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コインホルダー 〜異世界で生きるガチなヤツ〜  作者: ノープラン
第一章 プロローグ
39/44

第39話 コインホルダー


 夕暮れも深まる中、セレンは秘密基地があるからとそこに案内した。



 「ここでいいだろう。ある程度当たりを見渡せた方がいい。」



 秘密基地に到着する前にコーガが言った。



 「コーガ、貴方もう体は大丈夫そうね。何か違和感とかは無い?」



 「そうだな・・・、六式門を開くにはまだ早いって所だ。何、お前が手当してくれたんだ。大丈夫だろ?」



 「・・・何かあったらすぐに言いなさいよ。」



 「あぁ、ありがとな。」



 「・・・。」



 アリシアとコーガの会話は続かなかった。

 皆が皆、心に秘めている物はあるが、それを切り出すタイミングを計っているのだ。



 「ピェー。」



 自分でエサを捕りに行けと命じられたノロマの影が上空を通過した。

 彼・・・彼女?は何を思っているのだろうか。エサを探しに行けてワクワクしているのだろうか。それともエサが見つからない事を心配しているのだろうか。

 セレンがそんな事をふと考えた時、コーガが口を開いた。



 「お前、爺さんからコイン貰っただろう。」



 「ん、あるよ?」



 僕は躊躇いもせずクビに掛けてあるコインを服の下から取り出しコーガに見せた。



 「く・・・本当だったんだな・・・。ち・・・ちょっと見せてもらっていいか?」



 コーガは跪きコインを手に取った。



 「あぁ本物っぽいな。ちょっと外してもいいか?」



 「いい・・・よ?」



 コーガは慣れない手つきで僕の首飾りであるコインを外し、ミスリルのチェーンの先を摘んでぶら下げた。



 「ジジイがな、コイツの事に関して俺に言うんだよ。このコインはワシに懐いておるからのぉってな。離せば離す程コイツは持ち主と引き合うんだとよ。・・・ってな。ちょっと離れるぞ。」



 「・・・。」



 コーガの手に持ったチェーン付きのコインは、コーガがセレンから離れると地球の重力とは関係が無いと言わんばかりにセレンの方に傾いた。

 セレンを中心にコーガはグルリと一周した。



 「この引き合っているのがこのコインの所持者である証拠らしい。」



 「それはそうでしょう。セレン君が持ってるんだから。引き合っているのは何でか分からないけど。」



 アリシアは何の話なのかと言わんばかりだ。

 頭にハテナが浮かんでいるアリシアに対して、ニアはうつむきことの行く末を見守っている。

 セレンはと言うといつも通りだ。



 「違うんだアリシア。このコインは普通のコインじゃない。このコインの所持者はコインホルダーと呼ばれ、うちの爺さんが長い間所持していた。」



 「コインホルダー・・・。」



 「ニア、何が知ってるの?」



 「いえ、何も・・・。コーガ、そのコインを持っていたらどうなるの?何か悪い事でもあるの?」



 「・・・今まで俺も知らされてなかったんだが、ノロマが持ってきてくれた手紙の裏面に詳細が書かれていた。俺が一人前になれば教えてやるって言われてたんだがよ。特に興味も無かったんだが・・・。」



 「何?セレン君がどうなっちゃうの?」



 「コーガ、早く言いなさいよ!!」



 ニアは溜め込んでいた物が溢れ出たかのように声を荒げた。



 「ニア、安心しろ。・・・ほら、コレがその羊皮紙だ。」



 「・・・。・・・アリシアも。」



 「・・・セレン。落ち着いてんだな。」



 「ん?何かあるとは思っていたけど・・・。」



 「フッ、流石だな。」



 「・・・な・・・何これ・・・!?コ・・・コーガ、これどう事!?」



 「見ての通りだ。正直俺も目を疑った。その前にもう一枚俺に向けた手紙があるんだ。・・・セレン。あんたも聞いといてくて。」



 「分かった。」



 「ちょっと恥ずかしいけどよ。」



 「いいから早く!!」



 「んー・・・、途中は端折るぜ。親愛なる・・・修行は怠るな・・・と、ここからか。聞いといてくてよ。」



 「・・・。」



 「ワシは可能性を見出した。2000年・・・いや、2065年にもなるかの。何、数えてるうちに分からんく・・・いや、話を戻そう。・・・ちっ、あぁ・・・いや、大丈夫だ。続きを・・・。」



