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4.水の国へ

 てりやきバーガーが食べたい。


 召喚されて三か月が経ったときに思ったこと。


 え?日本人なら米じゃないのかって?


 僕はおにぎりが食べたいんだなってどっかの画伯じゃありませんよ。


 それはともかくとしてご飯は別に欲しくない。というか最初のマッパ王国にもあった。この世界の植生はだいたい前の世界と同じ。文化レベルは中世後半。もちろん魔法があったり、こっちにしかないものやこっちの方が進んでいるものもある。


 だからというか、米はある。大量に収納済み。というか米なんて縄文時代から作っていた。稲作が生活の中心になったのは弥生時代かもしれないけれど、どちらにしたってあるところにはあったのだから、探せばあるだろう。もちろんブランド米などではないだろうけど炊いてすぐのご飯は普通においしい。ジャポニカ米なら玄米でもそこそこ行ける。しかもアイテムボックスの中なら炊き立てで保存可能。パックご飯どころではない利便性。


 で何がないかというと調味料。そりゃそうだ。味噌や醤油だって起源はともかく令和の時代のような形になるのは江戸時代ごろから。要するに17世紀。工業製品レベルは明治から。ケチャップはトマトがユーラシア大陸に持ち込まれたのが大航海時代。15世紀後半の近世。ソースに至っては様々な香辛料にトマトを含んだ野菜や果実。むしろ異世界物でよく出てくるマヨネーズのほうが原料だけならはるかに集めやすい。文化レベルが15世紀中盤以前の中世といった理由がここにある。


 現状であるのが酢と塩。皆さんは中世レベルの異世界の料理に期待してはいけませんよ。食べてまずいわけではないけど飽きるんです。聖女召喚で拉致られて恨む気持ちも日本人ならわかりますよね。イケメンより食い気ですよ。美人は三日で飽きるけどとは言うけれど、同じ食い物が続けばやっぱり三日で飽きるんです。


 これがマッパの国を出ようと思った一番の理由。なのでいろいろ原材料を集めるまでは、定住するつもりはない。同じ国にいると地域性で多少はまぎれるけどやっぱり3か月が限界。さっさと次の国に行きたい。


 一方で聖女になって便利になったのは水や食べ物に当たらなくなったこと。正確に言うとあたってもすぐ直せること。辛い物を食っておなかを壊してもすぐ直せる。とても便利。魔法で治せるなら船旅のほうが楽ではと思うかもしれないけど、それはダメ。魔法にも気持ちが乗る。要するに酔った状態で魔法を使っても効果が出ない。全くでないわけではないけど、酒酔いと違って継続的に来るから、効果がない。ほとんど唯一の天敵。まあ馬車でも酔うけどね。


 でなんでこんな自分語りをしているかというとまた出たからですよ。砂漠の国を超えて水の国に入ってすぐにカサカサしたものが。


「会って早々、ひどく汚らわしいものを見るような眼を向けるのはよくないぞ。」


「だってねぇ。身なりを見るとどこぞの権力者の御曹司でしょう?今までロクな目にあってきませんでしたので。」


 明らかに量産型の風体。


「なんとなく馬鹿にされたような気がするが、有力者といわれればその通り。俺はこの国の評議会議長の長男だよ。」


 水の国は共和制とやらで有力者数人が評議会を作って話し合いで国の方針を決めているらしい。


「やっぱり・・・。それでそのマリーンハイプリンス様が何の御用で?」


「なんか妙な言い回しだけど、僕がイケメン王子さまってことは理解してくれたかな?」


「そうですねー(棒)」


 私も別に何でもかんでも喧嘩を売っているわけではないのだ。売られた喧嘩を買っているだけ。


「では君には僕の第二夫人に「寝言は寝て言え!」」


 またですか・・・・


「そんなにかぶせてこなくても、ちょっとこじゃれたジョークじゃないか。」


「しゃれてもいないし面白くもないし、あなたの顔レベルで酷い話じゃないですかね。」


 これはもう帰ってもよいですよね。


「まあまあそんなに照れなくても」


 イラッ!


「これはもう私がストレスではげる前にこいつをハゲにしてもよいレベルですよね。具体的には河童ハゲの方向で・・・。頭のさらに水を注がなきゃいけないですけど水の国なら問題ないでしょう。ええそうしましょう。」


 私が納得していると、さすがに慌てだして


「まっ、待ちたまえ。実は君が砂漠の国でいろいろやらかしたと聞いて、入国の目的を聞きに来たんだ。」


「目的ですか?主な目的は買い物と観光、港町での情報収集、それに次の国に行くための中継地として寄っただけですよ。」


 聞かれたところで別に困る話でもないですから正直に話します。


「そうか。では物は相談なんだが実は首都である港町にクラーケンが現れてな。その退治を手伝ってほしいのだ。もちろん報酬は出すし、町での情報提供もしよう。悪くない話だと思うのだが。」


「はい。お断りします。」


「そうかでは具体的な報酬なのだが、って断る?」


 マリーンが不思議がっています。


「情報は自分で集めますし、観光をするので余計な時間は使いたくありませんし、お金もあるんですから、余計な戦闘に巻き込まれる必要もありませんよね。」


 実は元手もできたので砂漠の国でいろいろ仕入れてきている。アイテムボックスがある以上、交易だけでも巨万の富が稼げるはずだ。何が悲しくて冒険者の真似をして討伐なんてやらねばならないのか・・・・。


