第三話:神の微笑み
今回はエクシアと紅零が若干イチャイチャします
「システムチェック....オールグリーン。全設備・ユニット問題なし。全領域、敵影なし」
着工開始から4か月後、エアドル島基地は完成した。森林伐採から地盤強化。鉄道、道路の敷設、発電所群、工場、研究所、物流基地、採掘プラント、駐屯地、滑走路、港、造船所、司令所、各種防衛設備の建設。
この四か月を経て、この島は天楽島の30%の機能を有する基地になった。残りの70%は地下基地と超兵器の欠如である。というのも、第一艦隊は巨大人型兵器や空中母艦、陸上戦艦、ドリル戦艦、特殊戦闘機などを複数機、当たり前に運用しているためそれらの戦力が大きい。
しかし、それらはどう頑張っても生成できなかったのだ。
しかも、全部今の私と違って大きい。よって物理的に建造すると途方もない時間と資源が要る。今最も完成に近い、特殊制空戦闘機のスーパーグリントですら完成率は12%。
よって、この島の防衛を担っているのは通常兵器だけだ。
閑話休題
エアから聞いた話によると外界には魔物が存在する。初めて聞いたときは驚いたが、彼女曰く魔物の起源はこの世界らしい。
どんなものかは分からないが油断は出来ない。
それらに対応するためにも探索は必要になる。
最悪の場合、これが外界の魔物を誘引することになっても私が対応すれば事は収まる。
それに、いつエアから指令が下るかわからない。
これらを4つを踏まえると、今のうちに情報を入手しておいた方が都合が良い。
「基地はできたし...」
そろそろ外界探索の頃合いだ。
「RQ-37か?」
RQ-37の航続距離は約4900km、30機ほど様子見で飛ばす。
「CP、私だ。RQ-37を30機、島の外にばら撒け。外界探索を開始する」
『こちらCP、了解。RQ-37を30機離陸させます』
聞き慣れた音声が聞こえてくる。しかし、その声には感情が乗っていない。この前エアと話した時、彼女は“魂が宿るのを抑制している”と言っていた。
彼女曰く、その時の私は心底安心した表情をしていたそうだ。
「頼むぞ…」
続々と飛んで往く白い鳥たちを眺める。それらはやがて、紺碧の水平線へと消えていった。
「暇だな」
またもや暇な時間が訪れる。
前までの私なら演習でも行って気を紛らわしていただろうが、今の私はしない。最近はゆっくり海でも眺めている。
「はぁ…」
ふかふかのソファに座り、海風に身を任せる。海岸沿いにある私の家のキッチンと食卓は、外と屋内のどちらにもある。というのも、私は家の中だけで十分だったが、エアが来た際に『海を満喫したい!』と言ったので増設したのだ。
因みにロックバーを参考にしている。
「.....」ウトウト
綺麗なエメラルドグリーンの海が、だんだんと睡魔に蝕まれていく。視線も海ではなく下を向き始めた。
「....」ドサッ
精一杯まぶたを開けようと頑張ったものの、結局は抗えずに私は意識を落とした。
☆
「…ん」
紅零のまぶたがうっすらと開き気だるげそうに周りを見渡そうとする。しかし、その頭は僅かにしか動かなかった。
「エアちゃん…?」
紅零はいつもとは違う、儚く弱々しい声で親友の名前を呼ぶ。すると、エアと呼ばれた少女は彼女の胸元にある親友の頭を再度抱きしめ、撫でた。
「おはよう紅零。よく眠れた?」
「…うん」
私は撫でるのを止めない手に目を細めつつも、エアちゃんを疑う。私の最後の記憶は外のソファで寝落ちしちゃった記憶。エアちゃんが顕現して来て、その上寝室のベッドで一緒に寝た記憶はない。
「わたし、家に鍵かけてたはずなんだけど…」
まぁ、どうやって明けたかは予想がつく。
「神様パワー☆」
「超感覚的力はどうしようもないなぁ…」
呆れつつもベッドの上から降りようとする。しかし、今度は体ごと引き寄せられて身動きが取れない。
「逃さないよ?」
「でも、偵察機上げちゃったし…」
「大丈夫だって!問題はなかったから!」
「ん…..…あ、うん」
紅零は基地も、場の流れも主導権を握られていることに気付く。これが旭光の覇者と謳われたものの現状である。
「どう?気持ちいい?」
「あったかくて、心地よくて、寝ちゃいそうかな。だからエアちゃん、そろそろ離———「離さないよ」」
「だって離したら外界に行こうとするでしょ」
「え、でもそっちの方が都合が「だーめ」」
「私がお願いするまで、外の世界は行っちゃだめだよ?」
「でも…」
続きを言おうとすると、エアちゃんはさらに強く抱き締める。その腕や体からは、心地よいあたたかさと共に“絶対に言わせない”という意思が滲み出ている。
「世界を壊すような厄災は滅多に現れない。だから穏やかに生きる!OK?」
「ちょっとだけ、だめ…?」
(はい、かわいい。でも絆されるわけにはいかない…!)
紅零特有の無自覚な上目遣いと猫撫で声に耐え、心を鬼にして否定する。
「ダメ!紅零を外に出すなんて、神様許しませんからね!」
私はこの子と日常を守護る。それが私の願いだから。
「ふふっ、なにそれ」
(笑顔かわいい…天使かな?)
可能な限り、こんな日常が続いてほしい。そう思いつつもこれだけは消えなかった。
“私は楽になる。それが私の末路と願いだから”
「私が言いたいことは…そう」
「「穏やかに生きる」」
「何も起こってないうちは、穏やかに、ね…」
日常の守護者と破壊者
決意と失意
最も近く、最も遠い
それでも二人の絆は切れることはない
神は破壊者に微笑んだ。
※紅零は軍人口調をがんばって使っているただの女の子です。




