十六話 学園にも長期休みがあります
今回は家に帰ります。
誰の・・・・・とは言いませんが♪
「私の家に来ませんか?」
ティアにそういわれたのは、前期授業が終わる3日ほど前のことでした。
家を追い出された私は、休みに入っても家に帰ることができません。
というか、あんな家帰りたくもありません。
なので、休みの間は依頼を受けたり、この部屋でのんびりしようと考えていました。
いつものように、部屋で私達3人が雑談をしていた時、たまたま今度の休みの話題になり「休みの間はリタさんも家に帰るのですか?」と聞かれたので「私は帰らないでこの部屋にいるよ」と答えたところ、ティアの家に誘われたのでした。
「いいんですか?」
「はい」
「なら、行ってみようかな」
「歓迎します」
私は断る理由もなかったので、ティア家に行くことにしました。
お泊りイベント発生です。
え?いつも同じ部屋にいるだろうって?
寮の部屋にいるのと、家でのお泊りでは全然違いますよ。
さて、そうと決まればティアの家族にお土産でも持っていったほうがいいですかね。
「ティア、お土産は学園名物、『高級魔物の魔力クッキー詰め合わせ』でいいですかね?」
「いえいえ、お土産なんて要りませんよ」
「そう?ご両親に挨拶するのですから、有ったほうが良くないですか?」
「なくていいですよ。それにしても、挨拶って・・・間違ってはないですけど・・・リタさんが言うと違う意味に聞こえるから不思議です」
・・・・・・・・・?
「いえ、気にしないでください」
良くわかりませんでしたが、ティアがそういうなら気にしないことにしましょう。
こうして、私は(マキちゃんも)ティアの家にお邪魔することになりました。
学園からは、馬車で7日ほど掛かるそうです。
「何ですか?この豪華な馬車は?」
終業式のあと、(もちろん寝てました)私達はティアに連れられて、馬車の待っているところに行きました。
・・・・・・・・・・・・・・?
ティアは不思議そうな顔をしていますが、明らかに他の馬車より豪華です。
大きさも他の馬車の2倍くらいあります。
「ティアって貴族のお嬢様だったりします?」
私は思わず聞いてしまいます。
「それは・・・・・ついてからのお楽しみです」
ティアはそうって笑います。
なんか・・・嫌な予感がしますね。
ちなみに、クロスロード家も名門ですが、私は落ちこぼれでしたので、良い思いをした記憶はありません。
学園に来た時の馬車もひどかったですしね。
さて、馬車に揺られること5日、なんかリーン王国をでました。
ティアってリーン王国の人ではなかったんでしょうか?
まぁ、そんなことは置いておいて、この馬車最高です!!
全然揺れない上に、ふかふかのお布団、呼ぶとメイドらしき人まできます。
私達は、馬車の中だというのに、いつもより快適な暮らしをしていました。
もういっそ、ここに住んでしまいたいです。
っと、私がそんなことを考えていた時です、急に馬車が止まりました。
今までは、ゆっくり止まり、出来るだけ中を揺らさないようにしていたのですが、今回はガタッといって、思いっきり揺れました。
トラブルの予感がします。
私達は顔を見合わせそっと外を覗いてみると、護衛の人たちと、山賊みたいな人たちが戦っていました。
しかも、山賊の方は、すごい数です。50人くらい要るんじゃないでしょうか?
