四十五話 リリーを紹介します
四十五話完成しました。
トントン
「学園長、クロスロード公爵をお連れしました」
私は、リリーを抱っこしながら、お父さんと学園長室に入る。
「おぉ、公爵殿、よく来てくれたのぅ」
「お久しぶりです、学園長」
学園長とお父さんは挨拶をした後、なにやら話し始める。
2人は知り合いのようですね。
もっとも、名門貴族同士なので不思議ではないですけどね。
「リタ君、しばらくかかりそうじゃ、先に寮に戻っておいてくれんかの?」
お父さんと話していた学園長でしたが、私達がまだいることに気づいてそういいました。
「分かりました。リリーお姉ちゃんのお部屋に行きましょうか?」
「うん」
「それでは、失礼します」
私は、うれしそうなリリーを連れて学園長室を出ます。
「リタ、もういいんですか?」
部屋を出ると、マキちゃんが待っていてくれました。
「うん、何か2人で話があるみたいです」
私達は、強化魔法を使って寮に戻ります。
私の腕の中でリリーが「きゃっきゃっ」と言ってとても楽しそうです。
ちなみに、お父さんも強化魔法くらい普通に使えたので学園長室に行く時もこれでした。
「「ただいま(です)」」
「リタ、マキ、お帰りなさい」
「おかえりなさい」
部屋に入ると、ティアとアンが出迎えてくれます。
「リタ、この子誰ですか?」
すぐにリリーに気付いたティアが聞きます。
「私の妹のリリーですよ」
私の答えに、ティアとアンは「なるほど」と納得する。
私もリリーも黒い目に黒い髪をしていますからね。
「リリーちゃん始めまして、私はティアノート=フィル=ローラント、リタの恋人です」
「私はアンジェリカ=リュノよ、リタの恋人ではないです」
ティアが笑顔でリリーに自己紹介すると、アンも続きました。
「初めまして、リリー=フル=クロスロードです。お姉ちゃんの妹でさっき恋人にしてもらいました」
ティアとアンの自己紹介が終わると、リリーも私の腕から降りて自己紹介しました。
けれど、リリーの恋人発言でティアとアンが私を冷たい目で見てきます。
「リタ、あなた自分の妹にまで手を出す気ですか?」
アンが呆れた声で言います。
「そうですよ、私の愛は性別も年齢も人数も、そして血さえも超越します!!」
私がそう宣言すると、みんなの視線がさらに冷たくなりました。
「リタ、本気で言ってます?」
あ、なんかティアが冷たいを通り越して怖い声になってます。
しかし、それを恐れる私ではありません。
「もちろん本気です」
私はそう言ってしゃがむと、リリーの唇にキスしました。
少し驚いた顔をしたリリーですが、すぐに笑顔になってうれしそうに抱きついてきました。
それを見たティアとアンは呆然とし、その後、すごく怖い顔になります。
「リタ、何考えてるんですか!!」
「そうです、ちょっとやりすぎです!!」
ティアとアンが怒鳴ります。
2人の声に、リリーが少し脅えます。
「リリー、大丈夫ですよ」
私は抱きついてるリリーを抱っこして安心させます。
「「リタ!聞いてるんですか!!」」
私の行動でティアとアンはさらに怒ります。
「ちゃんと聞いてますよ、けど、考えを変えるつもりはありません。それと、大声を出すとリリーが脅えてしまいます」
「リタ!!・・・・・もういいです。私、しばらくこの部屋を出ます。リタが考え直すまで戻りません!!」
「そうですね、今回ばかりは私も納得できません。ティア、私も一緒に言っていいですか?」
「はい。アン、行きましょう」
ティアとアンが怒って部屋を出て行ってしまいます。
むぅ・・・・・ここまで怒るとは予想外です。
けれど、やっぱり考えを変える気にはなりません。
「お姉ちゃん、皆が怒ったの私のせい?」
リリーが泣きそうな顔で言います。
「違いますよ、ティアとアンが怒ったのはお姉ちゃんのせいです。リリーは何も心配しなくて大丈夫ですよ」
私はそう言ってリリーを慰めますが、納得してないみたいです。
「リリー、お姉ちゃんを信じてください。恋人でしょ?」
「・・・・・わかった。お姉ちゃんを信じる」
