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昔々ある所にカナリアという名のとても綺麗な歌声を持ったお姫様がいました。
カナリア姫の澄み切った美しい歌声は国中に響き渡り、ある時は泣いている子どもを泣き止ませ、ある時は憤りを感じている者の心を静め、またある時は世の中に不安や焦りを抱いている者に安らぎを与え、人々の心を穏やかにするのでした。
そんなある日の事です。
カナリア姫の噂を聞きつけた隣国の王子が結婚を申し込みにきました。
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お城の広間に来客を告げるラッパが鳴り響きます。
広間の扉が開くと、そこに立っていたのは東の国の王子でした。
東の国の王子は言いました。
『カナリア姫、どうか僕と結婚して下さい。そして、どうか僕だけのために歌を歌って下さい。
貴方をお后にできるのなら、僕は世界で一番大きな宝石で貴方に良く似合う冠を作り貴方に捧げます』
カナリア姫は王子の顔をじっと見つめ、静かに首を横に振りました。
そこで東の国の王子は言います。
『他に何かお望みがあるならどうぞ申し上げて下さい。貴方の望みならばどんな願いも叶えてみせましょう』
サイト“へのへののもへじ/紳士と熟女のための挿絵のある童話”より、文章のみ(少々修正を加え)お引越ししました♪