二十六話 化け物
二十六話完成しました。
昨日は更新できなくてすいませんでした。
『助けて』
『助けて』
私がその声を聞いたのは、ローラント王国を出て、2日たった夕方でした。
国政を新たに決めた宰相たちに任せるなど、一通り私がやっていたことを引き継ぐと、学園の長期休暇が残り10日しか残っていませんでした。
私が「そろそろ長期休暇が終わるので学園に帰ります」と王様達に言ったら、「もっとこの国に居てくれ」っと頼まれましたが、「ここまで手伝ったんですから、後は自分達で何とかしてくださいね」っと言って私は学園に戻ることにしました。
王様達はそれでも渋っていましたが、ティアが説得してくれたようです。
「マキちゃん、ティア、『助けて』って言う声が聞こえないですか?」
・・・・・・・・・・?
どうやら二人には聞こえていなかったみたいです。
『助けて』
『助けて』
『死んじゃう』
『死んじゃう』
空耳かと私も思いましたが、確かに誰かか助けを求めている声が聞こえます。
「やっぱり聞こえます。マキちゃん近くに誰か居ないか調べてみてくれませんか?」
私がそういうと、マキちゃんは探知で周りを探してくれます。
・・・・・・・・・・・・・・!?
突然マキちゃんが驚いた顔をしてたちあがりました。
「リタ、ティア手を貸してください。少し拙いのがいます」
マキちゃんはそう言うと、探知で見つけた何かが居るところに飛んでいきます。
私とティアは慌ててマキちゃんを追いかけます。
『助けて』
『助けて』
『王様』
『王様』
『死んじゃう』
『死んじゃう』
私達がマキちゃんを追いかけていくと、聞こえる声も強くなります。
そして、しばらく行くと、一人の青い髪をした少女と、なんていうんでしょう、『化け物』が戦っていました。
体長は3メートルほどあり、人のような姿を取っては居ますが、槍のように鋭い尻尾と頭には三本の大きな角、その上全身が腐っていてすごい悪臭を放ち、顔には目玉がありませんし、そこらじゅうに腐っている物を飛び散らせています。
ティアが口を押さえて気持ち悪そうにしています。
これは魔物や魔族なんて生易しいものではありません。
「マキちゃん、これは何ですか?」
私はマキちゃんに聞きます。
「こいつは死神たちから『冥府帰り』と呼ばれているやつです。普通は死んだ人は死神によって、そのまま転生するんですが、時々転生する前に悪魔に捕まって悪魔達の住む冥界に連れて行かれる者がいます。そして、こいつはそんな冥界に連れて行かれた者達の成れの果てです」
どうやらこの『冥府帰り』というのは、死神たちの敵みたいですね。
「『冥府帰り』はそこに居るだけで世界に悪影響を及ぼします。なので見つけ次第倒すのが死神の使命でもあります」
良く見ると、この『冥府帰り』とか言うのが撒き散らせている物が周りがを腐らせ始めています。
キャァァァッ
今まで『冥府帰り』と戦っていた少女が吹き飛ばされます。
『大変大変』
『大変大変』
『王様』
『王様』
私にだけ聞こえてるらしい声が騒ぎ出します。
「エレメントクリスタル」
私はとっさに少女を庇い結界を張ります。
しかし、『冥府帰り』が結界を攻撃すると、結界自体が腐り始めます。
ひ・・・非常識なやつですね
ハァァァァァ ザンッッ
マキちゃんが『冥府帰り』を切り裂きます。
しかし、『冥府帰り』の切られた場所はすぐに塞がってしまいます。
マキちゃんが攻撃した隙に、私は少女を抱えて一旦引きます。
「ティア、この人を頼みます」
私はティアに少女を任せるとマキちゃんに加勢します。
「ファイアーボルト」
巨大な炎の塊が『冥府帰り』に降り注ぎますが、少し燃やしただけですぐに炎が腐り始めます。(リタのファイアーボルトだから巨大な塊が降り注ぎましたが、普通は小さな炎が降り注ぐだけです)
「リタ、ダメ『冥府帰り』には近づかないで!!」
魔法がたいして聞かないのを見て、私が『レッドキャンパス』を出して『冥府帰り』に攻撃しようとすると、マキちゃんが大声で言います。
「『冥府帰り』に特殊加工してある『死神の鎌』以外で攻撃すると腐ってしまいます」
私は攻撃をやめて、また距離をとります。
すごく厄介なやつですね・・・・
マキちゃんもさっきから攻撃していますがすぐに再生してしまい、あまり効いているようには見えません。
「マキちゃん、どうすればいい?」
私は魔法を撃ちながらマキちゃんに尋ねます。
「大魔法で一気に消し飛ばしてください。この際多少の被害はしょうがありません」
「わかった。少し時間を稼いでください」
私はそう言って、魔法の詠唱に入ります。
「あぁ星の生命たる灼熱の炎よ
黄昏る真紅の龍となりて
我に従い全てを焼き尽くせ
フレアドラゴン」
私が呪文を唱え終わると、100メートルはある炎の龍が現れ、『冥府帰り』に襲い掛かります。
それを見て、マキちゃんも私のところに非難します。
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
ゴォォォォォォォォォ
『冥府帰り』と共に、森が焦土かします。
・・・・・・・あれ?
