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旅人が目を覚ますと浮世離れした美女がいました。
美女は言いました。
『貴方は森で迷って倒れていたのです』
それから美女は木の実や果物を差し出して言いました。
『これを食べて早く元気になって下さい』
旅人は日に日に元気になりました。
そして再び旅立つ時がきて旅人は言いました。
『僕を助けてくれてどうもありがとう。僕は旅の商人です。貴方を森の奥深くに一人残してはいかれません。是非僕と一緒にこの森から出て行きませんか?』
美女は旅人の顔をじっと見つめ、静かに首を横に振りました。
旅人は言います。
『わかりました。貴方のような方が一人でここにいるのは何か理由があるのでしょうね。僕はこれ以上追求しません。しかし、感謝の気持ちに僕の持ち物から何かひとつを受け取って下さい』
そういって旅人は自分の荷物を広げました。
その中には色とりどりの宝石で作られた飾り物が入っていました。
美女はその一つ一つを静かに眺めると静かな光をたたえた真っ青なブローチを手に取りました。
そして、そのブローチを自分の服につけるわけではなくただ黙って手に持って眺めました。
『そのブローチが気に入ったのですか?』
美女は頷きます。
『それなら感謝の気持にそのブローチを貴方に差し上げます』
そして旅人は森を出て行きました。
✻ ✻ ✻ ✻ ✻
カナリア姫はドラゴンにブローチを見せて言いました。
『看病のお礼に頂きました』
ドラゴンは答えます。
――そうか。
カナリア姫は嬉しそうに笑うとブローチを日にかざしました。ブローチは日の光を浴びてキラキラと輝いています。
それから次の日もその次の日もカナリア姫はブローチを時折日にかざすと眺めてにこりと微笑みました。