十二話 契約
倒れたティアはどうなるのでしょうか・・・
私が髪をなでると、ティアは薄く目を開けて、嬉しそうにします。
『園外学習』が終わってから、今日で2週間が経ちました。
私は、教師を殴ったということで、10日の停学を受けましたが、気にしませんでした。
むしろ、授業なんかより、ティアの方がずっと大事なので、停学があけても、まだ一度も学園へは行っていません。
「マキちゃん、ティアの様子はどう?」
「リタ・・・・・良くないです。このままでは3日と持たないです」
寿命については、専門のマキちゃんが、悲しそうに言います。
「なにか・・・何か方法はないんですか!!」
「・・・・・・・・・」
私は、思わず叫んでしまいますが、マキちゃんは答えてくれません。
私の目から、涙が出てきます。
「どうしたら・・・どうしたらいいんですか・・・・・誰か答えてください・・・・・」
しかし、それに答えてくれる人はいませんでした。
それから2日、ティアは動くことすら、まともに出来なくなっていました。
私は、悲痛の思いで、ティアを見ています。
「ティア・・・・・大丈夫、必ず私が助けて見せますから」
私がそういうと、ティアは少し目を開け、微笑みます。
「ティア・・・・・うぅぅぅ・・・・・」
私は何度目かになる涙を流しました。
その時、天界の知り合いに連絡して、何かいい方法がないか聞いていた、マキちゃんが口を開きます。
「リタ・・・・・もしかしたら、ティアを助けられるかもしれない」
「マキちゃん、ほんとですか!!」
私はマキちゃんに、振り向いて聞きます。
「えぇ・・・・・この方法なら何とかなると思います。ただ、これはティアの同意がないと出来ません」
「じゃぁ、じゃぁ早くしましょう」
私は逸る気持ちを抑えられず、言います
「リタ、落ち着いてください、この方法は、確かにティアを助けられるけど、それが彼女のためになるかわかりません」
「・・・・・・・・どういうこと?」
私は良く意味がわからず、聞き返します。
「私が見つけた方法というのは、『契約』です。これは、自分より強いものと『高位の契約』を結ぶことによって、多くの加護を得るというものです。しかし、『高位の契約』をすると、主従関係が発生します。それも、『私とリタの関係に近いほどの』です」
「私とマキちゃんの関係?」
「そうです」
マキちゃんはそう答え、自分についている首輪を指差します。
「つまり・・・『契約』をすると、ティアは奴隷になっちゃうってこと?」
マキちゃんは頷きます。
「そんな・・・・・・・・・・」
私は声を詰まらせます。
「もちろん、何処の何とも判らないようなのと、『契約』させるつもりはありません。やるとしたらリタと『契約』することになります」
「・・・・・・・私?」
「そうです、リタならすごい力を持っているので申し分ありません。ただ・・・・・不老不死になると思いますけど」
・・・・・・・・・・・・・・
「とりあえず、『契約空間』を作りますので、そこでティアとも相談しましょう。その中ならティアも普通に話せます」
「・・・・・・ここは?」
ティアは目を覚ますと、キョロキョロと周りを見渡します。
「あれ?私、動ける?」
「ティア!!」
私は混乱しているティアに抱きつきます。
「リタさん?・・・・・ここは何処なの?それに私・・・・・何で動けるの?」
「ここが『契約空間』だからですよ、ティアの身体はまだベットの上です」
ティアの疑問に、マキちゃんが答えます。
「『契約空間』?」
「そうです、とりあえず状況を説明しますので聞いてください」
そういって、マキちゃんは説明し始めます。
「・・・・・・マキさんが死神で、リタさんは名門貴族で、私はリタさんと『契約』する?」
話を聞いたティアは、あまりのことに、理解が追いつかないようです。
「いままで嘘ついてて、ごめんね」
私は頭を下げて、ティアに謝ります。
「い、いえ、それはしょうがないと思いますから、頭を上げてください」
ティアは慌ててそういいます。
「えと・・・それじゃぁ、リタさん『契約』しましょう」
ティアは笑顔でそういいます。
「いいの?」
私は聞き返します。
「はい、私が助かるには、それしか方法がないみたいですし、リタさんとマキさんもしてるんですよね?」
「そうです。ですが、慌てないでください、もし死んだとしても、私が責任を持って転生させますし、不老不死というのは、あなたが思っている以上に大変なことですよ」
ティアがあっさり答えたので、マキちゃんがそう言います。
「大丈夫です、『契約』してください」
「ほんとにいいのね」
「はい」
「リタもいい?」
「あ、いいです。もちろんです」
「なら、契約を始めますね」
「「はい」」
「『高位契約』は、普通の『契約』と違い、多目の血を必要としますので、このナイフで手を少し深めに切ってください」
マキちゃんはそういうと、小さなナイフを私に渡します。
・・・・・・・・痛っ
私は迷わず自分の手を切ると、そのナイフをティアに渡します。
・・・・・・・・痛っ
ティアもナイフを受け取ると、私と同じように手を切ります。
私とティアの手から血が流れ降ります。
「次にその手を合わせてください」
私とティアは、マキちゃんの言うとおりに切った手を合わせます。
マキちゃんはそれを確認すると『契約』を始めます。
「数多の世界に存在する神々よ、
我が『黒衣 真貴』の名において
このもの達に契約の儀を行うことを許したまえ」
マキちゃんがそう唱えると、私とティアの血が輝き、光になって身体を包みます。
そして、私の口が勝手に祝詞を唱えます。
「私、リタ=ロスト=クロスロードは
汝、ティアノート=フィル=ローラントの全てを受け入れ
永久の守りを与えることを
此処に宣言します」
私の祝詞が終わると、今度はティアの祝詞が始まります。
「私、ティアノート=フィル=ローラントは
汝、リタ=ロスト=クロスロードに全てを捧げ
永久の信頼を与えることを
此処に宣言します」
ティアの祝詞が終わると、マキちゃんが『契約』の成立の宣言をします。
「此処に我が『黒衣 真貴』の名の下に
リタ=ロスト=クロスロードとティアノート=フィル=ローラントの
契約が成ったことを宣言します」
マキちゃんの宣言が終わると、私達を包んでいた光が消え、手の傷もなくなりました。
「ティア、ティア、起きれますか?」
私は『契約空間』から戻ると、ティアの元に行き、話しかけます。
ティアはゆっくり目を開けると、身体を起こし、私に微笑みました。
「ティア!!よかったです!!」
私は泣きながらティアに抱きつきます。
「ティア、これからは、ずっと一緒ですよ、覚悟してくださいね」
マキちゃんもそういって、ティアに抱きつきます。
「はい、こちらこそ、これからもよろしくお願いします」
こうして、ティアと私は『契約』をし、今までが嘘のように元気になるのでした。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
ティア助かってよかったですね。
誤字、脱字、感想など書いてくれるとうれしいです。
次回は、『日常』です。
楽しみにしていてください。
え?タイトルころころ変えるなって?
すいませんすいません