完全に納得したわけではないでしょうが、リリーは私を信じてくれるみたいです。
私は笑顔でリリーの頭をなでてあげます。
「はぁ、リタ、これからどうするんですか?」
今までのやり取りを、1人静かに見守っていたマキちゃんが、ため息をついて尋ねます。
どうやらマキちゃんはまだ私と一緒にいてくれるみたいです。
「マキちゃんは怒らないんですか?」
「ティア達と違って、私はいろんな人達を見てきましたからね。これくらいでリタから離れたりしません。もっとも、呆れてはいますけどね」
マキちゃんはそう言って私に微笑んでくれました。
正直、すごくうれしいです。
「マキちゃん、ありがとう」
私は心から感謝します。
「それより、これからどうするんですか?」
マキちゃんは少し顔を赤くして、照れながらそういいます。
「そうですね、とりあえず精霊王達にもリリーを紹介しておきましょう」
私は亜空間魔法で精霊王達のいる空間に繋げ、リリーを抱っこしたままマキちゃんと一緒に中に入りました。
リリーはすごく不思議そうな顔をしていますが、私と一緒なので、特に怖がったりはしていません。
中に入ると、気持ちのいい風が私の髪をなでます。
いつきてもここは自然のいい香りがします。
まずはアクアに会いに行きましょう。
「あら~~~リタ様じゃないですか~~~何か御用ですか~~~~?」
森の中にある綺麗な湖に着くと、私に気付いたアクアがすぐに顔を出しました。
「今日は妹を紹介しようと思ってね」
私がそういってリリーを見ると、アクアが水から出てきました。
「あらあら~~~リタ様の妹ですか~~~?私は~~~水の精霊王で~~~~アクエリアです~~~よろしくです~~~」
アクアの自己紹介を聞いて、リリーも私から降りて自己紹介します。
「リリー=フル=クロスロードです。よろしくお願いします」
リリーは精霊王という言葉に少し戸惑っていましたが、ちゃんと自己紹介します。
それにしても、アクアはリリーに自己紹介したのは少し驚きました。
きっとリリーも精霊と相性がいいんでしょう。
基本的に精霊王は他人を気にしませんからね。
マキちゃんやティア、アンは話しかけない限りほとんど無視されます。
まぁ、普通の人は話しかけても無視されるらしいですけどね。
「さてっと、次はリーフェのところにでも行きますかね」
アクアにリリーを紹介したので、次はリーフェのいる森に向かうことにします。
「リタ様~~~待ってください~~~私がここに~~~皆さん呼びます~~~」
私達が行こうとすると、アクアがそう言って呼び止めます。
「ん~~~アクアの申し出はうれしいんですけど、リリーにこの世界(亜空間)を見せたいんですよ。ここは綺麗なところが多いですからね」
せっかくのアクアの申し出ですが私は断ることにします。
ただ会わせたいだけなら召還すれば済むことですし、わざわざ亜空間に来たのはこの美しい景色をリリーに見せるためだからです。
「それなら~~~皆で行ったほうが~~~楽しいですよ~~~?私も~~~リリーちゃんとなら~~~一緒したいですし~~~皆もそうだと~~~思いますよ~~~」
驚きました。
アクアがリリーと一緒に行きたいと言うなんて思っても見ませんでした。
先ほども言いましたが、基本的に精霊は人間に無関心なのです。
ここまで精霊に好かれるなんて普通は考えられません。
「アクア、一つ聞いていいですか?」
「何ですか~~~?」
私はアクアにリリーのことを聞いてみることにします。
「リリーと精霊ってすごく相性がいいの?」
「そうですよ~~~私も長く生きていますが~~~こんなに相性がいい人と~~~会ったのは始めてです~~~エルフにも~~~こんなに相性が~~~いい人はいないですよ~~~」
なるほど、つまりリリーは世界で1番・・・・・もしかしたら歴史至上で1番精霊と相性がいいのかもしれません。
・・・・・ん?私はどうなんでしょうか?
私も好かれていると思うんですけど・・・・・リリーの方が上なのかな?
「アクア、もしかして私よりリリーの方が精霊と相性良いんですか?」
・・・・・?
