第3話 愚者か賢者の分析 大人の階段
あれから相変わらず彼女は僕の家にたまに来ては姉や僕の面倒を見てくれる。
僕は彼女を喜ばせたいと心から願っているのだが、正直僕が出来ることは少ない。
だが少し考えることで僕が彼女を喜ばせる手段を思いついた。
それは僕が成長することだ。
言葉をしゃべれるようになり、歩けるようになり、走れるようになる事だ。
いずれ、僕は立派な人間へと成長した時にこう言うのだ。
貴方のおかげで今があります。
と、心を込めてありがとうと感謝の気持ちを伝えるのだ。
まぁ、当然と言えば当然な事なのだがね。
成長するにつれこの意識は薄れるのだろうと思う。
そもそも人を喜ばせるために自分が成長しようと思う人間などほとんど居ないだろう。
私は彼女の為にも自分の成長にベクトルを向け奮起するよう意識した。
がんばろーっと。
ーーーー
突然だが、僕は面食いである。
暇で暇で思いを巡らせていたらこの題材を深堀りしたいと思ったのだ。
そう、ぼくは面食いなのである。
生前、イケメンではなかった僕が言うのもおこがましいのかもしれないが、面食いなのだから仕方がない。
面食いと言っても色々種類がある。
とりあえず美人な人に無条件で尻尾を振るタイプか、その人の表情や顔の形を見てこの人はどういう人なのかを分析し好意を抱くタイプだ。
僕は後者の方である。
自分でもうまく整理で出来ていないのだが、とにかく後者だ。
分析と言っても勘みたいなものだ。
だが、個人的には的中率は高いと思っている。
試しに、まずは母親の面持ちから分析をしてみる。
母親はしっかり者だが、本質は自由でほんわりフワフワしている。
正直騙されやすいタイプだと思う。
目の前の事は一生懸命やるが、イレギュラーにイレギュラーが重なるとパニックに陥り制御できなくなる。
好きな人を愛し、ひたすらに信じ、騙されても気が付かなかったりする感じ。
自分で独創的なアイディアは持たず、人を支える事に重きを置いている。
誰かの為に。誰かの為なら。
悪く言えば他人のためにしか生きられず、自分の意思はほとんどないとも言える。
自分に自信がない訳でもない。
周りからの評価も低い訳でもない。
サポートタイプって感じだ。
ちなみにあまり人を見る目は無い。
自分はそんな事ないと言い張るが、僕はあまり無い方だと思う。
そんな感じ。
あくまで顔や表情だけ見た僕の分析だ。
案外憤怒のごとく子供を叱ったり、夫としょっちゅう喧嘩してたりするのかもしれない。
生前の嫁がそんな感じだったし、自分の母親もいつも怒鳴っていたし。
母親とはそういう生き物なのかもしれないし。
恋愛対象に限らず、僕はこういった目で見て人をある程度人を判断している。
こうやって分析しないと人と接することが出来ないのだ。
コミュ障というわけではないが、そういう癖が付いている。
つまるところ、生前の僕は人が苦手だったのだ。
というか、多分今もそうだ。
姉も幼いながら、それなりに個性が出ているので分析しやすい。
姉は疑問を持つ事が多い。
無言で観察し独自の解釈で物事を理解している。
自分では活発な方だと言い張るが、大人しくて無言なタイプだと思われる事が多いだろう。
世間とは考えが少しズレてはいるが、平均以上の成績を残し、カリスマ性を見出す事も多々ある。
直向きに努力する傾向にあり、たまに見せる冷酷さがシュールだったり、何気に手が器用だったりもする。
分からないものは分からないとハッキリ言う感じとか、そんな感じか。
自分に対する客観的な洞察に長けており、自分の事を比較的理解している。
たまに苦手な事や難し過ぎる事に直面すると脳が機能しなくなる事もしばしば。
でも何気に人望も厚く、そうなった時には助けを求めなくても誰かが助けてくれる。
んで、好きな人には思いっきり甘えて、尽くす感じ。
ちなみにコレはツンデレではない。
繰り返す。
ツンデレではない。
尽くしているように見せかけて自分の思い通りに事を進めるからだ。
姉がツンデレとか気持ち悪くてあまり思いたくないし。
姉はそんなイメージだ。
というか人を見た目で勝手に想像して評価すんなって話だよな普通。
まぁ、それが僕なのだから仕方がない。
例のあの子。
母親と姉同様に名前がまだ分からないが、例のあの子も分析してみよう。
マジで大好きで、もうたまらない。
多分ね。
多分ね。
多分だけどさぁ。
彼女は僕の事を好きだ。
赤ん坊だからか?
