一人で飯を食う」羽目になった。


 「小奇麗な森だな」

森と言うか、林と言うか見通しはとても良いし、他の森と違って昼なのに明るい。


 風は爽やかだし、まだ寒い日とは言え木漏れ日はまぶしく、綺麗な水が流れている。

「そりゃ王族の狩場だからな」

「……勝手に入って、手打ちにされたりしねぇだろうな」


 「『五竜亭』はこのへんが王族の狩場になる前からあるから大丈夫だ」

ふーん。


 親父の巨体が宙に舞う。

小さなせせらぎを大きく跳んでみせ、俺に「どや」としたり顔。やれやれ。


 「"美しい水のレディ。御機嫌よう"」

俺がせせらぎに頭を下げると、道を譲るようにせせらぎが流れる。

何事も無く俺がせせらぎのあったところを通り過ぎると、

「やっぱ母さんの子供だなぁ」と親父は呟いた。


 俺の耳はちょっとだけ尖っている。あと、珍しいことに親父と同じく、髪と瞳が黒い。

服以外の触れているものを発火させたり、せせらぎが道を譲ってくれたり、

傷が治るのが速かったり、爽やかな風を吹かせたりできるのはお袋の血筋らしい。


「いや、普通の半妖精はそういうことは出来ないらしいぞ」ふーん。

「やっぱり、『神の子』って言われるだけあるな」「やめろよ。親父。殴るぞ」

俺は親父とお袋の子である。女神さまから慈愛の力を与えられた『使徒』ではあるが。

それでも、『神の子』では断じてない。絶対ない。

黒髪黒目の半妖精は『神の子』となぜか呼ばれている。



 閑話休題。

テクテクと歩く俺達の前に「小屋」は姿を現したが。

「……コレ、樹だろ」

どうみてもでかい、めっちゃでかい樹でしかない。


「おー!なつかしの我が家!」駄目だ。コイツ聞いてない。


 「入国手続きとかしなくていいのか?」「いらね。郊外の森だしな」

この『小屋』周りなら獲物には困らないらしい。それって密猟だろ!


 「問題ない。捕まったら俺とドライアドの名前出せ」

「アホ!親父の名前なんて何の役に立つんだっ!」親子そろって縛り首とか洒落にならん。


 親父が何事か呟くと、大木は消え去り、小さな小屋になった。

トイレ、水場、厩、風呂までついている。かなり立派な代物だ。


 「……親父。この小屋は?」

大木に見える仕掛け?といい、どう考えても風来坊の親父にそぐわない。


 「この国の王様に作ってもらった。小さいが機能的だ。

街から上下水道を引いているから水汲み不要だし、

"熱き水"を遠方から引いているからいつでも風呂に入れるぞ」

……そんなうまい話があるか。


 「……王族馬鹿にするとマジで死刑だぞ?」

「馬鹿になんかしてねぇんだが」親父はぼやくと、家の中に入っていく。

家の中は何年も人間が不在だったとは思えないほど小奇麗だ。


 弓矢や武器、防具が置かれているスペースに親父は踏み出す。

どれも昨日まで使っていたといわれてもおかしくないほどの手入れ具合だ。

其の中でもよくわからん金属で出来た大弓を親父は握ると、

「おお。我が相棒。久しぶりだな」と笑っている。

どうみても人間が扱える弓とは思えん。ハッタリもいいところだ。


 「これは竜族でさえ一撃で屠る弓でな。俺の相棒だ」「ウソつけ」

肩をすくめて見せる親父に俺は呆れて言う。「で、いつから自分で飯を取ってこいと?」

「そりゃ」親父は言った。「今すぐだ」おい??!


「ウサギかイタチか狐2匹程度でいいからさっさと獲って来いよ」

追い出しにかかる親父に悪態をつきつつ、俺は小屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