二十話 突然の事態
二十話完成しました。
今回は前編です。
ドーーーーン
ドドーーーーーーーーーーーン
いきなり爆発音がして、私は目を覚ましました。
今は、私達がローラント王国に来て5日目の早朝、まだ日が昇る前の薄暗い時間です。
「いったい何の音でしょう?」
私と同じで、爆発音で目を覚ましたマキちゃんに聞きます。
「分かりません、でも嫌な感じがしますね」
「ですね、私も嫌な予感はします」
私はそう答え、何かあってもすぐ動けるように服を着替えます。
ドーーーーーーーーーーーーーン
また爆発音がします。
これは・・・事故の可能性は低そうですね。
事故ならこんなに何度も爆発音はしないはずです。
外もなにやら騒がしくなっているようです。
しかも、悲鳴が混ざっていることを考えるとかなりやばそうですね。
ドンドンドン、バン
私の部屋の扉が鍵ごと破壊されて開きます。
そして、外から槍や剣で武装した人たちが入ってきました。
「いきなり、何なんです?あなた達は?」
私は武装した人たちに聞きます。
「おとなしく我々についてきなさい。暴れれば殺します」
しかし、私の問いには答えず、武装した人たちは私に武器を近づけます。
(マキちゃん!!)
ザシュッ
私は念話でマキちゃんに声をかけると、マキちゃんは入り口の近くにいた人たちを鎌で切り殺します。
いきなり仲間が死んで武装した人たちが動揺します。
ザシュッ
「ウィンドカッター」
ザクザクザク
私はその隙を見逃さず、『レッドキャンパス』で近くにいた人を切り殺すと、魔法で残りの人たちも倒します。
これは、ただ事じゃないですね。
(マキちゃん、ティアのところに行きましょう。向こうにも武装した人たちがいるはずです)
私は念話でマキちゃんにそう言って部屋を飛び出します。
(そうですね、急ぎましょう)
マキちゃんも私の後に続いて部屋を出ます。
部屋の外では、兵士と武装集団が戦っていました。
私達はティアの部屋に向かって走りながら、邪魔する人たちを切り殺していきます。
ドカン!!
私達がティアの部屋の前に着くと武装した人が吹っ飛んできます。
「ティア、大丈夫!!」
私は部屋の中に入って叫びます。
「リタさん!!」
ティアは驚いた顔で私を見ます。
部屋の中には武装した人たちが何人か倒れています。
「私は大丈夫です。リタさんは?」
「私も大丈夫ですよ。それより、この人たちが何なのか分かります?」
「いえ、爆発音がしたと思ったらいきなり入ってきて、武器を向けてきたので応戦しましたけど何がどうなってるのかまったく分からないです」
どうやらティアもどうなってるのか分かっていないようです。
「王女の部屋に援軍を向かわせろ!!」
外からそんな声が聞こえてきます。
「リタさん、ここは危険です逃げてください」
ティアはそういうと、杖を持って部屋を出て行こうとします。
「ティアこそ、どこ行くつもりなの!!」
私は慌ててティアの腕を掴みます。
「お父様達を助けに行きます」
ティアはそう言って私の腕を振り切ろうとします。
「どこにいるか分かってるの?それに、状況が分からない今は一旦どこかに逃げた方がいいです」
「リタさん、離してください。きっとお父様達も部屋にいるはずです」
私達が言い合いをしていると、武装した人たちがまた部屋に入ってきます。
「「ウィンドカッター」」
ザクザクザクザクザク
私とティアは魔法でその人たちを倒しますが、今度は次々と武装した人たちが入ってきます。
「このまま向かうのは無理ですよ」
「で、でも・・・・・」
ティアは渋ります。
「後で私も助けるの手伝いますから、状況が分からない今は逃げて、情報を集めましょう」
「・・・・・分かりました。リタさんを信じます」
ティアがそう言うのを確認して、私達は窓から飛び降ります。
「「レビテーション」」
魔法で浮かぶと私達は町に逃げました。
それから数時間、私とティアは町に潜み、マキちゃんに情報を集めてもらっていました。
「マキちゃん、どうでした?」