そうだとしてもなんでも良い。
とりあえず考えるだけで胸が張り裂けそうだ。
うん。そんな感じ。全然分からん。
好きな人の分析は的中率が格段に下がる。
というより、思考能力が無くなる。
ただ・・・、少し分かるのが、隠してる事が少しあるとかそんな感じ。
少しどころか案外多いかも。
そうだな。
柔軟性が高く発想力があり、普通を演じる事に長けている。
長けているがゆえに本来の自分は隠している。
優等生を演じる事に徹し、誰とでも分け隔てなく接するが、何処かで壁のようなものを作り、本当に親密な関係になった人は殆ど居ない。
ちょっと腹黒い所もあるが、ドス黒い感じではなく、小悪魔的なーーーともちと違うが、本質は悪質なソレではない感じ。
か?
全然分からんと思いつつ、考えてみれば出て来るもんだな。
と言っても妄想に近いからな、いくらでもなんとでもいえる。
小悪魔・・・、表裏があるような感じではなく、オンとオフがあると言った方がいいかもしれない。
まぁよくわからん。
彼女のことに関しては自信が無い。
好きな人相手だと自分の感情が邪魔して勘が全く働かない事が多い気がするのだ。
あー、あとそうだな。
少しスケベな所がある。
しかしコレは分析ではない。
繰り返す。
分析でない。
そう。
僕は知っているのだ。
赤子だからか。
知ってるのだ。
最初に僕が彼女のなにかしらの初めてを奪ったあの夜。
それ以来何度かお留守番を手伝いに来てくれている。
最初の時は彼女の家らしき場所に連れて行かれて、二人だけで一晩を過ごしたのだと思う。
が、次からは数時間だけだという事もあり、僕の家の二階で二人きりで面倒を見てくれた。
色々と。
二階はそう広くはない。
自分の体が小さいからか広く見えるが、畳6畳分か8畳とかその辺だろう。
出入り口は一ヶ所だけで、ほとんど物を置いていない。
本棚と本が数冊程度だ。
床はとてもキレイにしてある。
僕の匍匐前進の練習にはちょうど良さそうな感じにしてあるんだと思う。
出入り口を一ヶ所塞げば、僕が階段から落ちる心配もない。
その唯一の危険さえ回避しておけば、僕から目を離していても大丈夫というスンポーだろう。
ちなみにココには母親は上がってこない。
正確には上がってきたのを見た事がない。
用が無いからか、階段を登るのを避けているのか分からないが、上がってこない。
家事の合間に下から声をかけるだけで、上まで登っては来ないのだ。
姉もあまり来ない。
料理や家事に興味があるのか、階段に嫌な思い出があるのかは知らないが、例の彼女と姉が一緒に上に上がった事がほとんどない。
つまり二階は僕らの二人の愛の巣って訳だ。
ちなみにあながち冗談ではない。
あの例のお留守番から、たまに母親と姉とで数時間程外出する時があった。
誰も二階に上がって来ないとは分かってはいても、生活音はする。
しかし下に誰もいないとなれば、それはもう二階は無法地帯だ。
二人が何処に行っていたのかは知らないが、この美味しい状況をありがとう。
そしてだ。
僕がそんなに泣き叫んで彼女を困らせていた訳でもない。
手を伸ばせば届きそうな彼女の胸にタッチ出来ないものかと訓練の一環で試行錯誤していた時だ。
彼女は「どうしたの?またお母さん居なくて寂しいの?」と言った感じで。
しょうがないなぁと言った感じで。
あの時の事を彼女は再現してくれたのだ。
多分チュパチュパしている僕があまりにも幸せそうにしているからか、彼女はこの行為を進んでやってくれるようになった。
もはやこの行為は僕をあやす事だと僕たちの間ではこれが常識になりつつある。
なにより彼女も普通に幸せそうにしていた。
母性本能がくすぐられるのか、僕の頭をなでながらニコニコしているアリシアは女神そのものだ。
こんな至高の一時が数ヶ月の間で結構あった。
彼女も年頃の女の子だ。
きっとこういう事に興味が沸いてきているのだろう。
僕は赤ん坊として不自然の内容に注意しチュパチュパした。
アリシアがちょっとスケベだったらいいなとかも思ったりはしたが・・・。
全てだ。
全てが愛おしく、僕は100回人生繰り返しても、100回共に彼女を好きになっているだろう。
理屈ではないのだ。
恋に理由など要らない。
エロい事がなくても多分好きになっているだろう。
目を見ればわかる。
いっそ目を見なくても分かる。
彼女の空気に触れるだけで僕は救われる。
まぁそんな感じで僕は彼女の事が大好きなのだ。
大きくなったら何になりたいか、聞かれたらこう答えよう。
お姉ちゃんのお婿さんになると。
なんなら彼女の為に奴隷のように働こうではないか。
叶わぬ願いだと思うが。
まぁ恥ずかしいから言わないんだけどね。
僕は決意を固めた訳でもなんでもないが、そうなればいいなと妄想を膨らませた。
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