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昔々ある所にカナリアと風のドラゴンがいました。
カナリアと風のドラゴンは人が近寄らない森の奥深くでのんびりと暮らしていました。
カナリアは一日中歌を歌い、その歌にドラゴンは一日中耳を傾けている。
そんな風にして毎日穏やかに静かに暮らしていました。
そんなある日の事でした。
森の奥深くに一人の旅人が迷いこみました。
旅人は東へ西へと森の中をさまよった挙句にとうとう森を抜け出す事が出来ずに倒れてしまいました。
倒れた旅人をみつけたカナリアはドラゴンの所に戻って訴えました。
『旅人が倒れています』
ドラゴンは答えます。
――そうか。
『このままでは死んでしまいます』
――そうか。
『助けてあげたいのですか』
――なるほど。
そこでドラゴンはカナリアに息を吹きかけました。
すると、カナリアの羽が吹き飛び、人間の姿に戻ったカナリア姫が姿を現しました。
それから、ドラゴンがその長い尾を一振りして近く木々をなぎ倒してから、轟々と音を立てて喉を鳴らすと大きな咆哮とともに風を巻き起こし、瞬く間に小さな小屋をひとつ立てて、こう言いました。
――看病してやるといい。