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コインホルダー 〜異世界で生きるガチなヤツ〜  作者: ノープラン
第一章 プロローグ
23/44

第23話 精霊と魔術 3人組との何気ない会話



 「そりゃ精霊だろ。」



 「精霊さん・・・ですかね。」



 「精霊だな。」



 今日、リンは何故か来ていない。



 「だからバンギ君!!ダメだって!!」



 「へへ・・・へへへ・・・。」



 「お前魔王な。で、俺が勇者で、お前・・・も勇者な。お前も・・・勇者で、お前はある意味勇者な。」



 うん。

 カオス会場は今日もいつも通り幼児達による無法地帯だ。

 ここに来て約3ヶ月程か・・・、気候はそれなりに寒くなったのだが、ある程度服を着れば問題ない。

 今となってはアカミナ、キエラ、ミエルの3人は僕の良き相談相手となっている。

 家族やアリシアには僕のことを正直あまり知られたくないからな。

 彼女らには家族以上によく話をする。

 って事で今日も昨日の出来事を秘密基地の話は伏せて聞いてみた結果、3人共に応えてくれた感じだ。

 どうやら昨日の謎の声は精霊説が濃厚のようだ。

 あれが?

 3人が即答する程だからまぁよくある話なのだろう。



 「精霊?あれが?やっぱりそうなのかな。」



 「んー。そうだな。オレもまだ上手く精霊は使えねぇんだけどよぉ。5歳の頃だったかな。色々やらかしちまってさ、親から納屋に閉じ込められちゃって、その中で3日目くらいした時だったかな。そん時初めて聞こえて来たんだ。後になってアレは何だって姉貴に聞いたら精霊だって言ってた。だからまぁ多分それだ。」



 「3日も!?ハハハ。一体何やらかしたのさ?」



 「それがよぉ、あんまり覚えてないんだよな。親にムカついてたのは覚えてるんだけど・・・。ハッハッハ・・・はぁ。・・・あぁ・・・思い出したらちょっと吐き気してきた。」



 彼女は一体何をやらかしたのだろうか。

 嫌すぎて無意識に記憶から排除でもしたのだろうか。

 まぁ本人はまだ精霊の力使えないらしいし、精霊かどうかは信憑性に欠けるが、僕と同じような経験があるって事か。

 まぁ、この世界ではアルアルって感じなのかもな。


 

 「あ、ありがとう。も、もう大丈夫だから・・・。ミエルも精霊だと思うの?」



 「そだね〜。精霊さんはね、何言ってるか最初分からないけどね。ずーっと精霊さんのお話聞いてたら何を言ってるのか、だーんだん分かってくるよ?」



 「へー、そんなもんなんだな。」



 「へー。」



 「私もまだ分からない事が多いんだけどね・・・。」



 ふむ。

 精霊との対話が重要って事か。

 なる程ねぇ。

 ミエルは脇に生えている雑草のような青い花と対話するかのようにしゃがみ込みながら話してくれた。

 今まさに精霊とお話ししているのだろうか。


 しばらくは僕も瞑想とかで精霊との対話を試みてみるか。

 鍛冶屋にもそのスキルは必須みたいだし、今のうちに練習しておいて損はないだろう。

 

 それとあれだな。

 今に至るまでの間で、穴を掘るのはちょっともう少し考えてから実行しようという結論に至った。

 落とし穴程度の穴なら問題ないだろうが、城壁の外に穴を掘ってあるとなると、要らぬ疑いをかけられ処罰されかねない。

 という考察からだ。

 城壁内への侵入とかな。

 すぐには見つからないと思うが、明食が終わった後に見つかったりしても厄介だ。

 尻拭い出来ないレベルの問題に発展する可能性もある。


 何より穴を掘る時うるさいだろうからな。

 秘密基地計画は明食が終わってから家の周りで試みる事にしよう。



 ーーー



 バチン カッカッ ドン!



