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コインホルダー 〜異世界で生きるガチなヤツ〜  作者: ノープラン
第一章 プロローグ
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第5話 希望と絶望 地下室の存在


 またあれから半年位だろう。


 月日が流れた。


 変わりなく母親は優しく、アリシアは愛おしく、姉はクールだ。




 戦争。

 知らなかった。

 ほとんど外に出ておらず、家の中での生活がほとんどだった事もあるだろう。

 親が戦争に参加してるなど夢にも思わなかった。


 彼女らは強かだ。


 自分の大事な人が無事で帰ってくる保証は無いだろうに、何年も帰りを待っている。

 優しさや笑顔や無表情の裏に、そんな現実が隠れていようとは。


 推測するに、僕が産まれたから母親は戦争に行かなくていいとかあるのかもしれないな。

 小さい子供が居る家庭は子育てを優先するとか。

 そういう国の方針とかかもしれない。

 争いとなれば死者も出るだろうしな。

 次の世代、子供を育てるのが彼女らの戦争という事だろう。


 アリシアの母親が戦争に赴いているのが特殊な可能性も高いが、何にせよ無慈悲なものだ。


 しかしまだ何処か他人事のような感じだ。

 実感が湧かない。

 母親はこの町が戦場になることは無いと言っていた。

 流石に3歳になったばかりの子供に詳しい説明はしてこなかったが、田舎だからとか、対戦国との通路では無いとか。

 何かそういった理由があるのだろう。


 姉の話も気になる。

 母親と何処に出掛けていたかだ。

 一晩アリシアと共にしたあの日、母親達が父親とアリシアの両親を見送りに行っていたのは分かる。

 でもその後もアリシアと僕はよく留守番している。

 アリシアとラブラブ出来ていたから特に疑問に思わず、もっと外に行ってくれと思っていたから深くは考えていなかったが・・・。


 今までの情報から推理すると。

 姉はおそらく剣術を習っている。

 剣道かもしれないが、より実戦的なヤツ。

 剣術といった方がしっくりくるヤツな気がする。

 鳥を仕留めてきたのもその流れだと思うし、父親の様にと姉が言っていたことから、父親も剣術が出来るものと思われる


 家の何処かで木で出来た剣を見た事がある。

 横目でチラッと見ただけだけど、使い古してボロボロになってた感じのヤツだった。

 そう考えると木刀や竹刀じゃなかった事から剣道の可能性は薄いよなという推理だ。

 戦争をやっているのもあって、護身術が必修だとか、義務教育的なものになっているとか。

 それか母親が教育熱心で通わせているなんてのもあるかもしれない。

 可能性としてはそんなとこだろうか。

 それがこの国か街かの常識なのだろう。

 まぁそのうち僕にも話が来るだろうな。


 剣術、剣道か・・・。

 興味無いなぁ。

 人とか殺したく無いし。

 生前の子供の頃、戦争してみたいとか思っていた時期もある。

 が、現実を見ればとてもじゃないがやるものではない。


 しかしココは何処だ。

 俺の知ってる地球ではない。

 生活レベルもそうだし、色々と僕の常識から外れ過ぎている。

 違う星なのだと思っとこう。


 だがここが地球で、どこかで僕の子供たちが生きているという可能性を捨てたくない。

 でもさ、護身術で剣術習うか?

