アナベルとルーカスと旅立ち
一応大団円です。
とりあえずこれでおわりです。
気が向けば話を再構成するかもしれません。
「お母様。ルーカス。それでは行って参ります」
「俺も」
アンジェロはきちんとしている。
カルロは変わらず雑。
「カルロ様、そのご挨拶では士官学校で痛い目にあいますよ。アンジェロ様は大丈夫そうですね」
「カルロ、本当に士官学校で良かったの?アンジェロは貴族学院ね。頑張るのよ」
アナベルお嬢様は半泣きで息子達の旅立ちを見送る。お二人とも、全寮制の学校に入学される。11歳と10歳で親元を離れるのだ。
まだまだ手離したくない。
カルロ様は、士官学校を希望された。貴族に向いていないから国軍に入るか動物学者になるか迷っていた。両方なりたいので、年齢制限のある士官学校へ入学されるそうだ。
アンジェロ様はカルロ様が当主になるものと思っていたが、スペアとしての役割を果たすそうだ。中身は大人だろうか。
旦那様は最近起き上がるのも辛いそうで、先程お部屋でご挨拶してきた。もう80歳近いのでかなりの御長寿だ。
私が父親だとは名乗れないが、2人の成長を見守れたのは過分の幸せだった。やんちゃで天才肌のカルロ様、努力を惜しまないアンジェロ様。可愛い可愛いこどもたち。
もう馬車に乗ってしまうのか、残念だと思っていると、お二人が私に近寄ってきた。私の肩より上まで背が伸びている。せーの、と小声がして
「お父様、行って参ります!」
2人は馬車まで走って行った。
クスクス笑っている。
馬車に乗る直前カルロ様が振り向いて、してやったりの顔をして「妹がほしいな」
「え、えっ?知って……」
呆然とした。
「知ってたわ」
お嬢様もしてやったりの顔をしていた。
走り去る馬車の風で、髪の毛がふわりと舞う。
「カルロが9歳のときね。諜報部を使えるようになって、父親がルーカスなのか尋ねられたらしいの」
諜報部の使い方!
「それで言っていいか確認されたの。わたくしも諜報部を使う以上、許可を出さないとフェアじゃないでしょう」
「お嬢様はそれで良かったのですか」
貴族籍は嫡子になっているが、使用人との子どもを作るのは不名誉だろう。
「屋敷の皆知ってるしね。見た目がごまかせないしね。本当は、いつか知って欲しかったの」
「今まで黙ってたんですね。お嬢様は意地悪ですね」
にっこり笑った。相変わらずお美しい。
いつまでも私の大事なお嬢様だ。
「ルーカス、お姉様の別荘についてきてくれる?」
アーデンさんの別荘か。
アーデンさんは閨指導のカリスマ、性教育の美貌の貴婦人として有名になっている。
「アーデンさんとお会いになりますか」
「お墓参りに行こうと思って」
お葬式以来初めてだ。
「実は、去年お父様のお部屋から日記を見つけたの。変な隠し場所だった」
「何か悩んでらっしゃったのはそれですか」
この人は肝心なことを言ってくれない。
「お母様への執着がひたすら書かれていた。相性が悪かったと言うしかないわ。お母様がしたことが一番悪いの。もちろん、私にしたことは許す気はないの、けれど」
「お墓参りくらい、いいかなって」
「大丈夫ですか」
「泣いちゃったらルーカスに頼るわ」
ふふ、と少女のように笑った。
「そういえば」
「お父様、ルーカスとのあの計画気づいていたわ」
「あれですか?」
血の気が引く。麻薬漬け計画か。
では旦那様は知ってて。
空恐ろしくなった。
「それと、妹か弟ができるわね」
「お嬢様!すみません!」
この前疲れていた時ついうっかり。
さすがに旦那様のこどもというには無理が。
「わたくし、社交界では強いのよ。何も言わせないわ。」
不安定なお嬢様はもういない。
強く気高い貴族の御婦人がいた。
いろいろと無理のある話でしたが、読んでいただいてありがとうございました。
ざっくりとした終わり方なのですがこの辺りでいいのかなと思います。それでは!