「マキちゃん、もしかして私やりすぎました?」
私はその光景を見て冷や汗をかきます。
「いえ、これくらいの被害でどうにかなったなら問題ないです」
「そうなの?」
「はい、前に私が『冥府帰り』を見たときは大陸が一つ腐って滅びましたから」
・・・・・・・・・・・・・・
私は絶句して言葉も出ませんでした。
『助かった』
『助かった』
『神様』
『神様』
『ありがとう』
『ありがとう』
私が『冥府帰り』を倒すと、そんな声が聞こえてきます。
「リタが言っていた声ってこれのことですか?」
マキちゃんが私に聞きます。
「そうです。あれ?でも聞こえなかったのんじゃないの?」
「リタ、これは精霊の声です。『冥府帰り』を倒したことで私も感謝されて聞こえるようになったんでしょう」
なるほど・・・・・そういうことですか。
私はマキちゃんの説明に納得すると、助けた少女のことを思い出してティアのところに向かいます。
「ティア、そのこ大丈夫ですか?」
「はい、目立った外傷はないですし、魔力と使い果たして眠っているだけだと思います」
ティアがそう言ったので、私はホッとします。
「待って、その子かなり危ない状態よ」
しかし、マキちゃんがそう指摘ます。
「どういうことですか?」
ティアが不思議そうな顔で聞きます。
「たぶん、その子は精霊王よ、精霊達が騒いでいたのもそのせいね」
私とティアは驚きます。
「魔力がないってことは精霊にとっては死を意味します。放っておいたら消滅するでしょうね」
「どうすればいいの?」
私はマキちゃんに聞きます。
「この子は水の精霊王だから綺麗な水のあるところに連れて行けば大丈夫だと思いますけど・・・・・」
マキちゃんはそう言って口ごもってしまいます。
この辺は私の魔法で焦土と化していて綺麗な水のあるところなんてないです。
どうしましょう・・・・・あ!!
私は亜空間からお金に任せて買った水を出します。
「これなら沢山持ってるけど、これでどうにかならないですか?」
しかし、マキちゃんは首を振ります。
「少しはましになるでしょうけど、周りの影響で効果が下がってしまいます」
それでも何もしないよりは言いと思い、私は何本か水を出して少女にかけます。
すると、少女が薄く目を開けます。
瀕死ではありますが、気が付いたようです。
そして、私の亜空間を指して何か言いますが声が小さくて聞き取れません。
「なるほど、それならどうにかなるかも!!」
マキちゃんが声を上げます。
どうやらマキちゃんにはこの子の言おうとしていることが分かったみたいです。
「リタ、少し大きめの結界を張って、亜空間を広げてください。亜空間の中なら周りの影響を受けませんから、そこで大量の水を出せばどうにかなるかもしれません」
マキちゃんがそういうと、少女は少し微笑んでまた眠ってしまいます。
私はマキちゃんが言ったとおり、少し大きめの結界を張って、亜空間を広げて中に入ります。
私が亜空間の中に入ると身体が浮いてしまいます。
しかも空気がありません。
私は慌てて亜空間から出てきます。
「マキちゃん、この中に入るのって無理ないですか?」
「リタ、慌てすぎです」
私がそういうと、マキちゃんは少し笑っていいます。
「精霊達、あなた達の王様を助けるから、この中に生活で切る空間を作って」
『わかった』
『わかった』
『王様』
『王様』
『助ける』
『助ける』
マキちゃんがそういうと、精霊達はそう言って私の作った亜空間の中に入っていきます。
『大丈夫』
『大丈夫』
『おいで』
『おいで』
精霊達が亜空間に入ってしばらくすると、そんな声がします。
私は恐る恐るもう一度亜空間に入ります。
すると、さっきとは違ってちゃんと空気がありました。
私が安全を確認すると、マキちゃんと、精霊王を抱えたティアが中に入ってきます。
マキちゃんとティアが入ってくるのを確認して、私は水を出そうとしましたが、空気があるだけで重力がなくて出せません。
仕方ないので風魔法を使って水を出します。
中にプカプカ浮いている水たまりの中に精霊王をティアがいれます。
「これでしばらくすれば何とかなると思います。念のため近くの町に言ったら飲料水を大量に購入しましょう」
マキちゃんがそういったので、私はホッとしました。
その後、私達は一旦誓近くの町によります。
近くの町に着くと「森が一瞬で焦土と化した」とか「天変地異の前触れでは?」なんて声が聞こえましたが気にしないことにします。
私は、念のため、マキちゃんが言ったとおり、大量の水を購入しておきました。
そして、私達はまた学園に向けて出発しました。
早く精霊王さん目を覚まさないでしょうか?
ここまで読んでくれてありがとう。
精霊王の登場です。
誤字、脱字、感想など書いてくれるとうれしいです。
次回は学園での話しになります。
え?やっと付いたかって?
おまたせしてすいませんでした。