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コインホルダー 〜異世界で生きるガチなヤツ〜  作者: ノープラン
第一章 プロローグ
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第42話 ルカクの希望と あの夜の余韻


 「おうセレン、元気してたか?」



 「そういうアカミナは元気そうだね。」



 「そりゃそうさ。あんな魔人紛いのやつなんかに怯んでられるかよ。」



 アカミナが話しかけて来た。

 いつも10歳未満程の子供達が集められる養護施設のような場所での出来事だ。

 僕は一旦左手の刻印の事は忘れる事にした。

 コーガを受け入れはしたがまだ頭の整理が出来そうにもない。

 ニアに関しては特に問題は無いが・・・。


 問題と言えばだ。この子達だ。

 数日前だが城壁の外で遭遇した魔人の威圧で押された子供達がどうにかなってしまってないかと心配していたのだが、パッと見は大丈夫そうだ。



 「嘘だぜ。アカミナさ、ミエルのこと心配しまくりだしよ。寝てる時もたまに叫びながら起きるんだぜ?」



 「なっ!!お前また・・・。お前だって夜ションベン行く時怖いって言ってただろ!」



 「何さ、誘ってもアンタも怖くて一緒に来てくれないじゃないか。」



 「・・・うん。多少は元気そうで何よりだよ。・・・でミエルは?」



 「・・・あ、はい。ここです・・・。」



 ミエルはアカミナの影に隠れていて見えなかった。



 「・・・まぁ、大丈夫なのかな?」



 「ちょっと・・・誰かに捕まってないと歩けないんだけどね。」



 「あら、じゃぁ僕に捕まる?・・・まぁ身長足りないけどね。・・・で、その立てない原因とかは分かってるの?」



 「それが分からねぇんだ。保護された先で介護班のにいちゃんからは腰を抜かしただけだろうって事らしいんだけどよ。ミエルが腰を抜かしたのもあるけど、多分そうじゃないって言うんだ。まぁ、リハビリがてら連れて来たんだよ。」



 「・・・何だろね。そのうち治る感じはするの?」



 「んー、でも心配なら同じ一緒に居た子の方が大変みたいだよ?」



 「・・・ん?え!?そうなの?パンネルが!?」



 「そうそう。パンネルちゃん。目をさましたのはいいんだけど。」



 「え・・・マジか。・・・さて、どうすっかな・・・。ミリダンは近くに居るんでしょ?何か言ってた?」



 「あの助けに来てくれたおじさんでしょ?一緒に遊んでくれてありがとうっては言ってたけど・・・。」



 「ミリダンらしいねぇ・・・。」



 パンネルを危険に晒したのは僕の責任でもある。ミリダンとは良い関係を保っときたい。

 ミリダンに任せておけばいいのは重々承知だが・・・、やれる事はやるべきだろう。



 「一緒にお見舞い行かない?いけるかな?」



 「同じ施設内だわな、近いぞ?」



 「一緒に行こうぜ。」



 「あ・・・あの、セレン君に抱きついていいですかぁ?」



 「何いきなり意味の分からない事を。ほら、俺が連れて行ってやるからよ。」



 「だってほら、捕まっていいって言ったから・・・。」



 「・・・あぁ・・・。」



 「セレン君、また後でねぇ〜へへっ。」



 心配して損した。元気そうだな。

 パンネルもそれだといいんだけど。



 それからパンネルの病室で寝ていたのだが、結果的に言うとパンネルは大丈夫そうだった。

 だが、どうやらミエルと同じ様な症状の様で、やはり介護班、医療班に見せたのだが様子を見ましょうの返事しか聞けなかったそうだ。

 個人的にはパンネルがミリダンを怖がっていたのが気になる。パンネルとはまた後で話をせねばなるまい。



 終演祭の前夜祭が明日に迫っていた。

 メインイベントである決闘トーナメントは6日後らしい。どうやら各国周辺からも参加者が集まるそうだ。


 ミリダンとも話したのだが、僕ら子供達が遭遇した魔族は大人達には信じてもらえなかった。

 オオカミ少年の原理だろう。勇者ごっこをしていた子供達もよく見る。魔人が来たぞ!と言うのは日常で耳にする言葉だ。話を聞くと、門兵を騙してケラケラ笑って遊んでいた子供達が過去に居たんだとか。


 まぁ伝えたんだし、そこまで責任を負う必要も無いだろうという話だ。報奨金とかはアカミナとキエラは本気でガッカリしていたが、諦めるしか無いだろう。



 ーーーー



 第二訓練場からの帰路の脇、砂漠地帯にて



 「ハァハァハァ。」



 「ハァハァ、どうしたサドゥ、もうへばったのか?」



 「ハァハァハァ、ルカク様・・・、私召喚士でありますからして、体力的な訓練はしておりませぬ。それに・・・。」



 「あぁ、言い訳はいい。馬も半日もせずに維持できぬでは無いか。」



 「・・・しかしルカク様。本当にその様な花畑があるとお考えですか?」



 「彼女があると言ったのだ。あるに決まっておるであろう。」



 「しかルカク様・・・。」



 「くどいぞサドゥ。あると言ったらあるのだ。俺は全てを統べる王になる男だぞ。お前は無いと言ったな。ならば問おう。お前に、この指差す彼方に花がないとお前は証明出来るか。」



