五話 マキちゃんの魔法講座
朝のまどろみの中、シャンプーのいい香りに包まれて、私は目を覚ましました。
薄っすらと目を明けると私の隣でマキちゃんが寝ています。
同じシャンプー使っていてもいい香りはするんですね。
私は、マキちゃんの腕に手を絡め、寝顔を見つめます。
マキちゃんはとてもかわいい寝顔をしています。
あぁ・・・幸せです、このまま時が止まってしまえばいいのに・・・・
私がマキちゃんの寝顔を見つめること数十分「ん、ん~~~」っと言ってマキちゃんが目を覚ましました。
「マキちゃん、おはよう、ちゅっ」
私は、目を覚ましたマキちゃんに『おはよう』の挨拶とキスをします。(もちろん唇に)
「ん、リタ、おはよう」
まだ少し寝ぼけているのか、キスしても嫌がりませんでした♪
マキちゃんは私が掴んでいるのとは反対の手で目を擦っていましたが、状況がわかってきたのか、徐々に顔が赤くなっていきます。
「さて、起きましょう」
少し名残惜しいですが、私は、そう言ってベットから起き上がりました。
少し遅れて、マキちゃんも起き上がります。
!!
そこで、私はあることに気が付きます。
マキちゃんは、真っ白なパジャマを着ています。
これは問題ないです。
むしろ、かわいいので、大歓迎です。
問題は私の方です。
私は今、学園の制服を着ています。
というか、家を出てから(追い出されてから)ずっと着たままでいます。
Q、なぜか?
A,これしか持ってないからです。
しかも、良く見ると、昨日の戦いで血まで付いています。
これは、非常に不味いです。
仮にも、14の乙女としては、受け入れがたい事実です。
「マキちゃん!!服を買いにいきましょう!!」
私が、叫んで振り向くと、マキちゃんは着替えの途中でした。
顔が少し赤くなった気がしましたが、マキちゃんは何も言わず、すぐに服を着てしまいました。
まぁ、昨日は一緒にお風呂に入りましたからね。
それと、マキちゃんの今日の下着は白でした。
私達は、一度食堂に行って朝食を食べると(今日はマキちゃんも一緒に食べました)購買部2階にある服売り場に向かいました。
(マキちゃん、こっちとこっちどっちがいいですか?)
購買部には、なぜか結構な人がいたので念話で話をしながら、まずはパジャマを選びます。
一つはピンク色に花柄の付いたパジャマで、もう一つは白色のフリルが付いたパジャマです。
(どっちでもいいのでは?)
むぅ・・・そっけないですね・・・
(これからは一緒に寝るんですから、かわいい方がいいでしょ?)
(別に・・・どっちでもいい)
(それは、私が着ればどっちもかわいいからって意味なのかな?)
(はいはい、そうですよ)
むぅぅぅ・・・ほんとにそっけないです。
(なら、両方買っちゃいますよ!!)
(それでいいのでは?)
うぅぅ・・・何か怒ってる?
確かに昨日はやりすぎたかもしれないけどさ、もうちょっと相手してくれてもいいじゃない。泣いちゃいますよ?
とりあえず、パジャマは両方買う事にして、次は制服です。
さすがに血が付いたままというのはいただけません。
制服はっと、あったあった。
・・・・・・・・・・・・お値段銀貨15枚!?
高!?高すぎるよ制服!!
これじゃぁ、しばらく制服はこれ一枚か、入学式までには新しいの買わないとね。
入学式に血の付いた制服着ていくなんて、嫌過ぎる。
(マキちゃん、しばらく制服一枚になるけど、こんな私でも嫌わないでね?)
(大丈夫です、はじめから好きではありませんから)
うぅぅ・・・・・マキちゃんの意地悪~~
仕方ないので、替えの下着(白、ピンク、青を2セットづつ)とパジャマを2枚買う事にしました。
合計で銀貨6枚と銅貨30枚です。
・・・・・良く見たら、あと銅貨70枚しか残ってないです。(残りは食事代で消えました)
どのみち制服は買えなかったですね。
しばらくは、お昼は抜きですかね?