 「オラオラ、コレじゃネェちゃんに勝てねぇぞ?」



 「あっ、くっ・・・。アカミナなら勝てるの?」



 「あ?だからお前強くして練習相手になってもらうんだよ!ほら立て!素振り100本だ!!30秒で。」



 相変わらずアカミナは僕に稽古を付けてくれている。

 ドSなだけかもけど。

 もしそうだとしてもこんなに上達の遅い人間に教えるのは僕はごめんだ。

 僕ならすぐに見捨ててしまうだろう。

 ・・・教えるの苦手だしな。


 僕には剣の上達しない決定的な欠点がある。

 そもそも勝ちたいという欲求が完全に欠落しているのだ。

 負けた相手の悔しがる顔も見たくないし、相手が必死であればある程僕のやる気がなくなってゆく。

 勝つときは圧倒的に。

 負けるときは潔く。

 コレが僕のスタイルになってしまっているのだが、いい事だとは思っていない。

 本当は勝負事に強くなりたいという気持ちはある。

 だが現状なかなかそう思えていない。

 そんな僕がどうすれば強くなれるのか・・・謎だ。


 僕はどうあるべきなのか・・・。

 まぁ、工房で剣でも打っとけば生活出来るとは思うし、そこまで深刻には悩んでいないのだが・・・。


 しかし稽古や試合で間違って相手を殺してしまったらどうするつもりなんだろうか。

 そういう事故は今までなかったのだろうか。

 僕にはまだこの世界を理解出来ないでいる。


 けど・・・練習は好きだ。

 努力する事も好きだ。

 体力も付けたいしな。

 いざという時に振るえる力が無いとダメな時もあるだろうし。

 素振りとかなら練習していて損は無いだろう。



 「ハァ、ハァ、ハァ。・・・ちょっと・・・30秒ははムリ。ハァハァ・・・休憩。」



 「お疲れさん。頑張るねぇ。」



 階段の一番下に座り込み、僕とアカミナの稽古をボーッと暇そうに見ていたキエラ。

 真横に座るのはちょっと微妙かなと思って一段落上の階段に僕は座って話しかけた感じだ。



 「・・・フゥ。キエラはやらないの?」



 「そういうのあんまり興味ないんだよな。才能無いし。体力無いし。」



 「まぁねぇ・・・。精霊は?」



 「ん?使えるわけないじゃん。」



 「んー・・・。さっき、精霊だろって言ってたからいつもみたいに詳しいのかなって思って。」



 「あぁ、精霊はあんまり詳しくないんだ。・・・あぁそうだ。そういやこの前言ってたな。お前の知り合いに聞けばいいんじゃねぇのか?アリシア・・・だっけ?」



 「シアネェに?」



 「アリシア・エール・ガルダ。スゲェのな。この国でエリート扱いされている魔術師団。その中から数人しか選ばれない超エリート治癒術師。・・・らしいぜ。スゲェよなぁ。」



 「へー。・・・あぁ〜。そうねぇ〜。」



 「そのシアネェに聞いてみるのが一番なんじゃねぇの?」



 「まぁ〜ねぇ〜。」



 「ん?」



 「あ、いや、何でもない。そうね。今度聞いてみようかな。」



 あんまり身内と深い会話したくないのよね。

 ・・・けどまぁ、今度それっぽく聞いてみるかな。


 

 「キエラも精霊の声聞こえたりするの?」



 「んー、俺は聞いた事ねぇな。大人になっても精霊を使えるかどうかも怪しいもんだ。」



 「・・・。」



 「俺には何にも無いからな。」



 「・・・っていうか、シアネェのこと調べたの?」



 「まぁな。」



 「どうやって?」



 「ん?・・・んーーー・・・知りたい?」



 ・・・振り向いて上目遣いで意味深に微笑みながらこちらを見てくる。

 なんだ?

