見たかった夢
いつもの朝だ。また、起きてしまった、
何度目かなんて覚えていないし、考えたところで
無駄だ、、きっと。
*******
僕は神田達海。高校2年。もれなく童貞だ。
童貞にこれと言った嫌悪感はない。
むしろ純潔でいいじゃないか。
自己紹介なんてのは大抵こういうの一発で済むもの。
さぁ、これからはそんな僕の体験談だが
まぁ、そうつまんなそうに去ろうとしないで
ちゃんと話すから
高校2年の梅雨入りの時期(梅雨入りなんていつかも分からないが)。うん、そこから話すのがちょうど良さそうだ。
「起きなさーい」
ドア越しに母の声がする。時計に目やると7時15分。
いつもより少し寝てしまったようだ。
外はどうやら雨が降っているらしい。
6月上旬独特の湿った感じに少しうんざりしながらも、体は自然と居間に向かう。
今日から月曜か、
と、心の中で呟きながら、用意された、トースト、ヨーグルト、目玉焼きを食べる。
顔を洗う、歯を磨く、変わらない、いつもとなんら変わらない。
「行ってきまーす」
「いってらっしゃーい」
扉を開けて外に出る。
「おっ!達海じゃないか」
勢いのある声で父さんが話しかけてきた。
「学校か?頑張れよ、今日は雨だから気をつけて行くんだぞ」
「うん、」
家の一階は父さんの仕事場だ
父さんは、いわゆる下町工場の社長で、大きなところから小さい取引先まで下請けをする。大体は金属加工とか、そういう系の仕事らしいけど、詳しいことはよく分からない。
メガネをかけてて、少し太っている。頭にはいつもタオルが巻かれており、まぁ、とにかくthe下町って感じの見た目。
いつも陽気に振る舞ってて、家でも外でもみんなに優しい。僕の憧れの存在だ。
家から学校まではそう遠くはない。自転車で5分ほど行ったところにある学校で、近くには海がある。
田舎の高校で、ここらではここしか高校はないため
全校生徒は多め、マンモス高とまではいかないけど、多め。
*******
「やぁ、おはよう」
クラスにつくと幼馴染の大川涼介が僕の席に座っていた。
「なんで朝からここにいるんだ?お前クラス違うだろ」
「まぁ、いいじゃないの。てか今日の雨すごいな、」
涼介はいい奴なんだが、一度話し出すとめんどくさくなる、いい奴なだけにそこが残念だ。
「なぁ、今日一緒に帰ろうぜ。今日部活無くなったらしいからさー」
「なんでお前は、朝から帰りの話をするんだ?まぁ、いいけどさ」
世間一般の幼馴染っていうのは「水魚の交わり」みたいにずっと仲がいいイメージなのかもしれないが、実際はそうでないのはよくわかる。
通う学校が離れてしまえば、ちっとも話さなくなったり、大体そういうものなのだが、大川涼介だけはそうはいかなかった。
涼介は幼い頃から頭が良かった。だから高校受験の時だって、本当はもっといい学校に行けたはずなんだ。でも、僕がいるからとかいって、わざわざ田舎のこの学校に通っている。
ここまでして僕にこだわる理由もわからなかったが
心の中では結構嬉しかった。
ただそういうのが恥ずかしくて、いつもそっけない態度をとってしまう。でも、涼介は全く気にしない様子で、僕に話しかけてくる。
本当にいい友達を持ったものだ。
雨の日の学校というものはいつもと違って見える。
外は日の入りのように暗く、学校の電灯がやけに眩しく見える。
でも結局は何も変わらない、いつもの学校、いつもの時間割、いつもの担任。
なんだろう、なぜか最近やけに疲れている。
あの夢のせいだろうか?
また、見てみたい。