シクシク(泣)
服を置くため、一旦寮に戻ると、もう少しでお昼というような時間でした。
「この学園、移動に時間掛かりすぎですよ~~~」
ついつい、愚痴ってしまいます。
「肉体強化か風の補助魔法でも使えばいいのでは?」
私の愚痴を聞いて、マキちゃんがつぶやきます。
「そんなの使えないですよ~~~」
「・・・・・・・・・は?」
なにやらマキちゃんが不思議そうな顔をしています。
「使えないって、風の補助はともかく、肉体強化は初歩の初歩でしょ?その辺の子供でも使えますよ?」
「悪かったですね、子供以下で。どうせ私は『ファイアーボール』(しかも最近まではマッチくらいの火)しか使えないですよ」
「・・・・・・・あぁ、なるほど」
「納得しないでください。泣きますよ?」
「泣くのはまぁ『ざまぁ』って感じですが、私にも責任が無くはないですね」
「ひど!?それと『少しは』じゃなくて『ほとんどは』じゃないのかな?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「まぁ、もうそのことはいいですけどね」
あ、何か嫌な沈黙が・・・・・どうしよ・・・・・
「・・・・・私が教えてあげるわ」
「え?」
「私が教えてあげるって言ってるの、ありがたく思いなさい」
顔を少し赤らめて、そっぽを向きながらマキちゃんがそう言いました。
・・・・・・・何かうれしいですね。
「とりあえず、自分の魔力って言うのわかります?」
「自分の魔力?」
「そうです、自分の中から外に向かって流れ出ているような感じがするものがある筈です。」
「ん~~~~よくわからないですね」
私は目をつぶって魔力とやらを感じ取ろうとしますが、上手くいきません。
「おかしいですね、リタならすぐ解るはずなんですけど・・・・・じゃあ、転生する前にした希望が反映・・・・・いちいちこう言うの面倒くさいわね、これからは『能力が上がった』って言うことにするわ。それで、能力が上がる前と上がった後で自分の中で大きく変わった感じがするものってない?」
「え~~~っと・・・・・そんな昔のこと覚えてません!!」
「・・・・・はぁ、仕方ないですね、私がリタの魔力を操って動かすので力を抜いてください」
「え?そんなことできるの?」
「普通はできないですよ。私だからできるんです。感謝しなさい」
マキちゃんはそういいながら後ろに回って私の背中に手を当てます。
すると、何やら体の奥がムズムズしてきました。
「なにやら体がムズムズします・・・・・っは!?これってマキちゃんの愛!!」
「違います。それが魔力です。愛は関係ありません。」
あっさり否定されました!!
「では、そのムズムズしてるのを外に出るようにしてみて・・・って出しすぎです止めて止めて!!」
私がムズムズしてたの(魔力?)を外に出してら、マキちゃんが慌てて止めるように言いました。
「はぁはぁ・・・・・さすが『神並みの魔力』、空間が壊れるとこでした・・・・」
・・・・・・・・・?
私がキョトンっとした顔をしていると、マキちゃんが説明してくれました。
「リタの魔力はとっても多いの、漏れ出すだけで空間を壊してしまうほどね。空間って言うのは世界の魔力が循環することで成り立っていて、一定の場所に魔力が集まりすぎると、穴が開いたり壊れたりするのね。まぁ、要するに風船に空気を入れすぎて爆ぜるようなものね。厳密には少し違うけど、そう考えてもらっても問題ないです」
「・・・・・何かとんでもないですね」
とはいっても実感は・・・あ、なんか空間にヒビみたいのが・・・気のせいですね、うん。
「まぁ、とりあえず、魔力が感じられれば問題ないわ」
「それじゃぁ、その魔力で自分の肉体に覆うようにしてみてください」
「はい、先生」
私は元気良く答える。
「・・・・・マキちゃんのままでいいわよ」
私は言われたとおりに魔力で身体を包む。
「それが肉体強化の『防御力アップ』です」
「次は、魔力を身体の内側全体に配分して循環するようにしてみてください」
「はい、マキちゃん♪」
私は今回も言われたとおりに魔力を身体の中で循環させる。
「それが、肉体強化の『全能力アップ』です。あとは、腕に循環させれば『筋力アップ」足に循環させれば『速度アップ』などになります。走る時は、風の抵抗がありますので、『防御力アップ』を同時に使うことをお勧めします」
「わかりました」
「あと、強化魔法は他人にも掛けれますが、扱いが難しいので、今は使わないでください。特にリタの場合は魔力が多すぎるので、他人に掛けたらその人が爆発すると思ってください」
「は、はい!!」
ば・・・爆発って・・・・おもしろ・・・スプラッタは不味いです。
「では、次は格属性魔法について教えます」
「まずは火から・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
この後、私は寝るまでマキちゃんに魔法を教えてもらいました。
もちろん今日も一緒にお風呂に入って、キスして、一緒に寝ましたよ♪
ここまで読んでくれて、ありがとうございました。
誤字、脱字、感想など書いてくれるとうれしいです。
次回は『マキちゃんの気持ち』です。
ご期待ください
え?まだ入学式までいかないのかって?すいませんすいません、頑張ってはいるんです。