 「二千年!?カラエルさんが!?」



 「へー。凄いね。」



 アリシアはかなりのショックを受けているようだ。ニアはアリシアの事を心配している。

 セレンは眼球を上に向けボーッとしながら他人事のように返事をした。



 「ワシは極識眼を持ってその少年を見た。何も分からんかった。いや、何も分からない事で全て理解したのじゃ。コーガ、分かるか?お前なら分かるだろう。ワシは模索した。このコインを託すに至る少年なのかと。が、やはりワシには分からんかった。何せ何も見えなんだ。ワシはそれが気になり色々と手に付かなくなってしもうた。お陰で馬車の手配やら何やらを忘れてしもうたのじゃ。馬車に乗りたがった村の者と揉めておる所にその少年が現れたのじゃ。」



 「その少年がセレン君って事?」



 「だろうな。続けるぞ。・・・ワシはそこで確信を得た。その少年は通りすがっただけで事態を把握し、母親を通じて席を譲る方向へ誘導したのじゃ。ヤツはその場の誰もが想像しなかった結末へと導いたのだ。分からん、分からんのじゃ。ワシは震えたぞ。まぁ、後から考えれば簡単な話しだったんじゃがな・・・。」



 「・・・そんな事が・・・。セレン君、本当?」



 「その時貰ったー。コレ。」



 素っ気ないセレンの態度に、アリシアの顔には疑惑の顔が張り付いていた。

 コーガは意に介せず手紙を読み続けた。



 「気が付けばワシはそヤツ、セレン・アース・ロードにコインを譲渡しておった。何、やってしまえば呆気ない物じゃな。それが本当に良かった事なのかは分からんが、この歳でワクワクしておるのだ。後悔ある訳が無かろうて。」



 「セレン・・・。」



 セレンとニアは目線を合わせた。

 ニアはアリシアを宥めながらも挙動を抑えられてない。

 セレンはコーガの話をしっかり聞くように目線で誘導し促した。



 「コーガよ。頼みがある。その時は咄嗟で彼には何も伝えておらん。この手紙と、コインホンダーとはどういうものかを説明してやってくれんか。お前を後継者として育てておったが・・・許せ。だがお前も後継するのは嫌がっておっただろう。一石二鳥という物じゃろて?」



 「それで・・・、それでコーガはが来てくれたのね。」



 「・・・。」



 コーガは黙ってコクリと頷くと共に目を瞑りまた開いた。2枚目の羊皮紙をめくりセレンをチラリと見ると、また手紙を読み上げた。



 「・・・コーガよ。義務を果たせ。ワシからは何も言わん。お前の思う事をするのじゃ。わしの弟子、お前の極めし眼にはそヤツがどう映るのか。自分がどうするべきか、自分で決めるのじゃ。・・・この様な別れになってしまって悪いとは思うが、まぁお主もせいせいするじゃろう。あとはお前達の時代となる・・・いや、お前達の時代にするのじゃ。幸運を祈っておる。さらばだコーガ。お前は良い弟子だった。」



 「・・・。」



 アリシアやニアの目には相当に涙で潤んでいたが、それに介さずアリシアはコーガに迫った。



 「貴方達・・・、この子はまだ子供なのよ!?訳の分からないコインだか何だか知らないけどね。この呪いまがいの意味の分からない物を・・・、カラエルさんがそんな人だとは思わなかったわ!!この子は・・・この子は・・・。」



 アリシアは何もかもが分からなかった。心の整理など付くはずもなかった。現実を受け入れる事など出来るはずもなかった。ただ、ただ彼女は何も知らなかった自分を悔やんだ。



 「コーガ、話を聞かせて。」



 「あ・・・あぁ。」



 「ニア・・・。」



 「・・・分かった。」



 セレンは驚く程冷静だった。・・・いや、状況を理解出来ていないというのが普通の4歳児だろう。不自然ではない。

 取り乱すアリシアをニアに任せ、セレンはコーガの方に耳を傾けた。文字が読めないのだ。アリシア達が何を読んだのかを理解する必要があると踏んだのだろう。



 「まずはだな・・・、手紙の内容は大体理解出来たか?」



 「まぁ、大体は。」



 「そうか・・・、そのコインは別名コクホウコイン、国の宝って意味もあるし、国を崩すコインって意味もある。そしてそのコインを所持している者をコインホンダーと呼び、そのホルダーの寿命は永遠となる。」



