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7.水の国で(前編)

長くなったので分割


少しシリアス風

 無事に3か月の刑期を終えモー子さんを攫って水の国に戻ってきました。


 別れ際に花子たちが悲しそうな瞳で見ていて後ろ髪を引かれるような気はしたものの意識を強く持って村を出てきた。彼女たちは売られていくわけではないし、放牧されている乳牛は割と長生きでインド人ほどじゃないけど大事にされているから、死ぬ前に後数度は会えるだろう。


 水の国では門番に止められたけど装備を収納しながら強行突破。倉庫に物資もたまっていたので収納!収納!


 倉庫ごと収納して倉庫だけ置いてくるので楽ちん。

 いやー河童には頭が上がりませんな。ぐへへ。


 モー子さんには安全のために個人用強化結界発生魔道具、通称結界護符を渡してある。これはダイヤモンドをコアにして聖女の魔力を活用した魔法陣を組み込んだもの。


 宝石に魔法陣を刻むことで魔道具を作ることが出来るけど、それぞれ宝石と相性の良い属性が存在する。聖属性なら真珠や水晶、ムーンストーン。火属性ならサンゴやガーネット、ルビー。水ならアクアマリンやラピスラズリ、サファイヤ。風なら翡翠やエメラルド、土なら琥珀やトパーズ。闇なら黒真珠やジェット、オニキスなど。ダイヤモンドは比較適どの魔力とも相性がよく中でも聖女の魔力との相性が抜群。


 そのため護符を作るのにマッパの国の王冠についていたゴルフボール大のダイヤをばらして活用した。王冠の価値も材料部分だけだと残り5億くらいかと思っている。正味15億イエーン程度の出費だけど、多少の出費は安心安全のためなら仕方がない。すでに資産としては使いきれない程度はあるし、お金は使うためにあるのだし。


 魔法やスキルに関しても研究は怠っていない。前回聖女の結界は対策されていたしね。現在では結界に光と闇の魔法を組み込んで、魔法や魔道具では直接結界には干渉できないようにしてある。対策を取ろうにもサンプルが私しかいないので研究に困るだろうこと請け合いである。モー子さんの結界護符も同様なのでよほどのことがない限り危険はない。悪意に反応するのは変っていないのでドジっ子属性によるけがは仕方ないんだけどね。


 そんな感じで私は水の国の倉庫街を回りながら収納と魔法と料理の研究、あとはモー子さんとのお気楽イチャイチャライフを送っていたのだった。


 ちなみに宿は例の食堂のすぐ近く。宿代もきちんと払っている。お金はいくらでもあるのだからこんなところでケチってサービスの質を落とされたくないからね。



 *



 ——某所にて——


「聖女による被害は既に50億を超えた。契約違反による損害賠償や信用の既存による新規契約の減少等を含めると100億イエーンどころの話ではない。しかもいまだにこの町に居座っている。彼女がいる限りこの町、いやこの国はおしまいだ。」


 薄暗い室内で複数の男たちが話し合っていた。


「なんて強欲な女なんだ。既に一生かかっても使いきれないだけの金や資材を得ているのにいまだにこの国にいるとは嫌がらせなのか?」


「もともとこの世界の人間ではないから思考が読めん。しかしこのままにしておくわけにもいかん。」


「では例の計画を実行するしかないな。」


「それしかないか・・・。」


「そうだな、では彼女が活動を開始する午前9時に決行するとしよう。各々準備をしておくように。」


「「「了解した!」」」


 こうして男たちの夜は更けていった。



 *



 ——翌朝——


「「「「聖女様!!」」」」


 日課をこなそうと宿から出てみると複数の男が地面に転がっていた。中には特徴的なカッパをした頭もいる。


「えーと。あなたたちは何者で、ここで何をしているのかな?」


 とりあえず気持ち悪いので状況を聞いてみることにする。すると初老の男が


「初めまして。私は水の国の評議会で副議長をしているものです。この度は聖女様にお願いがあって参りました。この格好は聖女様の流儀に合わせた最上級の礼儀作法DO☆GE☆ZAのつもりでしたが、どこか不手際があったでしょうか?」


 何か微妙に乙女座りになっていたり、気持ち悪いのがいるけどなんだろうね。


「何か微妙に気持ち悪い座り方もいるけどどこで習ったのかな?」


「これは聖女様が山の国で行っていたものを我が国の諜報員が調べて我々に伝えてきたものです。失礼がありましたら直しますが・・・・」


 何だろう。この無駄に優秀な諜報員は・・・。牧場周辺全体に結界を張っていたのにとんだ抜け道があった。確かに見ているだけなら悪意もなく結界にも引っかからないから見放題ではあるのだけど・・・。


