第2話 心の乖離 初恋の思い出
半年が経った。
と、思う。
多分それくらいだ。
季節もあるのか無いのか、微妙な感じ。
日本の夏とまではないが、少し暖かくなった。
僕はというと、なんとか匍匐前進で行動出来る様になった。
物心ついている分もう少しテンポよく成長したいものだが、流石に生後3日で開脚前転マスターは無理だろう。
一応コレでも頑張った方だと思っている。
しかしアレだな。
いかなる時でも成長というものは素晴らしいものだ。
動けるって素晴らしい。
と言っても動けるのはベビーベッドという名の檻の中だけだけどな。
出してくれ。
かわいい子には旅させろって言うじゃないか。
情報収集したいんじゃ。
とは言え分析出来るものはある程度ある。
気候や部屋の中、景色等を判断するに、ココは日本ではないだろう。
剥き出しの木造の主屋で壁紙などは一切使われていない。
やたら古いイメージがある。
いや、まてよ。
最早一周回って新しいってヤツかもしれない。
Iターンして山奥に自分で家を建てました的な?
流行り病が蔓延してきて、それが嫌で都会から出てきたとか。
ついでに電気とガス、水道も使わず自然のままに生活をするような。
オシャレな感じのヤツ。
YouTubeとかでよく観てたな。
焚き火で料理したりするんだ。
手頃な平たい石を焚き火で熱して肉を焼いたりな。
まぁ楽しそうではある。
そんな感じの可能性は、あるにはあるだろうが、まぁ普通に違うだろう。
人の気配は家族以外にも感じるし、雰囲気的にそんな感じはしないしな。
圧倒的に日本じゃないと言えるのは言語だ。
実は母親の言っている言語が理解出来ていない。
ニュアンスでそんな感じで言ってるんだろうなぁってのは分かる。
だが日本語とは程遠い。
英語でも中国語でもフランス語とかでもない。
ドイツ語…とかか?
自分が生前日本語しか喋れなかったのも相まってよく分からない。
が、多分ドイツ語でもない。
チョミメン語とか、僕の知らない地方の言葉だろう。
もしかしたら沖縄とかの田舎の、方言が超キツい所って説もあるね。
いや、ないな。
とにかく田舎だ。
田舎は好きだ。
人が多いのは好きじゃないんだ。
都会のいい所を知らないだけだろうけどな。
俺の世界はこのベビーベッドの中だけ。
引きこもり体質・・・良く言えばインドア派な体質の僕だけど、流石にこの狭さはキツい。
外に出れば面白い発見があるだろうに。
まぁ、この場に居ても全く発見がないという訳でもない。
面白い発見というか、なんというか。
最初から分かってはいたのだが、僕には姉が居る。
というか目の前に居る。
もう既に歩いているからして、2歳か3歳か4歳か。
髪の色は母親と違い綺麗な黒だ。
漆黒の堕天使とでも呼んでやろうか。
言葉は喋れるのか喋れないのか。
あまり感情を表に出さないタイプなようで、不思議そうに僕の頬を突いて来る。
やめれ。
母を独り占めに出来なくなった腹いせにちょっかい出すのはよくある事だ。
やめれ。
やめれって。
無表情で突いてくる。
北斗神拳の使い手だろう。
まぁ嫌いではないのだが、地味に痛い。
やめてくれ。
はぁ。
癒されたい。
外に出たい。
自由という翼であの一番星まで連れて行ってくれ。
「こんにちは〜」
おっ!