私達がそうしている間にも、護衛の人たちが殺されていきます。
これはやばいですね・・・・・私達も加勢したほうがよさそうです。
「マキちゃん、ティア、私達も加勢しましょう」
「「はい」」
そういって、私達も馬車の外に出ます。
「お、獲物が自分達から出てきたぜ」
山賊が下品に言います。
「に、逃げてください」
護衛の人たちは必死に叫びます。
もちろん、私達は逃げたりしません。
「アースクエイク」
私は土の中級魔法を唱え、山賊が態勢を崩したところ(護衛の人たちも崩れています)で攻撃を仕掛けます。
まず、マキちゃんと協力して魔術師らしき人たちの首をはねます。
次に、態勢を直した山賊に向かってティアが風の魔法を放ちます。
「くっこいつらから殺せ!!」
山賊のリーダーらしき人が言います。
私は『レッドキャンパス』を出すと、電撃を纏わせます。
これで、切りかかってきた山賊の剣を防ぐだけで相手を倒せます。
ティアは接近戦は向かないので、『レビテーション』で空に逃げます。
そして、マキちゃんは気付かれづ、山賊のリーダーに近づき、そのまま首をはねます。
「ひっ」
急にリーダーの首が飛んだことに驚いた山賊の一人が悲鳴を上げます。
「に、逃げろ、こいつらやべぇ」
一人がそう叫ぶと、我先にと山賊が逃げ出します。
そこで、私とティアは攻撃系中級魔法を山賊が逃走した方に放ちます。
これで20人くらいは殺れたでしょう。
「ヒール」
山賊が逃げた後は護衛の人たちや、馬車の業者の人たちの手当てをします。
「それにしても、譲ちゃんたち強いなぁ、護衛が護衛対象に守られるなんて笑い話にもならねぇ」
護衛のリーダーらしき人がそういいます。
「い、いえ、そんなことないですよ」
ティアは顔を赤くしてオロオロしている。
「それより、さっきの山賊って何なんですか?すごい人数居たんですが・・・」
私は疑問に思っていたことを聞きます。
「あぁ、あいつらは『残虐の悪魔』って名乗ってる山賊団で、此処から少し行ったところにある山に住んでるらしいんだが、何でも500人くらいいるそうだ」
「500人ですか・・・そんなの放っておくとは国は何をしてるのでしょう・・・」
ティアが思わずつぶやきます。
「いや、それが、この辺は国境でな、下手に国が介入できないんだよ。だからギルドに依頼が出たり、賞金が掛かったりしてるんだが・・・数が多くてな、どうしようもないんだわ」
最悪ですね、このまま放っておくと次々に被害が出そうです。
それに・・・・・・
(マキちゃん、私達なら勝てると思う?)
(ん?リタなら500人くらい楽勝ですよ)
(楽勝って・・・私そんなに強くなってる?)
(えぇ、実際に学年トップじゃないですか)
(なら、倒しに行こうかな・・・マキちゃんも手伝ってくれる?)
(もちろんですよ。でも、リタいつ慈善事業に目覚めたんです?)
(あ~~~、人助けって言うのもあるんですけど・・・それだけの規模の山賊なら色々持ってそうじゃないですか?)
(・・・・・ふふふ、それでこそリタです)
(どういう意味かな?)
(そういう意味です)
「ティア、ちょっと此処任せていい?」
私とマキちゃんは、念話で話し終わると、ティアに声をかけます。
「どこか行くんですか?・・・・・まさか山賊の根城に行くつもりじゃないですよね?」
さすがティア、鋭いです。
「いえ、ちょっと春を探しに行きます」
「あ・・・・・行ってらっしゃい」
私がそう言って誤魔化すと、ティアは顔を赤くして答えました。
さて、今私はマキちゃんの探知魔法で敵の根城を見つけて、近くの草むらに潜んでいます。
どうやら、山賊たちは洞窟のような場所を根城にしているようです。
とりあえず、忍び込みますかね。
「クリアライト」
私は透明化の光魔法を唱えます。(ちなみに、これオリジナル魔法だったりします)
私とマキちゃんは入り口で見張りをしている山賊2人の首を、同時に切り落とします。
私達は根城に潜入すると、まず山賊のボスを探します。
いくら人数が多くても、ボスが死ねば流石に動揺するでしょう。
私達はボスを探しながらも、少人数でうろついている山賊を見つけては殺し、土魔法で埋めてしまいます。(もちろん消音魔法を使ってです)
私達が潜入して数分、私達はボスらしき人物が、幹部らしき山賊達と何か話しているところを発見しました。
途中に奪った財宝を隠している場所や牢屋のようなところで捕まっている人たちを見つけましたが、とりあえず放置しておきました。
「ん?誰だ!!」
私達が部屋に入るとボスらしき人が叫びます。
さすが、腐っても山賊のボスらしき人です、私に気が付いたようです。(・・・・・もうこの人がボスで言いや)
けれど、残念なことに、マキちゃんには気付けないみたいですね。
「こんにちわ」
私は姿を現すと、幹部の山賊は慌てた様子をしました。
「ほぅ、これは綺麗な譲ちゃんじゃないか、こんなとこに何しにきやがった?」
「いえ、ちょっと財宝を貰うついでに、壊滅させておこうかと思いまして」
私がそういうと、ボスは近くに置いてあった巨大な主を持ち上げました。
「言うじゃねえか譲ちゃん、どうやってこの『残虐の悪魔』を壊滅させるんだ?」
「ん~~~こんな感じに?」
私がそういうと、ボスの後ろに回っていたマキちゃんが首を切り落とします。
・・・・・・・・・!?
