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ドラゴンが首を傾げながら口を開きました。
――嬉しくないのか?
カナリア姫は聞き返します。
『何故ですか?』
するとドラゴンは鋭い爪で泥だらけ塊を突きました。
次の瞬間、塊はごろりと転がったかと思うと、硬質な音を立てて砕け散りました。
そして辺り一面が砕けた破片で真っ青に輝きだしました。
泥だらけの塊だと思ったのは実は真っ青な宝石の原石の塊だったのです。
――青いブローチを眺めて嬉しそうにしていたではないか。
それを聞いたカナリア姫は一瞬動きを止めてドラゴンを眺めると、次の瞬間鈴を転がしたように笑い出しました。
『私がブローチを眺めていたのはブローチの真っ青な石が、ドラゴン、貴方の真っ青な瞳のようだったからなのです』
それを聞いたドラゴンは一瞬動きを止めてカナリア姫を眺めると、次の瞬間轟々と音を立てて喉を鳴らして笑いました。
それからカナリア姫とドラゴンがどうなったかは知りません。
しかし、轟々と風の強い日に風の音に耳を傾けていると愉快な気持になってくるのはは、今でもどこかでカナリア姫とドラゴンが笑っているからなのですとさ。
めでたしめでたし。