「土下座はもっと足を縦に重ねる感じで足の裏も重ねて手はハの字でってそういうことはおいておいて、どういう風の吹きまわしかな?」


「聖女様に倉庫の荷を持って行かれているために、わが国では大変な被害が出ておりどうやったらおやめいただけるのかとお伺いを立てに参りました。いえもちろん我が国が悪いのは十分承知しておるのですが・・・・。」


 おお。なかなか礼儀をわきまえたイケオジですね。


「そうだ!そうだ!貴様のせいですでに100億イエーン以上の損害が出ているのだぞ。この業突く張りめ!」


 おお。相変わらず礼儀知らずのカッパですね。


「先に手を出してきたカッパが何を言うかな?この報復は正当な行為であると思っていますが?それに私が奪ったものはまだ50億程度でしかありませんよ。」


「確かにおっしゃる通りですが、商品が届かないことなどで発生する違約金の支払いや信用問題等も考えると、奪われた額の数倍の損失が発生しているのです。このままでは町も国も滅びてしまいます。」


「50億も奪えばもう十分だろうが。一生遊んで暮らせるだけの資産を得たのだからさっさと出ていけ。」


 本当に懲りないカッパですね。


「まずあなた方は考え違いをされていると思います。十分かどうかを決めるのは私です。また私は事実上の宣戦布告をそこのカッパにされて現在に至ります。国と国、まあ今回の場合私達ですが。一つの集団ともう一つが争った場合その争いはどうやって終結させるのですか?」


「それは一般的には、終戦協定や和平の締結などを行い・・・まさか?」


 副議長は気が付いたようですね。


「その通り。現状私たちとあなた方は継戦中なのです。ですから敵の物資を奪うのは当然の行為と言えます。あなた方だって私に隙があれば襲い掛かって来たでしょう?」


「確かにおっしゃる通りです。ではどうすれば和平・・とまではいかなくとも終戦を迎えられるのですかな?」


「そんな聞き方でよいのですか?こちらの出した条件を丸々飲む気はありますか?」


「善処はしますがどこまで飲めるかは聞いてみないと何とも・・・・。」


 副議長をやるだけあってそれなりに切れるようですね。


「ええい!この強欲女め!あと50億か?100億か?」


 河童が騒いでいます。頭に水をかければ冷静になるのでしょうか?


「そんなはした金では全然足りませんね。」


「「「「え?」」」」


「間抜けな顔がいっぱいですぅ。」


 モー子さんが喜んでいますね。絵面としてはいい感じで間抜け面がそろっているのでなんとなく気持ちはわかりますね。


「貴様正気か?」


 河童の頭から湯気が出ています。


「ではお聞きしますが、そこのカッパが私を奴隷にしようと襲ってきたとき私は120億強の資産を持っていました。これは私の半年分の収入です。年収で約240億の計算になります。もしあの企みが成功すれば120億と年収240億の少女が手に入っていたのです。私が30年健脚であれば7200億程度稼ぎだせるわけです。実際数か月であなた方から数十億ほど頂いているでしょう?」


「それはその通りですが・・・・」


 副議長が苦しい顔で答えます。


「別の見方をしましょうか?水の国の軍事費はいくら位くらいですか?」


「だいたい年間1000億ほどです。」


 平均年収が333万くらいといっていたから、職業軍人が一人500万で2万人雇える計算になる。実際には装備品や経費などもあるから7割くらいだの常備兵力だろう。この国の人口を200万人とすると1%くらいだが、商業国家だから冒険者を戦時雇用したり、武装商船や私掠船は平時では国の丸抱えではないだろうからこんなものだろう。


「私を奴隷にして結界を張った場合、防衛にかける予算を攻撃やほかの産業に振り替えることが出来るようになります。半分が防衛予算だとして年間500億イエーン。結界を張るだけなら50年くらいの勤続は可能でしょうから2兆5000億イエーンになるわけです。しかも浮いたお金を投資するとなれば複利でさらにドン!」


 一同が真っ青を通り越して真っ白になっている。


「さすがにそこまでの金額をお支払いすることは不可能です。どちらかが滅びるまで戦うおつもりですか?」


「もちろん私は魔王のように種族の生存をかけた戦いをしたいわけではないし、『人類の敵』になりたいわけではないわ。ただ今回のそちらの直接的な損害が50億とし、企みが成功した場合の利益を2.5兆とした場合、500回に1回勝てばいいギャンブルというものが成立することになるわ。これでは、私の平穏は永遠に訪れないと思わない?私が巻き上げた資産が現金に近い状態のまま保有していた場合、それを回収することで、さらにそちらが勝利した場合の報酬が大きくなるわけだし。」


「おっしゃること、ことごとくごもっともな話です。それで我らに何を要求されますか?」

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