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ある日の事、ブローチを眺めて微笑んでいるカナリア姫の横でドラゴンは静かに遠くを見つめていました。そして物言わず立ち上がりました。
それから翼を広げたかと思うと、どこかに飛んで行ってしまいました。
幾日か過ぎドラゴンが戻ってきました。体中を泥だらけにして。
カナリア姫は涙ながらに言いました。
『どこに行っていたのですか?』
ドラゴンは何も答えません。
カナリア姫は再び口を開きます。
『とても心配したのです』
するとドラゴンは何も語らず、ドラゴンとカナリア姫の間に大きな泥だらけの塊を置きました。カナリア姫の身の丈ほどの大きさです。
カナリア姫は思わず一歩下がりました。そして訳が分からずドラゴンと泥だらけの塊を交互に見ました。