 いや、剣道の盛んな地域とかならまだ可能性はあるのか。

 親が強いなら、子にも習わせたいと思うだろうし。

 有名スポーツ選手は3歳からラケットを握っていたとかよくある話だ。


 色々と考えてはみるが、知ってる情報では推測の域を出ない。

 足腰もしっかりして走れる様にもなった。

 僕が危険に対して敏感で、目を離していても大丈夫だという印象は付けれていると思う。

 家の中に限っての話だが。

 一応準備はしてきた。

 そろそろ外に出て、散策出来るよう交渉してみよう。



 「お母さん、外に遊びに行っていい?」



 外から野菜を収穫してきたであろう母に、僕は子供っぽく、なおかつ少し成長してますよ〜的なニュアンスを漂わせながら聞いてみる。

 言葉もあれから随分上達した。

 自己判断として、僕は少し物覚えのいい子供って印象だろう。

 多分だけど記憶があるまま赤子に転生したとは思われていないだろう。


 多分だが。


 姉が僕くらいだった頃よりも流暢だとは思うが、上の兄弟の居る子供は成長が早いものだ。

 不自然ではない。



 「そうね。外ねぇ。でも、今からお母さんご飯作らないといけないから、また今度ね」



 むう。

 一緒じゃなくてもいいんだけどな。

 んー。

 しかしそんなの無理に決まってるといった雰囲気だ。

 厳しいな。

 どう言えばいい。

 色々と抗議していたらボロが出そうだ。


 僕は嘘をつくのが苦手だ。

 なるべく言葉数は少ない方がいい。



 「はーい」



 結果的に今回は諦める事にした。


 僕が外に出たがっているという印象は付けれた。

 第一段階はクリアって事にしとこう。

 どうしても外に行きたいと、駄々をこねればあるいは外に出れるかもしれないが、それは長期的に見て違う気がする。

 母の信頼を得なけれならないと思うからだ。

 確かに今日は外に出る事ができるかもしれない。

 が、外に出る度に母と一緒だったり駄々をこねなければならないとなると、情報収集もままならない。

 本末転倒だ。


 実際はゴリ押しで外に出してもらって、あぁ大丈夫そうだなと分かってもらえる方が早いのかもしれないけどね。

 本来子供はそうあるべきなのかもしれないし。

 でも僕は、それ程子供になりきれる自信がない。

 今回はこれでいいだろう。


 思えばほとんど外出した事がない。

 野菜とかも庭でとれているみたいだし、その他の買い出しも母とアリシアが交代でやっている。

 たまに姉が一緒に出掛けてはいるが、姉もまだお荷物なのだろう。

 僕まで連れて行く余裕は無さそうだ。


 アリシアは今は居いない。

 いつもの感じだと夕方に帰ってくるのかな?

 というのも実はアリシアは僕の誕生日の後から4人で一緒に暮らしている。


 僕や姉の面倒も見てくれるし、家事の手伝いもしてもらってとても助かるからと母は言っていた。

 だが形としてはアリシアを母親が預かっているという形になるのだろう。

 もっと早くそうしておけばよかったのにと思う。


 あぁ女神様。

 女神様は日中は学校にでも行っているのだろうか。

 ちなみに姉も居ない。

 例の剣術を習いに行っているのか?

 とにかく何かしているのだろう。

 一人で出歩くにはまだしばらく無理そうだ。


 まずは買い物について行ったりとかして母の信用を勝ち得なければなるまい。

 いずれ外出許可は出るはずだ。


 さて。

 それはいいとして。

 今から何をしよう。

 暇だ。 


 そうだ。


 木剣をどっかで見たんだったな。

 家の中を探してみよう。

 何処にあったっけな。

 剣術や戦争に興味はが無いとはいえ、剣や刀は男のロマンだ。

 嫌いでは無い。

 生前、小学校までの通学路で菜の花を木の枝で切りまくってたのを覚えている。

 ついでに脳内で車を破壊しまくったり、手から必殺技を出したりしたものだ。


 懐かしい。


 ともあれ剣だ。

 あれがあればしばらく遊べるだろう。



 「どっかで見たんだよな」



 この家はそこまで広くはない。

 ニ階が一部屋と、一階は二部屋とキッチンとリビング。

 3LDKってやつか?

 まぁそんなに広くはないな。

 だから探せばすぐ見つかるだろう。

 二階では無いと思うし。


 あった。

 玄関先の脇に傘やら木材やらの影に立てかけてあった。

 木剣はボロボロで先端は折れているが、よく見たらいいものだと分かる。

 折れていなければ木剣の長さは僕の身長よりも少し長いだろう。


 むしろ先端が少し折れているから僕でも使えるんじゃなかろうか。



 「んしょっと」



 やはり少し重かった。

 片手ではまず無理。

 両手で握っても、木剣の折れた先端が少し上がるだけでとても振り回せる気配は無い。

 しかしやっぱり僕も男の子か。

 テンションが上がる。


 けど自由に振り回そうと思ったらまだまだかかりそうだ。

 姉は3個か4個上だけど、この位は振り回せるのだろうか?