 というか・・・、キエラが可愛い。

 仏頂面でいつもつまらなそうにしているか、下卑た笑いしかしないキエラが、いつも見せない表情だったからだろうか。



 「まぁ、・・・うん。」

 

 

 「フフ・・・企業秘密。」



 「あっそ。」



 まぁいいけどね。

 そっちがその気なら・・・。



 「キエラってさぁ・・・。」



 「何?」



 「可愛いよね。」



 「・・・何だよ急に。」



 夫婦円満の秘訣で、嫁にはいつも愛してるよとか毎日のように言ってたし、少し可愛いとか思ったら可愛いよって言う癖を付けていたせいか、そういう事を言うハードルがやたら低い。

 そして女性はたとえお世辞でも言われればやっぱり嬉しいもんだろう。


 実際その時見せたキエラの笑顔が可愛かったのだから仕方がない。

 

 惚れたら負けだからな。

 僕が誰かを特別好きにならないようにはしているが、キエラが嫁に来てくれるなら大歓迎だ。

 そういう人にはちゃんと種を撒いて意識して貰わねばならない。

 子供が産まれたらなんだかんだしっかりと子供の面倒見も良さそうだしな。

 まぁ、その前にアリシアでも、キエラでも。

 まず自分が魅力ある人間にならなければ意味無い訳だが。

 実際今アリシアに愛の告白をされても僕は断るだろう。

 アリシアを幸せに出来る自信が無いからだ。

 そして女性の相手をする資格も無いからだ。

 遊びとか、好奇心とか、練習みたいなもんとかも世の中にはあるんだろうけどな。

 根が真面目だから硬く考えてしまう。

 ゆるくゆるく。

 テキトーにやらねばと、日頃思ってはいるのだが、難しいものだ。

 

 その後キエラの機嫌がいつもよりちょっと良かった気がする。



 ーーー


 

 「ねぇアリシア。」



 「何?ニア。」



 「その子どうしたの?」



 「あぁ、セレン君?そうねぇ。えーっと、私の・・・旦那さんかな。」



 「え!?何それ!」



 「私の初めてをいっぱい経験したの。ドキドキしたわ。」



 おいおいおいおい。

 アリシアさんや。

 マジですかい。

 いや、嬉しいけどさ、冗談で言ってるだとは思うけどさ。

 結構僕セクハラしちゃってるから冗談では済まされない可能性もある訳よ。

 責任とってよねって言われれば、断れずに分かりましたって応えると思うけどさ。

 ・・・まぁいい。

 分からないフリをしよう。

 だって4歳だし。



 「おはようございます!」



 「あ、おはよう。えーっと。」



 「セレン君よ。」



 「そうだったね。セレン君、おはよう。」



 ふう。

 4歳もつらいぜ。

 この子はニアというらしい。

 僕が4歳だからか笑顔で語りかけてくる。

 僕が39歳ならこんな表情はしないだろう。

 貴重な体験の一つだ。


 ニアは笑顔であるからして細くした目の奥で何を考えているのかが分からない。

 雰囲気からしてアリシアの親友とかなのではなかろうか。

 肩にかからない程の髪型で、根本が赤く、その先がオレンジ系の髪色をした少女でアリシアと同い年くらいか。

 時折り見せる八重歯が魅力的だ。

 嫁に来てくれ。

 あ、違うんだアリシア・・・。

 えーっと。

 愛してるよ。



 「ニア、後で話あるからちょっといい?」



 「何?私のライバルの世話をしろっての?」



 「そうじゃないけどまぁ、いいじゃない。練習付き合ってあげるからさ。」



 「冗談よ。分かったわ。・・・ん?・・・あ、シリルが来た。また後でね。」



 「うん。また後でね。」



 その後、何故かアリシアに連れてこられて今居るこの教室っぽい所で講義が始まった。



 ーーー



 「ーーで、あるからして、規模の大きな魔術というのは精霊の力無くして発源出来ないのであります。己の中の魔力はとても少なく、精霊を通して受け取る魔力に比べたら微々たるもの。ではどうすれば精霊から魔力を受け取ることが出来るか・・・。ブル・ジニスト君。答えられるかね?」



 「はい。・・・詠唱・・・ですか?」



 「まぁ及第点じゃな。よかろう、座ってよろしい。そう。詠唱である。あぁ〜・・・そこでまた質問だ。詠唱の他に魔力を発源させる方法は他にどんなものがあるかを・・・アリシア・ガルダ君。答えなさい。」



