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神と人の境界



広間を満たす光と闇の奔流の中で、巫女の身体が震えた。

その唇から零れ落ちた声は、彼女自身のものではなかった。


「――人の子よ。なぜ抗う?」


低く響く声。

それは彼女の中に眠っていた“神の欠片”そのものの言葉だった。

金色に輝く瞳はもう巫女の優しさを宿しておらず、無限の冷たさを放っていた。


主人公は息を呑みながらも、巫女を抱く腕を緩めなかった。

「……お前が誰だろうと関係ない。俺は“彼女”を愛している。ただ、それだけだ。」


神の声が嘲笑を含んで広間に響く。

「愛? 儚く脆い幻想にすぎぬ。人の愛は呪いに劣り、やがて憎しみに変わる。

それでもなお――愛を選ぶか?」


問いかけは試練のようだった。

巫女の唇は神に奪われたまま動かず、ただ震える瞳の奥で必死に助けを求めていた。


「俺は憎しみに呑まれてもいい。呪いに蝕まれてもいい。

それでも、彼女を“人”に戻したいんだ!」


主人公の叫びに応えるように、胸の契約の印が赤黒い光を放った。

闇の力が神の光を押し返し、空間に亀裂が走る。


神は沈黙した後、低く笑った。

「ならば――証明してみせよ。愛が呪いを超えることを。」


巫女の身体がふらりと揺れ、彼女自身の声が微かに戻ってきた。

「……私を……人として抱き止めて……お願い……」


光と闇、神と人の狭間で、最後の選択が迫られようとしていた。





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