 「・・・なる程。で?」



 「・・・、正直そのコインには謎が多い。世界に7枚か9枚か存在するらしいが、爺さん曰く4枚しか確認されていないらしい。俺にも良く分からねぇが、聖霊界や魔界の住人も所持しているらしい。」



 「魔界・・・聖霊界・・・。」



 「ジジイ・・・、カラエルはそのコインは簡単には譲渡出来ないと言っていた。それと同時に謎が多いとも言っていた。ジジイが受け取った時は、選別者を命じられたらしい。その対価としてコインが譲渡されホルダーになったらしいんだ。」



 「選別者?・・・そもそも誰から?」



 「・・・うん・・・。けどよ、その話はちょっと置いといていいか?」



 「いいけど。」



 「そのコインを譲渡するには・・・だが、そのコインを受け取った時の期待以上の期待を込めて命令する必要があるそうだ。正直俺も完全に理解してるわけじゃねぇが・・・。その事によってコインの契約を上書きして、コインを譲渡出来るらしい。受け取る側は命令、契約される対価としてコインを受け取る・・・。つまりコインを奪う事は出来ないって事だな。」



 「条件があるのね。」



 「そうだ。俺がジジイからコインを譲渡されなかったのもそこにある。つまり俺が未熟でジジイの期待値を上回れなかったって事だ。」



 「期待値ねぇ・・・。」



 「さっき文庫で調べて来たんだけどよ、30年前の戦争でもコインが使われたらしい。ホダタの国の王がホルダーだったらしいんだが、敵軍に攻め込まれて来た時、国の民を傷つけない事を条件に譲渡、言い方を変えれば傷つけないように敵の王に命令したんだそうだ。・・・シリルが居たんで頼んでみたんだが、祖父の形見って話をしたら快く探してくれたぜ・・・。禁書みたいだったがよ。アイツも危ない橋渡るよな。人には言えねぇが・・・。」



 「後で礼を言っとかないとね。そんな無茶な命令が通ってしまうんだね。このコイン。」



 「そうだ。ホダタの王はよっぽど想いが強かったんだろうな。譲渡した相手もほかの国の王だったらしいんだけどよ、そのコインは誰にも再譲渡されず未だにその王がホルダーらしい。言い方を変えれば、ホルダーとなり不老不死を手に入れたと共に、永遠にその命令に従事しなければならない呪いに掛けらているって事でもあるのだろうな。」



