揺らぐ神性
主人公の腕に抱かれた巫女は、激しく脈打つ神性の光を必死に押し殺そうとしていた。
彼女の銀色の髪が風に乱れ、金色の瞳が涙に濡れる。
「……どうして……抑えられるの……?」
彼女の胸の奥で蠢く神の欠片は、愛を受け入れたことで完全に覚醒しかけていた。
だが今、その覚醒は主人公の闇の契約に絡め取られ、均衡を失い始めている。
「お前がまだ“人”だからだ。」
主人公は強く囁いた。
「神に飲まれるな。俺は、お前の涙を知ってる。お前の笑顔を知ってる。だから――戻ってこい。」
彼女の瞳が揺れる。
神の光が溢れるたびに、人の心がその隙間から漏れ出し、彼女の表情を人間らしく震わせる。
「……私……私は……」
白と黒の翼が背で激しくぶつかり合い、片方は神聖な光を放ち、もう片方は禍々しい影を垂らしていた。
その揺らぎは、神か人か、救済か破滅か――彼女の存在を二つに裂こうとしている。
主人公は痛みに顔を歪めながらも、さらに抱き締めた。
「俺の愛で、お前を人に繋ぎ止める!」
瞬間、彼女の胸から光と闇が爆ぜ、広間を震わせた。
そして――巫女の声が、か細くも確かに響いた。
「……助けて……私を……人として愛して……」
その言葉に、主人公の契約の印が赤黒く輝き始めた。
彼の愛と闇の力が、神の覚醒を押しとどめようとしていた。




