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可愛らしい幼馴染

 綾野朋絵は、いわゆる理系女子だ。いや、体育会系なのか?割合的に言うと理系って感じが多いから、『体育会系部、理系科』って感じ?まぁ、悪く言えば『どっちつかず』、よく言えば『文武両道』的な女の子だ。得意科目は生物、苦手科目も生物らしい。本人が言うには、

「得意、不得意なんて表裏一体。いわばあれだよ、宿題と一緒だ」

らしい。

 はて?宿題?僕は、あいにく頭は良くないため、こういうのは難しく考えてしまう。彼女なりに何か伝えたかったのだろうが、涼介に聞いてもわからなかったので、考えるのをやめた。

 彼女は背が低く、フサフサショート的な髪型。髪型には詳しくないため、そこのところは咎めないでほしい。男子からは明らかにモテており、自身もそれを自覚しているらしい。

 綺麗と言うよりかは、可愛い系?まぁ、確かに側から見てたら可愛らしさ満載だ。でも、僕と話す時は、どこか『心ここに在らず』って感じで、口調だって『だわ』から、『だ』に変わるぐらい慣れた話し方をする。あるいは、ナメられているか。

 言い忘れていたが、綾野朋絵は僕のもう1人の幼馴染で、僕の初恋相手だ。初恋といっても小学生の頃。まだ、『一目惚れ』が多発するような時期の恋だ。綾野のことをよく知ってから、その恋心は早いうちに消え去った。彼女は、

「小学生からの付き合いは、幼馴染とは言わない」

といっていたが、僕からしたら家も近いし、全然幼馴染なので、勝手に幼馴染と呼ばせてもらう。


 その幼馴染だが、今僕の目の前にいる。なんなら、向き合っている。放課後、雨が降っている中、電気を消したままの社会科準備室に2人でいる。

 開口一番彼女が放った言葉は、


「ねぇ、馬鹿正直」


ひどい!無礼にも程がありすぎる。

正直なのは認めるが、馬鹿は取り外してもらいたいものだ。


「何なんだよ、話って」


「なにその口のききかた?敬語、使って」


「なんでだよ!いつも普通に話してるだろ!」


「今は敬語使って。私今少し気分悪いから」


「それは、僕だから言っているんだよな?他の人にはそんなこと言わないだろ?」


「そりゃ、そうでしょ」


よく訳もわからなかったが、とりあえず言うことに従った。

綾野は確かに少し不機嫌そうと言うか、噛み付いたら、噛み殺してきそうな、そんな気迫があった。


「・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・あ、あのー・」


「何?」


「いや、、話ってなに? あっ、、話ってなんですか?さっきから黙ってるけど。」


「・・・・そ、その・・・・神田って夢とかみる?」


夢?どうしたんだ急に?・・・・

だが、この時ふと脳裏に『あの夢』がよぎった。


「夢か〜、、うん、見るよ。なんなら最近よく見るし」


ダン!!!!


綾野が机を大きく叩いたて立ち上がった。


「神田もか?」


「なんだよ、そんなに慌てて・・・あっ、なんですか、そんなに慌てていらして」


「もう敬語はいい!それに最後のキモい!」


あんたが言い出したんだろ。ほんと身勝手ったらありゃしない。ま、そういうところが可愛らしんだよな。


「夢!!見るんだな!そうなんだな!」


「あ、あぁ、見るけど、」

綾野はひどく興奮していた。


「どんなだ?どんな夢だ?」


「どんなって、なんかこう、鮮明で。う〜ん、なんかちょっとこう、奇妙にリアルな感じ、の夢」


「・・・・・」


あれ?まずかったか?何か僕は間違えたか?


「・・それって、悪い夢?」


「いや、けっしてそう言うわけではないけど、、まぁなんか仮想空間?にいる的な」


「は、はぁ、、、、そうか、」

綾野は肩を落としてがっかりしているようにみえた。


 しばらく沈黙が続いた。綾野は顔を下げ、明らかに落ち込んでいた。


「その〜〜、僕はよく分からないが、何か悩み事があるのか?」


綾野はうんともすんとも言わない。


暫くして、


「神田は、私が嫌な夢を見るから助けてほしいって言ったら、笑うか?」


「単発でそんなの言われたら笑う」


「この馬鹿正直やろう」


「でも今までの感じ見てたら、そうはいかない。なんだよ、『怖い夢』?『嫌いな夢』?そんなん僕が解決してやる」


「どうやって?」


「今のは勢いで言っただけだ、夢の解決方法なんて知るわけないだろう」


「馬鹿正直やろう、、、」



*******



 僕が『あの夢』を見出したのは、高2になってからだ。

最初はほんと、普通の夢かと思った

でも、毎日ずっとおんなじ夢を見るようになった。何度も何度も、でも嫌じゃなかった。

 妙にリアル。最初は自分の部屋だった。足裏に確かな感覚があるし、音だってよく聞こえた。まるで起きてるかのように。

 そして、目が覚めた時は決まっていつもの睡眠より疲れが取れていない。徹夜してる感覚だった。これが、今の6月まで現在進行形で続いている。だが、これも決まって、月曜日だけは、その夢を見なかった。


 その夢には1日がある。僕は自分が意識しないまま動く。学校に行くいつもの平日のルーティーンを送る。内容は全て違うが、結局は体が動かないからどうしようもない。そして最後にはベットに入って、目が覚める。

 ただある時、手にめいいっぱい力を込めたら動かせたことがあった。でも気を緩めたら目が覚めてしまう。これの繰り返し。

 やるせなかった。終わりの決まっている夢の中で、自分がやりたいようにできない。不思議に思える光景を全て見渡すことができない。目が覚めてしまえば、午後10時あたりになるまで、その夢をまた見ることはできない。


 だから無駄だと思った。そのありのままを受け入れた。


 一週間のうち月曜日だけしっかり寝れたが、その一回の睡眠でなぜか一週間を生きることができた。


 綾野と部屋を出てから、綾野はすぐに帰った。


綾野も同じ夢を見るのだろうか?

でも『嫌な夢』って言ってたよな?

なにが違うんだ?


外は相変わらずの雨。

なんだか今日は寝るのが怖くなってきた。

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