 「はい。魔力を発現させる為には主に詠唱が主流ですが、他に無詠唱、魔法陣、魔道具、血精術が挙げられます。」



 「大変よろしい。」



 講義・・・か。

 大きな丸メガネをかけた老婆が教壇に立って話している。

 分厚目の黒いローブを身を纏い、フードを被った影の奥から鼻と口元がうっすらと見え、その丸いメガネが光っているのが見える。

 最近気が付いたのだが、この世界の眼鏡はどうやら全て丸メガネのようだ。

 多分合っていると思う。


 それはいいとして、今の状況だ。

 昨晩、アリシアに精霊の事を聞いてみたら、次の日の朝からアリシアに連れられて今に至る感じなのだが、アリシアが何を思ってここに連れて来たのかは謎だ。

 が、とりあえず僕は講義を聞いているだけで面白い。

 ありがとうアリシア。

 愛してる。


 まぁ謎ではあるが、やはりさっきのニアという子に関係してくるだろう。

 何だろな。


 講義はアリシアと同世代か、それよりも上の世代の人間30人程で進められている。

 将来的に僕もこの授業を受ける事になるのだろうか。

 流石に僕と同世代の子は居ない。

 まぁ、講義面白いから何でもいいけどね。



 「その中でも今日は詠唱と無詠唱の違いについて進めていこうと思う。その為にはまずは何故詠唱をすると魔術が発現するかを説明せねばならない。何故詠唱すれば魔術が発動するか。それは精霊との対話により意思疎通をはかり、精霊から契約の下、力を借りて発源する力。それが魔術である。精霊との意思の疎通の為の方法は幾つかあるが、先程あったように、詠唱や魔法陣、魔道具、血清術等がある。厳密には他にもやり方があるのだが、今回は割愛しよう。」



 へー。

 講義の内容もなかなか面白い。

 そして驚いたことに黒板とチョークで文字が書かれているではないか。

 チョークと黒板という、前世の技術もこの世に存在するんだなと思考が巡っている。

 だがその巡る思考を阻害する程の驚きがそこにあった。

 チョークが勝手に動き板書しているのである。


 カツカツと軽快な音を鳴らし板書するチョーク。

 そして僕は文字が読めない。

 文字の数と、さっきの話の流れからして詠唱、無詠唱、魔法陣、魔道具、血清術と書いてあるハズだ。

 詠唱と無詠唱は多分あの文字で、間違いないだろう。

 文字が一文字を除いて同じだからな。

 そしてあの文字が〈無〉という意味の文字に違いない。

 なる程なる程。

 そんな事を思っていると、チョークは軽快な音を加速させ、詠唱、無詠唱に捕捉のような文字を書き込んでいる。


 あの自動筆記みたいなのも魔術なのだろうか。

 スゲェな。

 しかも本人が操作している訳ではなさそうだ。



 「・・・であるからして、目的は意思の疎通であり、詠唱が目的ではないという事を君達には理解してもらいたい。・・・そうだな。詠唱とは、古代史書によれば1万年以上前。精霊神と使族、人間によって話し合われ、魔族に対抗する手段としての約束に値する。よってそれぞれの精霊に認められなければ魔術は発動もしない。」



 やたら話が難しくなってきた。

 まだ理解はできるが・・・。



 「色々と特殊な例もあるが、その中でも最も簡単で規模の小さい魔術が、無詠唱魔術である。何故規模が小さくなってしまうのか。先程の復習にもなるが・・・、トルズ・ニージャ君起きたまえ。」



 「んぁ?・・・あ、はい。あー、んーっと!分かりません。」



 「まだ何も聞いておらんが?」



 「「「ハハハ。」」」



 「仕事で疲れとるのは分かるが、ちゃんと授業は聞いときたまえ。・・・所で・・・お母さんの体調はどうかね。薬はどうだった。」



 「あ、大丈夫です。お陰様で。はい。」



 「うむ。まぁいい。座りたまえ。・・・では授業に戻るが、何故無詠唱では魔術の規模が小さくなるのか。それは精霊との意思の疎通が図れないからである。己の精神の力のみで発現させる無詠唱魔術では、炎ならば火種程度。風ならばそよ風程度。水なら顔を洗う程度の魔法しか使えん。だがしかし最も戦闘でよく使われる魔術である。規模が小さいのにだ。何か分かるものはおるか?」