 「その国の王は永遠にその国を攻めるように言えないって事ね。呪いの継承でもあり、希望の継承でもあるって感じか。・・・なる程。」



 「そうらしい。大体分かるか?」



 「大体ね。その流れだと・・・、僕は何をすればいいのさ?」



 「さぁ・・・、このコインが言葉を感知してるとは思えないし、譲渡する側の感情が大事なのかもな。」



 「あやふやだねぇ。」



 「謎が多いらしいってのはこの辺もなのかもな。」



 淡々と話を進める2人をよそに、女性側2人は感情的だ。



 「ち・・・ちょっといい?セレン・・・君。借りていい?」



 「・・・。」



 「あぁ、大体の話は済んだ。」



 ニアとセレンは少し行けばあるいつもの秘密基地付近まで行って2人から遠ざかり、声をひそめながらも声を荒げ話し始めた。



 「どうすんの〜どうすんの!!コーガが極識眼持ちなんて聞いてない!!」



 「そだな。ヤベェな。でもまぁ・・・。」



 「でもまぁ何よ。」



 「でもまぁ、大丈夫だと思う。」



 「な・・・何でそう思うの?」



 「何となく。」



 「何となく!?あと、そのコイン何なの!?」



 「さぁ・・・。迷惑な話だよな。ハハッ。そんなに驚くことしたかね?僕。」



 「ハハッ・・・じゃないわ!!」



 「焦ってる君もかわいいよ。」



 「あ・・・そう?いや!違うでしょ!!コレからどうするのかって聞いてんの!!」



 「まぁ、とりあえず僕は不死身らしいね。君に生きろって命令したら譲渡出来るのかな?しかしあやふやだなこのコイン。あやふやコインと命名しよう。」



 「何を呑気な!!」



 「ニア・・・、落ち着こう。こんな時こそ冷静で居ないととじゃよ?」



 「じゃよ?・・・カラエルさんが乗り移る・・・の?」



 「冗談だよ。」



 「・・・!!」



 「さてと。手短に真面目に話そう。ニアにも相談したい。」



 「・・・分かった。」



 「あの2人に僕が異転者だって伝えようかなと思うけど、どう思う?」



 「!!・・・そうね、私も最初そう思った・・・けど・・・。」



 「けど?」



 「大丈夫なのかなって。」



 「・・・、思ったけど、最悪皆が処刑されるってなれば、このコイン使ってどうにか出来るんじゃないかな?」



 「あっ・・・!!・・・かな?・・・って事は・・・。」



 「このコインの話を信用するのならもう大丈夫の可能性がある。カラエルの爺さんの期待値を家族の処刑を阻止し得る人への期待が上回ればいいんだから。」



 「ちょっと分かりにくいけど・・・そうなのかな?」



 「コーガの話を信用してない訳じゃないけど、鵜呑みにするのも違うと思う。落とし穴はあると思うし・・・、そしてもちろん最悪の場面にならないと使わない予定。だけどね。だけど少しだけ希望の光が見えた気がするって感じだ。色々ややこしいけどね。」



 ニアは目を丸くし、先ほどの潤んでいた目も相まってキラキラと目を輝かせた。



 「あんまり長居も出来ない。僕が話をするけど、何があったら口を出してくれたら助かる。」



 「・・・分かった。」



 「いこか。」



 「うん!!」



 セレンは、ニアに笑顔が戻った事により心が晴れるのを感じた。



 「コーガ、貴方いつからこの事知ってたの!?」



 「んぁぁ、知らなかったって言ってんだろ!?俺は爺さんの道場で住み込みで修行してただけで、あのコインがどんなコインかは知ってたけど、前のホルダーが誰なのかは知らねぇ。ジジイは陰で何がやってたみたいだけど、それも知らねぇ。選別者?が何かも知らねぇ。」



 「・・・。」



 「他に聞きたい事は?」



 「貴方・・・極識眼持ちなの?」



 セレンが戻ろうかという頃そういう会話になっていた。

 2人はセレンとニアが戻った事に気がついたが、話を続けた。



 「アリシア、お前極識眼についてあんまり知らないだろ。お前も、持ってるんだぜ?」



 「どういう事?」



 「極識眼にはランク付けがしてある。F級からEⅮⅭB級まで。それ以上になると、星付きのSA級そしてSS級って分けられる。更に上にもあるって話だが・・・、まぁウチらがいつも使ってるランク付けと一緒だな。」



 「そのランク分けの一つに極識眼があるって事ね?」



 「そうだ。世間一般で言う極識眼持ちってのは星付きの極識眼の洞力がある人の事を言うんだ。俺たち無星はC級洞察眼とかB級洞察眼って呼んでる。」



 「私はどうなの?」



 「俺がお前の目を見れば分かるが・・・。」



 「え・・・何か嫌ね。」



 「嫌ならやめよう。」



 「や・・・やるわよ。」



 アリシアは口をへの字にしながらもコーガの前に立った。



 「もっとちゃんと俺の目を見ろ!」



 「分かったわよ・・・。」



 セレンはアリシアとコーガが見つめ合っているのがとても嫌だった。



 「あぁ・・・分からねぇ。・・・って事は多分お前の洞察眼はC級以上だ。まぁ、治癒術師なんだからそれくらい必然で見えてないと務まらんだろうからな。」



 「へぇ・・・。そうなんだ。」



 「・・・ちなみカラエルの爺さんは星付きのSA級極識眼だ。」



 「へぇ、凄かったんだね。」



 「おいおい。リアクションが薄いぞ。そのカラエルの爺さんが羊皮紙に何て書いてたか覚えてるか?見えないって言ったんだ。」



 「ん?」



 「手紙の中で、ジジイはコイツ・・・セレンを観てるんだよ。」



 「・・・?どういう事?」



 「私も気になる。何が言いたいの?」



 「アリシア、ニア・・・、ジジイが見えなかったんだ。つまりはコイツ、セレン・ロードは星付き極識眼、SA級以上の極識眼を持ってるって事だ。」



 「え?」

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