 「それは確かにいずれはあると思いますが・・・。」



 「ならばそのいずれを探し当てるまでだ。」



 「いや流石にそれは・・・。」



 「くどいぞサドゥ!!・・・俺は王になる男だ。国民に無茶をさせる時もあるだろう。国民に自分が出来ない事をさせる事もあるだろう。国民を死地に向かわせる時もあるだろう。俺は王になる前に、国民としての痛みを全て知る事こそが真の王たる道と見定めたのだ。その道を彼女がいざなったのだ。分かるかサドゥ。俺は王になる男だ。・・・ここで死ぬのならその程度の男だったという事だろう。」



 「ル・・・ルカク様・・・。」



「・・・、サドゥ。かろうじてさっきの大木が見える。アレを目印にすれば、今なら迷わず帰れるだろう。」



 「・・・。」



 「ゆけ。元よりここでお前を返す予定だった。2日分の食料と水を持て。後は俺1人でやる。これは俺の試練だ。すまないな。彼女に格好のいい所を見せたくてお前を使った。許せ。」



 「・・・トーナメント開始までに戻らなければ捜索隊を出しますか?」



 「・・・聞いていなかったのか。そのままにしておけ。余計な事はするな。」



 「いえ、お断り致します。貴方にはこの国を導いて貰わなければなりません。処罰なら帰ってからでも私目の首をおはね下さい。食事も不用です。水を少々頂ければ。」



 「フッ。死にたいのなら止めはしない。好きなだけ食料と水を持って早く行け。お前と喋るだけで喉が乾く。」



 「・・・ご武運を。」



 サドゥは荷物を全て置き、木の目印目掛けて歩き出した。



 「おい。水は要らぬのか。」



 「私よりも自分の事をお考え下さい!!」



 「やれやれ。」



 ルカクはサドゥの持っていた荷物を持ち、サドゥとは反対の方向に歩き出した。



 ーーーー



 辺り一帯岩山と乾燥した地面だらけで、夜になると冷たい風が吹く。

 夜は月が二つ出ていて明るい。暑い昼間よりも快適だとして少し歩くが、ある程度の睡眠を取らなければ昼間倒れてしまう。昼間は暑くて寝れないとして、夜は休む事を優先させる。

 そんな感じで3日歩いた。が、一向に景色が変わる気配が無い。



 「私の水魔法は水の無い所では使えん。使えたとしても体力を奪われる方が問題だ。移動魔法も同じだ。・・・ふっ、まだまだ鍛えねばならない所が多そうだ。水魔法、移動術式。それらを無意識で永遠に詠唱出来る実力が欲しいな。・・・ふっ・・・魔族でもあるまいし・・・。」



 水と食料はとっくに半分以上を消費し、残りの水も全て飲み切ってしまいたいという欲求が込み上げる葛藤の連続だった。

 ルカクは王である前に、1人の男として前に進まなければならないと、何かを証明しなければならないと、ただただ前を向いて歩いた。


 ルカクは歩くことによって自分が許されるような気がした。ルカクは分かっていた。自分がおかしくなっているという事が。おかしくなっているなりに、本能で導き出した答えが今のこれなのだ。

 おそらく間違っている。失敗に終わる。それも分かっている。だがその先に何か答えのような物がある気がしたのだ。

 それこそ100万本の花畑とは言わないが、一輪のつぼみのような答えが彼女の指差す先にある気がしたのだ。


 それか、ただ死にたかっただけかもしれないが。



 世の中結果が全てだ。力こそ全てだ。幼少の頃から叩き込まれた。今こそその力を見せる時。

 何がどうあれ結果を変えれれば全てが丸く収まるのだ。



 手頃な木の棒を杖にして、動かない足を腕で補助した。

 ルカクは薄々分かっているが弱音を吐かなかった。この体力、この食料、この水。今から帰ってもハロルには辿り着けないと。

 そして景色は一向に変わらない。当然帰る為の目印も見失った。



 「僕はここで死ぬのか。・・・彼女の為に死なぬのなら幸せかもしれんな。」



 ルカクは弱音を吐いたつもりは無かった。彼女の事を思ってただ幸せ感じたのだ。正しい事だとは思わないが。



 ーーーー



 更に2日が過ぎた。食料もあと2日分。水はもう無く、ただただ前に進んだ。

 あれからどれだけ歩いたのだろう。けどやはり景色は変わらなかった。

 変わったと言えば一つの大岩が見えた。

 そこに何があるかは分からないが、ルカクはそこを目標に定めた。


 一歩一歩踏みしめながらルカクは歩いた。

 その姿は王のそれではなかった。みすぼらしく、弱々しく、腰の曲がったお爺さんのようだ。

 だが何故か、その踏みしめる姿こそが王なのではないかとルカクは模索した。



 「よ・・・よし。近づけば・・・、こんな・・・大きかった・・・とは・・・ハァハァ。」



 ルカクはとうとう大岩に辿り着いた。



 「ん?」



 ルカクは何かに遭遇した。大岩の影に大きな黒い塊・・・いや、人か?倒れているように見える。



 「・・・お・・・おぃ・・!!大丈夫・・・か!!」



 渾身の力で揺さぶったがびくともしない。

 周りをぐるりと回ってみると・・・どうやら魔族のようだ。

 ・・・とても弱っている。



 「・・・はっ。僕の・・・答えは・・・魔族・・・か。」



 ルカクはそこで倒れた。

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