 いや、この木剣は大人用だ。

 折れているとはいえさすがに厳しいだろう。



 「ちょっと厳しいか」



 僕は小さい体を目一杯使って木剣をまたあった場所に戻した。

 筋トレでもしたら振り回せるようになるのだろうか?でも成長期に筋肉をつけ過ぎたらあまり良く無いとかも聞いたことあるしなぁ。


 さて。

 また暇になった。

 この体ではやれることは少ない。

 何か俺のハートをビートして燃やしてくれるのもはないのか。

 しかし娯楽があまりにもない。

 おもちゃも無いし。

 戦争中だからか。

 戦時中はこんなもんなのだろうか。

 身内が戦争で殺し合いしてるかも知れない時に、残された人は笑っちゃいけないみたいな気さえもしてくる。



 「難儀よのう。・・・ん?」



 何か無いかと周りを少し見渡したらある事に気が付いた。

 荷物が大量に置かれて通路が塞がれている。

 自分の視界からは壁しか見えないが、壁はある程度奥まで続いている。



 「何だ?」



 玄関先のすぐ左に農機具やら何かわからない箱やら、不自然にバリケードの様に物が置かれているのだが・・・。

 あぁ、僕が間違って入らない様にしてあるのか。

 入るなと言われれば入りたくなるのが人の性。

 ちょっと最近は母親に怒られたみたい願望も目覚めてきたからな。

 危ないことをして怒られるのも悪くない。

 お尻をベシベシ叩かれちゃったりしてな。


 Ⅿではない。

 Ⅿではないが、あんな美人な母親に叩かれたくないヤツなんて居るのか?

 アリシアは叩いてくれないだろう。

 姉に叩かれても嬉しくないしな。

 ん?

 俺はマザコンなのか?