いきなりボスの首が落ちたのを見て、幹部達が呆気に取られます。
私はもちろんその隙を見逃すことはなく、『レッドキャンパス』に氷を纏わせて幹部達を切り殺します。
「以外とあっけなかったですね・・・・・」
ボスたちは声を出す暇もなく始末されます。
これなら、ボスなんて気にしなくても良かったかもしれません。
その後、私は財宝部屋に行って、片っ端から財宝を亜空間に入れます。(もちろん、見張りは殺して埋めておきます)
次に、牢屋らしきところに行って、捕まってる人たちを助けます。
私は透明化状態で見張りに近づいて殺すと、鍵を奪って、牢屋を空けます。
捕まってる人たちが騒いでもいいように消音の魔法を使うのもわすれません。
「あ・・・あなたは?」
捕まっていた人の一人が聞きます。
「通りすがりの泥棒です」
私はとりあえずそう答えておきます。
「出口まで案内するので此処を出ましょう」
私がそう言っても捕まっていた人たちは動きません。
山賊を恐れているんでしょうか?
「大丈夫です、山賊が来ても私が(正確にはマキちゃんが)倒しますので、ボスはもう始末しましたしね」
私がそういうと、捕まっていた人たちは驚いた顔をしましたが、私に付いてきてくれるようです。
私は捕まった人たちを出口まで案内すると根城の方に向きなおします。(途中近づいてきた山賊は、マキちゃんが倒して埋めました)
「地に眠る燃える水よ
霧となりて
我れに従え
バーンミスト」
私は根城の中に気化したガソリンを流し込む。
「ファイアーボール」
根城全体に行き渡ったころを見計らって、私は『ファイアーボール』を放つ。
ドカ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン
根城は跡形もなく吹っ飛びました。
私は、パクって来た財宝の一部を捕まっていた人に渡すと、そのまま馬車に戻りました。
あとは、自分で何とかするでしょう。
私が馬車に戻ると、爆発の音に驚いた護衛たちが何事だと騒いでいました。
どうやら治療の方はもう終わっているみたいですね。
パンパン
「そんなことより、私は早く行きたいので出発してください」
私は手を叩くと、そういって馬車に乗り込みます。
業者の人たちは納得していませんでしたが、山賊のせいで後れていたこともあって渋々出発します。
「リタ、ちょっといい?」
なにやらティアが怒っているようです。
「な・・・・・なにかな?」
「わかってるでしょう?」
冷や汗が大量に出ます。
「え・・・・・えと・・・・・ごめんなさい?」
「ごめんなさいじゃないです!!なんで私も連れて行かなかったんですか!!」
その後、寝るまでティアに説教されました。
そうそう、なんか盗賊団『残虐の悪魔』を潰した、『漆黒の魔術師』がいるそうです。
世の中にはすごい人もいるものですね。
ここまで読んでくれてありがとう。
誤字、脱字、感想など書いてくれるとうれしいです。
次回は・・・秘密です。
え?ふざけるなって?
すいませんすいません。