「リタ様は~~~神様ですよ~~~相性ではなく~~~敬意を持ってますよ~~~」
むぅ・・・・・どうやら私は人間にカウントされてないみたいです。
まぁいいです。
そういうことなら他の精霊王も呼ぶことにしましょう。
「アクア、それなら皆でこの世界(亜空間)を見て回りましょう。皆の方がここには詳しいでしょうからね」
「はい~~~では~~~皆さんを呼びますね~~~」
数分後、集まった精霊王達とリリーの自己紹介を終ると、私達はこの世界(亜空間)を楽しく見て周る。
まず湖の辺りをアクアが案内してくれました。
ここには様々な魚が泳いでいて(何故か海の魚もいた)アクアの加護で水の中に入ると、夢のような世界が広がっていました。
リリーも、この美しい景色に見とれていました。
次に、リーフェの住んでいる森に行きました。
ここには珍しい薬草が生えていてすごく興味深いです。
それと、この森には動物がいませんでした。
私がそのことを訪ねると、「この世界(亜空間)に魚以外の生物はいなですよ」という回答が戻ってきました。
リリーは何かすごく綺麗な色をしたキノコを食べていて、私が慌てましたが、リーフェの加護で大丈夫とのことでした。
もちろん、リリーにはむやみにその辺のものを食べないように注意しました。
お次は草原です。
ここはシルフィーのいる場所で、色とりどりの綺麗な花が咲いていました。
私とマキちゃんはここで少しお昼寝をします。
その間、リリーはシルフィーに手伝ってもらい楽しそうに空を飛んでいました。
次はフレイのいる高い山です。
ここには様々な鉱石があり、なんと、オリハルコンこ少量ですが埋まっているそうです。
岩ばかりでリリーは少し詰まらなさそうにしていましたが、フレイが火山の噴火で大きな花火を打ち上げると、大はしゃぎしました。
どうやったら噴火で花火になるんでしょうか?
すごく不思議です。
次はノアのいる暗い洞窟です。
周りは真っ暗なのに全然怖くなく、何故か心が落ち着きました。
ノアが言うには、闇とは本来、恐れるものではなく、安らぎを与えるもので、人などが闇を恐れるのは、それを悪用する者が居るからだそうです。
これには私も考えさせられました。
リリーは安心したのか、私に抱っこされて寝ていましたが、途中でノアが抱っこしたいと言ったのでさせてあげました。
リリーを見るノアの目はとても優しかったです。
最後はレイです。
なんと、レイが住んでいたのは雲の上でした。
なんでも、この雲は水ではなくレイの加護で出来ているそうです。
雲の上からみたこの世界(亜空間)はとても美しかったです。
雲自体もやわらかいらしく、リリーが楽しそうに飛び跳ねていました。
一通りこの世界(亜空間)を見終わった私達は、精霊王達に「また来ますね」と言って分かれた後、自分の部屋に戻りました。
部屋に着くと外はもう夕方でした。
「お姉ちゃんってすごいんですね」
リリーはそう言って、私を尊敬の目で見ます。
「そうです。お姉ちゃんはすごいのです」
私はそう言ってリリーの頭をなでで上げました。
夕飯の時、学食でティアとアンに会いましたが、まだ怒っているようで、そっぽを向かれてしまいました。
私が困った顔をしていると、アリスが来て「2人は今私の部屋に入るから心配ないけど、早く仲直りしなよ」と言ってくれました。
アリスに感謝です。
それと、食事をしているときに、寮長さんがきて、「クロスロード公爵は学園長と大事な話があるので今夜はこちらにこれない」といわれました。
大事な話って言うのが気になってマキちゃんに見てきてもらうと、お酒を飲んで大騒ぎしているとのことでした。
どこが大事な話なんだか・・・・・。
さて、夜ですが、リリーにはキスまでしかしてませんよ?
マキちゃんとは、リリーが寝た後、魔法で音を消していつもどおり楽しみましたけどね♪
ここまで読んでくれてありがとう。
また予想外の出来事が起こりました。
なぜかティアとアンが怒って部屋を出て行っちゃいました。
こんなの予定にないです。
どうしましょう?
次回は閑話の予定です。
え?クロスロード公爵はどうするんだって?
あんなおっさんよりリリーの方がみんないいでしょ?




