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「背徳の口づけ」
彼女は震えていた。
触れ合うことを望みながらも、触れることを恐れている。
「私に触れれば……あなたまで呪われる」
その言葉に迷いはなかった。
けれど、彼女の紅い瞳の奥には、抗いがたい渇望が潜んでいるのを俺は見逃さなかった。
俺はそっと、彼女の頬に触れた。
刻印が赤く灼けるように光り、皮膚が焼けるような痛みを覚える。
だが――その痛みさえ、彼女と繋がっている証のように甘美だった。
「怖くない……?」
かすれる声。
俺は迷わず答えた。
「怖いさ。でも、それ以上に……君を愛しいと思う」
その瞬間、彼女の瞳から涙が零れた。
そして、震える唇が、俺の唇に重なる。
触れ合った刹那、全身を駆け抜ける熱と痺れ。
それは恋の甘さであり、同時に呪いの毒だった。
「ん……あ……」
彼女の吐息は艶めき、絡み合う舌先から背徳の甘美が滴り落ちる。
壁を隔てていた日々から一歩踏み出した瞬間――俺たちは、禁断の恋人となってしまった。
しかし。
唇を離した途端、俺の胸に焼けつくような痛みが走った。
見下ろすと、心臓の上に小さな赤い刻印が浮かんでいる。
――彼女の呪いが、俺に移り始めていた。
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