 「強・・・術・・・。」



 「おお、早かったなぁ。誰だ。今のは。あぁ・・・。」



 「あ。」



 なかなかの小声だったが、よく聞こえたものだなこの教授。

 あの老体で耳がいいのだろうか。

 アリシアがポロッと言ってしまったようだ。


 何故かその後教授と僕とで目が合った。

 変に間延びしたら授業が進まないからな。

 僕は隣のアリシアを指差し教授に合図した。



 「ん?またアリシア君か。んー、誰か他に分かるものはおるか。」



 「・・・ハイ。」



 「うむ。ロルズ・ハーヴェスト君」



 「強化魔術ですわ。外に出す放出系の魔術に比べて体内に留める強化魔術は消費魔術が少なく、長時間発動を可能にします事よ。」



 「・・・よろしい。普段何気なく使っている強化魔術だが、実はそれも無詠唱魔術に含まれる。二人ともよく勉強しておるな。大変よろしい。」



 周りの人間数人がほぉと唸っている。

 どうやら彼等彼女等にとっては新しい発見だったようだ。

 言われてみれば確かにって言うような顔をしている人がチラホラだ。

 しかしさっき答えたのはお嬢様だな。

 口調からして間違いない。

 知らんけど。



 ーーー



 そんなこんなで授業は進み、昼休憩となった。

 昼食はサンドイッチの様にパンにハムと野菜を挟んだものをアリシアが僕の分も用意してくれたようだ。

 空気は冷たいが日の光が暖かく、外でのランチだ。

 建物の脇のちょっとした段差に腰掛けているのだが、人通りが少なく、のんびり出来る空間だった。

 きっと彼女らのお気に入りの場所なのだろう。


 隣にニアも居るのだが、彼女は手をスリスリして笑顔でアリシアにすり寄って来る。



 「あのぉ・・・。」



 「いいよ。はい。」



 「いつも悪いねぇ。嫁にしたいよ。」



 「でも今日のパンは少し硬いかも。よく噛んで食べてね。」



 アリシアはいつもの事のようにニアの冗談には付き合わずサラッと受け答えしている。

 仲の良さが伺える。



 「はい。セレン君の分。」



 「ありがとう。」



 しばらく食事の無言の後、ふとニアが口を開いた。



 「アリシアさぁ。」



 「ん?」



 「結局その子はどうしたの?」



 「・・・。」



 アリシアはパンをモグモグしながら考えている。

 可愛い。



 「んー、お世話になってる人の息子さんなの。ニアにどんな精霊が付いてるから見てもらおうかと思ってね。声が聞こえたらしいのよ。」



 「あぁ。そういう事ね。いいよ。・・・食べたらね。」



 ニアはまたサンドイッチを頬張り、モグモグしながら答えた。

 この流れだと今回の件はよくある話のようだ。

 するとそこに不気味な影が忍び寄る。



 「美味そうじゃのぉ。」



 ん?

 あ、さっきの先生だ。

 先生というか・・・教授か。



 「お疲れ様〜。さっきの講義良かったよ。」



 「ありがと。」



 ん?



 「まだその喋り方してるの?」



 「別に生徒にバレてもいいのだけれど、でもやっぱり疲れるわね。・・・で、その子は・・・セレン君だっけ。職員室でも話題になってたわよ?あの子は君の何なんだって。」



 ん!?

 口調がさっきと全然違うし、声質もかわった。

 そしてローブに手をかけ眼鏡に手をかけたと思うと、アリシアと同世代だと思われる少女がそこに居た。

 おばぁさんかと思ったその人は、変装をしていたのだ。

 髪は銀髪に少し青っぽいメッシュが入っている。

 しかしこの世界の人間の髪の色は何なんだ?

 しかもクソォ。

 かわいいじゃぁないか。

 目がキリッとして冷めた感じでつまらなさそうな表情をしているが、色々とクセのありそうな、多分この人ユーモアがある。

 多分な。



 「あれ~?説明したはずだけどな・・・。あ、セレン君めっちゃ驚いてる。」



 「ホントだ。固まってる。ハハ。」



 「さっきはありがとね。シリルお姉さんよ。」



 ヨシヨシされた。

 クッソ。

 どいつもこいつもかわいい顔しやがって。

 俺の気持ちをもてあそぶんじゃない!!