「え?1か月程度の依頼で1000万イエーンだよ。この国の平均年収の約三倍。」


「私は冒険者ではありませんし、1か月の収入としては少ないですし、そんな長期拘束は困りますし、何より攻撃手段のない私が討伐依頼をこなせると思いません。」


 何を考えているんでしょうね。


「君には結界を張ってもらえばいいだけだよ。報酬なら多少の上乗せはする。」


「そんな時間もないのでお断りします。」


「ではこの国にいる間だけでも結界を張っていてもらえないだろうか。君も儲かるし、港町も安全になる。お互いメリットがあると思うのだが。聞くところによると大した負担ではないのだろう?」


 ・・・ああなるほど。倒す手段を言わないということはこの国に囲いたいということですね。そして自動延長狙いと・・・・。随分舐められたものです。それに結界を張るのは負担ではないですが、実は個人用と広域用を併用することはできません。この国の人間に何ができるとも思えませんが、リスクは可能な限り避けるべきでしょう。特殊な魔道具のようなものがないとも言えませんからね。


「人間楽をするとそれが当たり前になって当然の権利と思うようになる。私が一度結界を張れば解除しようとしたとき皆が私を恨むようになり出ていきにくくなる。といったところですかね。残念ながらそんな他人の評価は気にしませんから引き受けたとしても勝手に出ていきますし、そもそも依頼としては割が悪すぎて受ける気にもなりません。」


「どうしても引き受けるつもりはないのか?」


 くどいですね。


「当り前でしょう。冗談は顔だけにしてください。」 


「くっ、下手に出ていれば調子に乗りやがって!構わんプランBだ。やってしまえ。」


 マリーンがそういうと、実はそばで控えていたけど存在感が薄すぎて忘れていた手下たちが


『隷属の首輪よ。聖女を拘束し我らに従わせよ!』


 そういって怪しげな首輪型の魔道具を投げてきました。フラグの回収が早すぎじゃないでしょうか?


「貴様のスキルはすでに判明している。効果が発動中の魔道具は収納できないしこの魔道具は対結界仕様が組み込まれている。そして魔法での対処はもう間に合わん。我らの勝利だ!」


 長々と説明セリフをありがとうございます。よくあの短時間に説明しきったものです。それはともかく確かに四方からの魔道具の攻撃を防ぐすべはありません。


 ありませんが・・・・


 ブンブンブンゴトッ。


 あっ地面に落ちましたね。収納しておきましょう。


「なっ何故だ。なぜ魔道具が発動しない?」


「これは基本的なことなのですが、対象指定型の魔法や魔道具って相手の名前を言わないと発動しないんですよ。」


「まっまさか?」


「聖女って職業名であって私の名前じゃないですからね。発動するわけがありませんよ。」


 異世界で自分の名前を教えないなんて今日日中学生でも知っている知識ですよ。いくらずぼらな作者が聖女としか呼ばないといったってきちんと名前は別にあるんです。


「では私と敵対したということで丸っと収納!頭は河童!」


 子分ともども頭のてっぺんがつるつるでレドームみたいになってますね。やっぱりレーダーを配置するにこうでないと。


「くそっ!とんだ大恥をかいたぞ。お前はこれで満足か?」


 悔しそうな顔をしているマッパカッパですが、これで満足するわけも済ませるつもりもありません。それにしても最初から最後までパッとしない男でした。量産型王子ならせめてカボチャパンツくらいはいて来いよ。


「嫌ですね。これで済むわけがないじゃないですか。聖女として世界から狙われている以上手を出したら痛い目に合うということを周知しないといけないわけですよ。『触れ得ざる者』として認知されるまでは、手を出したものに相応のペナルティが必要です。」


 触れ得ざる者・・・・異能生存体みたいでかっこいい。


「なっ何をするつもりだ。」


「いえね。港町についたら食糧庫の中身でもごっそりもらおうかと思いまして。あっ穀物とかはそれほど量はいらないですよ。調味料とか香辛料とかを貰おうかと。ここは貿易港だそうじゃないですか。珍しいものがたくさんあるとうれしいですね。」


 そういってにっこり笑いかけると雑魚マリナーは真っ青になって


「貴様は香辛料の価値を知らんのか!同じ量の金とは言わないまでもその半値くらいはするのだぞ。どれだけ持って行くつもりだ?」


「え?もちろん蔵?倉庫?ごと全部?」


 調味料の研究には大量に必要だからね。趣味と実益をかねてごっそり頂こう。ケチャップ、マヨ、ソースあたりは必須。あとカレー。もっとマイナーな料理でも香辛料はあって困るものではない。そう思っているとどうやらマリナーさんは気絶したらしい。


 いやー今回も儲かった。港町まで距離はあるけど、丸ごともらい受ける大義名分ができた。


 彼らとしては契約済みの物資が搬入できなくなる違約金のほうが痛そうだけどね。


 しかしこれで夢の調味料生活にも近づいた。


 今後は河童に足を向けて寝られませんな。


 今回の収入

 香辛料各種:時価30億イエーン

 その他果実、野菜等:時価2億イエーン

 他食料品;時価5000万イエーン


マリーンタイプ→マリーンハイ→マリナー

わかりにくい進化ですよね

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 確かに昔は香辛料が貴重だったみたいだけど、総額とは言え、王冠の1,5倍もするのか。
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