 まぁいい。

 あの先に危険な物があるかも分からんが、一応大人だ。

 何が危ないか危なくないかは判断出来るだろう。



 15分程だろう。



 だいぶ時間がかかった。

 道が開けたのだ。

 母親はまだ夕食の支度で忙しいだろう。

 ガスも電気も冷蔵庫も無いからな。

 料理やら水汲みやら、何をするにも時間がかかるのだ。


 ゴゴゴゴ・・・と、とある漫画家なら表現するだろう。

 まさにそんな感じだ。

 必死こいて開拓した通路を邁進している。



 「なーにがあるんだぁ?」



 少し進んだら突き当たり、右に曲がって進める様になっていた。

 右というより、右下か。

 地下への階段があった。



 「おおお!!」



 ラスボスか、それともハナダのどうくつか。

 まだレベルのたりたない僕は行ってはいけない気がする。

 だいたいこういうのはしっぺ返しを食らって成長してから再度チャレンジするものだ。


 だがしかし。

 俺は大人だ。

 いける。

 はず。

 その前に下りの階段。


 階段と言えば。

 この家には二階への部屋の階段があるが、今二階はアリシアの部屋となっていて私物が置かれている。

 つまり大人の階段(物理)ってことだ。

 僕はそれを登ったり降りたりしてトレーニングを欠かさない。

 トレーニングのついでに部屋の匂いを嗅ぎ、秘宝(下着)を探すべく探検する。

 もちろん宝は発掘し、場所も特定しているが、持ち去ったりはしない。

 それは僕の部屋(隠し場所)が出来てからだ。

 やたら難しそうな本もよく見る。

 文字がさっぱり読めないが。

 彼女は影なる努力家なのだと思う。


 僕はアリシアのおかげですんなり1番下の段まで来る事ができた。

 愛のなせる技だ。


 ドアノブに手を伸ばす。


 伸ばす。


 伸ばす。


 ・・・際どい。

 ギリギリ届きはするものの、回しは出来ない。


 ・・・。


 さぁどうする。

 壁(物理)にぶつかってしまった。

 人生において壁(精神)にぶつかることはよくある事だ。

 その壁を乗り越えて人は成長する物だ。

 出来ないと思うから出来ないのであって、人間不可能は無いのだ。

 厳密に言えば不可能を証明する事が困難である。

 と言った方が正しいか。

 まぁいい。

 細かいことは置いといて、この扉を開けることが僕に出来るかどうか。


 可能か、不可能か。


 やるべきかやらざるべきかだ。


 まず不可能では無いだろう。

 ドアノブを回すだけだ。

 心の扉を開けるより簡単なハズだ。


 次にやるべきかやらざるべきか。

 これはまぁ、やらないでいい事だろう。

 でも将来的に知っておくべき事だと思う。

 ただのシアタールームなのか、核シェルターなのか、はたまた巨人を産み出す為の研究施設なのかもしれないし。

 さすがにミューツーやラスボスは居ないだろう。

 まぁ冗談は置いといて、普通に気になる。


 さて、どうしたものか。

 足場に出来そうなものを探すか。

 さっきバリケードに使ってあった物に使えそうな物があるかも知れない。


 さっき降りてきた階段をまた登る。

 十段くらいの少ない階段だが、石を削り出したような階段な為、転げ落ちたら痛いだろう。

 けどこの体は軽いからな。

 頭から落ちなければ衝撃はさほど問題無いと思う。

 地下室気になるし、それどころではない。


 ドアを開けるのに役立つアイテムはないものか。

 バリケードには荷物の入っているであろう箱や、農機具、陶器の壺や、水の入ったバケツ等もある。

 全部微妙だ。

 それぞれ持っていけば全部使える。

 がそれぞれまた問題がある。

 農機具は土を耕したりするヤツだろう。

 がしかし先端が鉄製だ。

 重い。


 これを階段下まで持っていくのには危険が伴う。

 それに持っていっても足場に使えるか際どいところだ。


 次に陶器の壺。

 割れるだろこれ。

 安物だとは思うが、パリンとやらかしたら尻を叩いてくれるかもしれない。

 今日は違う気分だ。

 次の機会にしよう。


 次にバケツ。

 水が入ってなければ完璧なのだが。

 水を捨てる場所を知らないし、知ってたとしても水の入ったバケツをそこまで運べる自信が無い。

 大きめの箱は荷物が入っていて重くて無理だ。


 他にも色々あるが、どれも小さくてちと使えない。

 まぁ、無理っぽいな。

 仕方がない。

 アリシア姫との愛の巣で妄想でもしとくか。


 ん?

 諦めたその瞬間、先端の折れた木剣が目に入ってきた。



 「コレだ」



 かつて忍者は壁をよじ登る為に忍者刀を壁に立てかけて登ったという。

 それを応用するのだ。

 刀と違ってつばの部分に足をかけにくいが、僕の小さな足と軽い体なら支えられるだろう。

 ただ、少し痛そうだ。


 そうだな。

 確か何処かに・・・あった。

 この雑巾を巻けば足をかけやすくなるだろう。



 「よし」



 木剣は重心を持てば片手でも持てる。

 僕は難なく階段の1番下まで木剣と雑巾を持って来れた。

 黙々と木剣に雑巾を巻き付け、折れた剣先を上にし壁と床と扉の枠にしっくりくるよう斜めに立て掛けた。


 思いの外安定感はある。



 「いける」



 1回目は体重を全部かけずに様子見。

 悪くない。


 2回目は体重を預けても大丈夫かの確認。

 ・・・いける。

 少し足がプルプルするが、思ったよりこの体はバランスがいい。

 そして3回目。


 一旦体重を預けて安定させたのち、両手で掴んでいた剣先から片手を離し、ドアノブに手を伸ばす。


 「よし!!」と、心の中で叫んだ。

 ガチャ・・・ガチャガチャガチャ



 絶望。

 絶望というのは希望があるから存在する。

 光と闇のような物だ。

 希望にを見出し、希望の光を求めて邁進し、努力した先で希望の光を奪われる。

 それが絶望だ。


 希望と絶望はセットなのだと思う。

 そして希望の光が大きければ大きい程、失われた時の失望感で絶望のドン底に叩き落とされるのだ。


 生前にもそういう事は多かった。

 だからなるべくプランAとプランBは用意して事に挑んだものだ。

 今回はそれを失念していた。

 一旦諦めたからこそ希望の光を見つけた時に冷静さを欠いていたのだと思う。


 つまりだ。

 何があったのかというと、鍵がかかっていたのだ。


 想定していなかったわけではない。

 ただ、バリケートで使えるものが無いと一旦諦めた事によってその想定が脳内でリセットされてしまったのだと今になって思う。


 何回かまた試してみた。


 うん。

 筋力が足りてないのとは関係無いな。

 慣れてきて両手でドアノブ掴んでも大丈夫にはなった。

 が、やはり両手で回しても回る気配が無い。

 鍵がかかってるのは明らかだ。

 とは言えまぁ、そこまで期待していたわけでも無い。

 いい暇つぶしになった。


 その程度だ。



 もういいや。

 母親に聞いちゃおう。

 見ーたーなー?

 とか言っていきなり包丁振り回されたりはしないだろう。


 木剣を地下から一階に持っていくのはスムーズにいけた。

 階段の昇り降りも免許皆伝レベルだろう。

 一個一個熟練度を上げるのは正直大変だ。

 人生最初からやり直したいって思うやつに教えてやりたいものだ。

 めんどいぞと。



 えっと、何するんだっけ。

 あぁ母にあの部屋のことを聞くんだったな。


 本当は「お母さん。あの玄関の脇の奥の下にある地下室は何の部屋?」と、聞きたいところだが、それは言葉的に姉が使っても不自然だろう。


 慎重になりすぎか?