 ホント俺も惚れっぽいよな。

 アリシアの周りは皆可愛くていい人にしか見えない。

 俺、そのうち騙されて死体で川にでも流されるんじゃないか?

 まぁいい。

 無心だ無心。

 まずは愛される器の自分にならなければ。

 ・・・しかし何だこの人。

 脳の処理が追いつかない。



 「で、この子は?」



 「私の旦那よ。」



 アリシアはキリッとした真顔で僕を抱きしめながら言った。



 「ハッハッハ。ニア、負けたな。」



 「う・・・まだ諦めてないんだから・・・。」



 ニアに睨まれている。

 かわいい。


 シリルはローブの中に持っていた紙袋を取り出すと、パンを取り出し一口頬張った。

 そして僕はそれを見ながら考えない事にした。

 色んな人が居るんだなーって。

 今はアリシアが作ってくれたパンを一生懸命食べよう。

 今を生きるのだ。



 昼もだいぶ落ち着いてきた。

 3人の少女達の話を聞いていると、大体の関係が分かってきた。

 3人は数年前からの同級生のようだ。

 シリルは飛び級飛び級で卒業して教師になったのだとか。

 アリシアも飛び級出来たがしなかったのだとか。

 3人の話からそう言った事が推測出来る。

 仲が良さそうで何よりです。

 おじさんホッコリするよ。



 「こうやって抱いてるとね、癒されるんだ。」



 「その子、ちょっと面白いわね。私の授業かなり集中して聞いてたわよ。所々に反応してたし、講義についていけてるわ。」



 「んなバカな。まぁ、確かに今日の講義は基本的な内容は多かったけどさ。」



 「いえ。壇上に立ってたら分かるわ。アリシアは私を母親のような目で見てくるし、貴方はつまらなさそうに聞いてた。誰が何を考えているかもおおよそ検討がつくわ。」



 「貴方の変装を不思議そうに見てただけなんじゃないの?」



 「そうなのかしら・・・。だとすると・・・。」



 「セレン君、頭いいのかな?魔術の才能があるとか?」



 「それは分からないけど。まぁ、私も知識だけで魔術はあまり得意ではないし。その辺は貴方の方が分かるんじゃない?エリート治癒術師様?」



 「その言い方やめてくれない?私もギリギリなんだから。大変なのよ?分かってる?」



 「そうね。ごめんなさい。貴方いつも落ち着いてるから・・・。」



 「あ、そうだ。ニア、さっき言ってたの、見てもらえる?・・・セレン君。ニアお姉ちゃんに見てもらおうか。」



 「何を見てもらうの?」



 「ニアお姉ちゃんはね、精霊がよく見える人なの。ね、見てもらおうか。」



 ・・・さっきから色々考えてはいたが・・・、まぁ大丈夫だろう。

 父の遺伝で、多分土の微精霊とかそんなんだと思うけどな。

 確認の意味も込めて。



 「うん。」



 「じゃぁ、セレン君こっちおいで。」



 僕はトボトボとニアという少女の前に立った。

 座った彼女と目線は同じくらいか、僕の方が少し高いか。

 すると僕は抱き抱えられ、さっきアリシアがしてたような感じになった。



 「あぁ、・・・確かに暖かくていいかも。悔しいけどいい匂いもするし。」



 「ちょっと。」



 「いやね。ライバルはちゃんと調べないと。・・・よし。冗談は置いといてっと・・・。」



 ニアはまた僕を持ち上げ対面すると、スッと手を僕の頭の上に乗せた。

 ニアはひょうきんな表情をしているイメージだが、真顔に切り替わった。



 「・・・ん?・・・ん!?」



 「何か分かった?」



 何だ?



 「ちょっ、ちょっと待って。えーっと・・・ちょっと向こうにセレン君と・・・いい?」



 「え、何で?」



 「いいからいいから。ハハハハ。ほらおいで〜セレンくーん。」



 何だ何だ?

 俺の秘めたる力でも見破ったのか?

 僕は校舎裏の桜の木下まで連れてこられて向き合った。

 半分妄想だがそんな雰囲気だ。

 


 「と・・・とぼけないで答えてね。・・・貴方・・・何者?」

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