「救いの誓い」
彼女の言葉が、胸の奥に重く沈んでいた。
――私は、神に背いた巫女。
――愛した者を必ず滅ぼす、呪われた女。
その声は震え、吐息は甘やかで、涙の匂いさえ感じられるほどに切なかった。
俺は彼女の頬を両手で包み込む。
触れた瞬間、赤い刻印がじりじりと熱を放ち、まるで「触れるな」と警告しているかのようだった。
だが、俺は離さなかった。
「君がどんな呪いに囚われていても……俺は逃げない」
彼女の瞳が揺れる。
それは驚き、怯え、そして微かな希望を含んでいた。
「でも……近づけば、あなたまで……」
「構わない」
俺は強く言い切った。
「たとえ滅びるとしても、君を独りにはしない。
それに――呪いは必ず解ける。俺が、解いてみせる」
言葉にした瞬間、自分でも驚くほど心が澄み切った。
恐怖よりも、欲望よりも、何よりも強い衝動。
それは彼女を救いたいという、ただ一つの願いだった。
彼女の瞳から、静かに涙がこぼれた。
それは絶望の涙ではなく、ほんの一滴の救いを映す雫だった。
「……ありがとう。そんなふうに言われたの、初めて」
その声は震えていたが、確かに温かさを帯びていた。
彼女は呪いに縛られながらも、ほんの一瞬だけ――女として、愛を求める顔を見せた。
俺は心の奥で誓った。
必ず彼女を解き放つ。
どんな神の罰があろうとも、俺の命が尽きようとも――。