「状況は余り良くないです。王族はティア以外全員つかまり、抵抗した人たちはみんな殺されています。抵抗しなかった人たちもまとめて牢屋に入れられてますし、今は王族と懇意にしていた人たちを捕まえて回っています。それと、声明文もでてました」
そういってマキちゃんが一枚の紙を渡してくれます。
『私は宰相のリヒャルド=ション=グーデンである。王は我々貴族を蔑ろにし、平民を厚く労することに始まり、無理な税金の引き下げ、奴隷の廃止など、見過ごすことの出来ないことをやろうとしていた。よって、我々国を思う貴族は一致団結し此度のことを興した次第である。今後はニア王女を私の妻とし、貴族の意思の元、私が国を動かすこととする。また、王族の処刑を今日の夕方、城の前の広場で行う。反抗するものは一切容赦しないので肝に命じておくこと』
・・・・・・・・・・・・・
なんですか、この声明文、自分勝手にもほどがありますね。
「ティア、この税金の引き下げや、奴隷の廃止って言うのは?」
私はティアに気になったことを尋ねます。
「お父様がこんどする政策です。今は7割の税金を取っているのですが、これでは税が重過ぎるので6割に引き下げます。奴隷の廃止と言うのは、人の売り買いを禁止する法案です。すでに奴隷となっている人のことはこれから考えると言っていましたが、とにかく人の売り買いだけは先に禁止するそうです」
なるほど・・・つまり、今回のことを起こした連中はこれらが実行されると不味い人たちなわけですね。
これは、どうにかしないとティアの国が大変なことになってしまいます。
「マキちゃん、味方になってくれそうな人はいませんか?」
「そうですね・・・・・騎士団の人たちも捕まっているので助け出して武器を渡せば一緒に戦ってくれるはずです。けれど、それでも圧倒的に人数が足りないです」
「傭兵を雇うのは?」
「やめた方がいいでしょう、仮にとは言っても今この国を支配しているのは宰相です。それには向かうなんて事はたぶんしてくれません。下手をすればこちらの敵になります」
「う~~~ん。どうしましょうか・・・・・」
人数が足りないのはどうにもならないです。
時間をかければ私とティアとマキちゃんの三人なら城を制圧できるでしょうが、被害が大きくなりすぎるでしょうね。
下手をするとティアの家族が殺されかねません。
ここはティアの家族を助けることに的を絞った方がいいですね。
「こちらの人数が足りない以上お城を奪還するのは難しいです。そこで、まずはティアの家族を助けましょう。王様がこちらにいれば味方してくれる人も出てくるはずです」
「そうですね・・・・・でもどうやって助け出すのですか?」
ティアが同意して、作戦を私に聞きます。
「狙い目は今日の夕方、処刑の時です。その時なら王様達が一緒にいるはずです。そこを私が助けます。もしも、いない人がいた場合のためマキちゃんは全員の居場所を把握しておいてくれますか?」
「わかりました」
私がマキちゃんにお願いすると、頷いて引き受けてくれました。
「マキちゃんは見えませんのでティアも一緒についていって下さい」
「はい」
ティアも頷いて返事をします。
「それでは、マキちゃんは居場所の把握をしてきてください」
「行って来るね」
そう言ってマキちゃんはお城に向かいます。
「私達は時間まで見つからないようにしましょう」
「はい」
私とティアは見つからないように息を潜めました。
「これより、王族の処刑を始める」
夕方、城の前の広場にそんな声が響きます。
広場には多くの人が集まっています。
ほとんどの人は悔しそうな顔をしていますが、中には薄く笑っている人もいます。
処刑台にいるのは王様、王妃様、王子様×3です。
どうやらニアはこの場にいないみたいですね。
「マキちゃん、ニアの居場所わかります?」
「もちろんです。お城の三階からこの処刑を見せられています」
「わかりました。マキちゃんとティアはニアを助けに行ってください。助け出したらそのまま逃げて適当に隠れていていればいいです。マキちゃんは私の居場所が分かるので後で合流しましょう」
「はい」
ティアがそう言って頷くと、マキちゃんと一緒にニアを助けに向かいます。