 子供がいきなり難しい文法使っても大丈夫だろうか?

 僕は母に話しかける言葉を選びながらバリケードをある程度元に戻し、母の居るであろう台所へ向かった。


 居た。

 母親だから今まで何も思わなかったが、よく見るといいお尻をしている。


 このアングルも最高だ。

 アリシアが横に立っていればそっちしか見ていないだろう。


 ミニスカートとかだったら逆に見れないからやめてほしい。




 母のSiriは僕と姉を産んだ分、アリシアのSiriより一回りは大きい。

 子孫を残したいという本能からか、しっかりした子供を産めそうな体に魅力を感じるのだろう。

 世間的には母の尻がいいケツだと思われる。


 母の歳はおそらく三十前後。

 母親だから何も感じないが、父親はどんな羨ましいヤツだろう。


 まぁ生前の僕の妻も負けてないけどね。

 今でも愛しているさ。

 けどまぁ一回死んだからな。

 心を入れ替えねば・・・。


 そう言えば・・・。


 今頃・・・。



 感情が爆破してしまう為、あまり考えないようにしていた生前の家族の記憶。

 僕が死んだのはどうでもいいが、残された家族を想うと涙が出てくるのだ。

 今も油断してふと思ってしまった。

 涙がうっすら出てきてしまう。



 「あぁ、違う違う。尻の・・・、あ、いや、地下室だ」



 気持ちを切り替えた。

 半泣きの状態で母に聞くのも変だろう。


 少し落ち着いて、涙を拭い、聞いてみた。



 「お母さん!がーって行ったら下に部屋があった!!アレ何?」



 「ん?何の事?」



 まぁ分からんか。


 ジェスチャーを交え簡単な単語で伝えれるようモジモジしていると、しばらくして分かってもらえたようだ。



 「あぁ・・・あら、行けないようにしてたけどね。大丈夫?落ちなかった?」



 大丈夫よ。



 「階段は大丈夫だよ。お姉ちゃんと練習してるし!」



 「あぁ、そう言えばそうね。あそこは・・・」



 母親が何か考えている。


 おそらく僕にでもわかる単語を引き出しているのだろう。



 「お父さんの仕事場よ!えーっと、鍛冶場って言うんだけど・・・、なんて言えば伝わるかな。武器を・・・」



 おおおお。

 鍛冶場。

 鍛治職か。

 大工さんと並んで男がやってみたい職業トップ2(テキトー調べ)じゃないか。

 やたらデカい希望の光が差してきた。

 かっけーな。

 俺もなるのか?

 鍛冶屋に。

 けどまぁ、希望と絶望はセットだ。

 あまり期待しないようにしとこう。



 そのあと母親は色々と説明しようとしてくれた。

 母親は僕の疑問には答えるの毎回嫌がらず、必ず真剣に向き合ってくれる。

 なかなか簡単に出来ることではない。



 「見たい見たい!!」



 こっちの方が手っ取り早いぜと言わんばかりに救いの手を差し伸べた。

 見せりゃ簡単だろと。



 「ダメよ。お母さんでも入ったら危ないって怒られるんだから。お父さんが帰ってきてからね」



 あぁ。


 また絶望だ。

 父親の記憶がない僕には父親が恐怖の対象でしかない。

 いきなりぶん殴ってきたりせんだろうか。

 それに冷静になれば、鍛冶屋に本気でなりたいかと言われれば微妙なものだ。

 父親か。


 いざとなれば僕が母親とアリシアを守らねば。

 ついでに姉も。

 これは義務だ。

 年齢だとか、出来る出来ないは関係ない。

 家族は守らなければならないと思っている。


 次の世代に命を受け継がせるのもそう。

 僕は全ての義務を果たし、あとは死ぬだけって状況を作り、あとはひたすら楽して余生を楽しむのだ。

 それが生前からの僕のスタイル。

 生前といえば僕も鉄関係の仕事やってたからな。


 前世の知識を活かせれば実際悪くないかもね、鍛冶屋。

 まぁ大した知識ないけど。


 とりあえず父親をもう少し知っとかねば。

 どんな人なのだろう。

 楽しみよりも不安の方がやたら大きい。

 心配だ。



 希望の光をあえて打ち消す。

 僕の父親はきっと暴力三昧で嫌な奴に違いない。

 なんて悪いヤツだ。


 僕は絶望を味合わないでいいように、そんな事を思っていた。

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