果物屋のおばあさん
町で不穏な噂が広まった。
この町で有名な一族の夫婦が亡くなった。
その夫婦の子供が両親を手にかけた。
一族のためにその子供を捕まえろ。
対抗するなら首だけでも持ってこい。
一族の夫婦は有名だった。
母親と子供は歳を取らない、夫は老いるが若返る。
実際私が子供の頃見たその母親と年老いた今を比べると、母親は歳をとっていない。
夫は確かに老いて若返ったというより、顔の似た者に変わっていた気がする。
子供は身長は伸びているが皺などはない。
私が18歳のとき同じくらいだと話したことはあったがそのときから変わらない。
町の皆はそういう者だと受け入れていた。
疑問にも不思議にも思っていなかった。
しかし、この噂が広まるにつれ町の者があの家族は何者だと恐怖するようになった。
私を含め、年老いた者たちは恐怖することは無かった。
昔から過ごしてきた同じ町の助け合ってきた家族同士との認識があった。
それよりも、今まで朗らかに過ごしていた町の人たちが豹変し、その家族の子供を捕えようとしていることが恐ろしかった。
そんな噂が広まり数日たったとき、不思議な夢を見た。
「明日の朝方に町の入口にあの子がくるから町の噂を 教えてあげて。
遠くに逃げるように伝えてあげて。」
聞き覚えのある声だったが思い出せなかった。
朝起きて、不思議に思いながら私は夢で言われたとおり町の入口に足を運んでいた。
すると本当にあの子供が姿を見せた。
私は驚いたがこの話を伝えなくてはと言われたことを告げ、町へ戻った。