さてっと、私も行動を開始しますかね。
「ジークフリード王よ、何か言い残すことはあるか?」
死刑執行人が王様にそう質問します。
「ワシを殺したところで、いづれお前達も誰かに討たれるだろう。覚悟しておくのだな」
王様がそう言うと、「ふん」と執行人は鼻で笑います。
「では、まずは王から処刑する」
そういって執行人が処刑を開始ししようとします。
ヒュゥゥゥゥ、ザシュ
・・・・・ドサ
その時、私が空から奇襲をかけて執行人の首を切り落とします。
「サンライトフラッシュ」
私は魔法で閃光を放ち全員の目をくらませます。
「レイ、レイ、レイ、レイ、レイ」
目がくらんでいる間に王様達の近くにいる人たちを魔法で撃ち殺します。
バキ、ガジャン、ドォォン
ある程度撃ち殺したら今度は処刑台を壊して王様達を助けます。
「私に付いて来て下さい」
私は王様達にそう言います。
しばらく呆然としていた王様達でしたが、すぐに気と取り戻すと、私に付いてきてくれます。
「アースブレイク」
王様達が通り過ぎた後の地面を壊して追っ手がこないようにします。
「王様、どこか隠れ家になるような場所知りませんか?」
私は走りながら王様に聞きます。
「む・・・・・なら町外れの廃屋がいいだろう。そこの地下に隠し部屋がある。そこならしばらくは隠れられるはずだ」
「わかりました。そこに向かいましょう」
私と王様達はその廃屋に逃げ込み、隠し部屋に隠れます。
「はぁ、はぁ、はぁ、リタ殿、助かった。礼を言います」
王様は息を整えながらそういいます。
「いえいえ、私も流石に今回のことは見逃せませんのでね」
私は笑顔で答えます。
ちなみに、私だけは息を切らせていません。
「リタ殿、助けていただいて早々にすまないのですが、宰相にニアがまだ捕まっているのです。それと、ティアは無事でしょうか?」
王妃様が心配そうな顔をして言います。
「大丈夫です。ティアはニアを助けてすぐに逃げることになっています」
「ティアが助けに行ったのですか!!」
王妃様は驚いて声を上げます。
「心配しないでください、ティアは前と違ってもう病弱ではありません。必ず無事にニアを助けます」
「そうはいっても・・・・・・」
王妃様はそれでも心配しています。
(リタ、リタ、ニアを助けましたよ。追っても上手く巻きました。リタはどうでしたか?)
その時、マキちゃんから念話が届きます。
どうやら、ティア達も成功したみたいです。
(こちらも、無事助け出しました。今は町外れにある廃屋の隠し部屋にいます)
(わかりました。私達もそこに向かいますね)
念話で話していると、私が急に黙ってしまったので、王妃様たちが不思議そうにしています。
「今、精霊から知らせがありました。ティア達も無事です。今は精霊の案内を受けてこちらに向かっています」
「本当ですか!!」
王妃様は私に迫ってきて聞きます。
「はい。もうすぐここに着くはずです」
王妃様はその言葉を聴いてホッとします。
っとその時廃屋に誰か入ってくる気配がしました。
王様達も気付いて警戒します。
(リタ、廃屋に着いたけど、どこにいます?)
マキちゃんが念話で私に話しかけます。
どうやら、以外とすぐ近くにいたみたいですね。
(ここです、今空けますね)
私は念話でそういって隠し部屋から出ます。
私がいきなり隠し部屋を出たので、王様達がいぶかしみましたが、ティアが入ってくると顔をほころばせました。
「ティア、ニア!!」
王妃様が叫んで二人を抱きしめます。
「お母様、心配かけました」
ニアがそういいます。
「無事でよかった・・・・・本当に良かった」
王妃様はそう言って少し目に涙をためました。
さてっと、今度はこちらから反撃です。
宰相に目に物見せてやりましょう。
ここまで読んでくれてありがとう。
なんか・・・王子様の活躍がありませんね。
三人もいるのに・・・・・。
誤字、脱字、感想などあったら書いてくれるとうれしいです。
次回は、お城奪還です。
楽しみに待っていてくださいね。
え?一気に書けって?
すいませんすいません