僕の心は跳ね上がった。
例のあの子が今日も来てくれたのだ。
言語が理解出来ないとはいえ、挨拶程度なら理解出来るようになった。
例のあの子。
母の姉妹か親戚か、近所の子か正直だれかは分からない。
数か月前からちょくちょく家に来てくれるようになった気になる子だ。
ベビーシッターとかかもしれない。
「セレン君。元気にしてましたか?」
ちらほら聞こえるこのセレンという響き。
おそらく僕の名前だろう。
彼女は天使の声色で僕の名前んで来た。
セレンの後は何を言ってるのか分からないが、ニコニコ顔で僕の頬を突きながら語りかけて来る。
もっと突っついてくれ。
ちなみに僕はこの子の事が気になると言うより、大好きである。
初恋ってヤツだ。
もちろん極秘事項である。
しかし歳の差がなんとも言えない。
一回り以上離れている。
向こうは恐らく12は過ぎているだろう。
14か15か、17では無い気がする。
対して僕は生後半年か8ヶ月かそこら。
そして見た目は赤子、頭脳はおじさん。
34歳。いやもう35か。
一回り以上離れている。
上と下に。
・・・・・・気持ち悪いとは言わせない!
いいだろうよ。
好きでこんな状態な訳でも無いし。
僕の結婚適齢期が18だとして、その頃彼女は34だろ?
ホラ。
何が誰にホラかは解説思考を控えるが、僕の中でOKが出たんだ。
いいんだよ。
可能性は無限なのだ。
人を好きになるのに歳の差なんて関係ない!!
だよね?
「アブー、アーアー」
僕はそんな事を言いながら彼女とのコンタクトを試みた。
言語の壁は分厚いようだ。
「またねセレン君」
「リンちゃん、一緒に行こうか」
母から呼ばれたようだ。
彼女は姉の頭にポンと手を置きそう言うと、何かを言って姉と共にどこかへ行ってしまった。
家事の手伝いか何かか?
小走りで去りゆく貴方の御姿に僕は心を締め付けられる。
行かないでくれ。
とりあえず彼女のなんとも言えない残り香がなんとも言えなくてなんとも言えない。
また一緒にお留守番したいなぁ。
――というのもだ。
数ヶ月前に母親達が何処かに出掛けるとかで、この子とお留守番する事になった時の話だ。
姉はその時、一緒にいたかどうかは分からない。
確か居なかったと思う。
つまり彼女と2人っきりだ。
その時状況は理解出来ていなかった。
大事な一人息子を置いて何処かに行ったのだ。
謎だ。
よっぽどの理由があるのか、そんな感じが普通なのか。
謎だ。
彼女とは初対面だった。
と思う。
留守を任せるとは余程信頼されているのだろう。
とりあえず母とは仲がいいようだった。
どんな事があって出掛ける用事が出来たのか。
知った事ではない。
ある意味感情が暴走しそうではあったが、別れるとき何故か僕は泣かなかったのを覚えている。
彼女は幼さは抜け切れないが、しっかり者の長女って感じの女の子だ。
歳は16とかだろうか。
大人というには幼いが、子供というには大人びている。
彼女もまた顔が整っていて、優等生って感じでもある。
肩の下、肩甲骨辺りまで伸びた銀白の髪の毛とでも言えばいいだろうか。
その綺麗な髪を上の方でくくり、ポニーテールにしていたのをよく覚えている。
しかしえらく美形が多いな。
彼女は一生懸命で、時々メモを見ながら、たどたどしくも僕の面倒を見てくれていた。
「大丈夫よ。皆すぐ帰って来るからね」
僕が不安がっていると思っているのか、彼女は良くそんな事を言っていた気がする。
そりゃ用事が終われば帰って来るだろうよ。
とか内心思っていた。
個人的には帰って来なくてもいいんだけどね。
彼女と一緒にこの空間を味わっていたいし!!
「大丈夫、大丈夫」
何度も何度も彼女は僕を安心させようと努力してくれた。
そう言う彼女を僕はマジマジと眺めていた。
特等席で。
太ももの上だ。
胸はそう大きくはない。
母親と比べてしまっているせいか小さく見える。
小さく見えるが、Cとかそのくらいはあるだろう。
僕は美乳派だ。
婆ちゃんになっても愛していたいからな。
ほら。
大きい過ぎるとアレじゃん?
まぁ、大きいのが嫌いな訳ではないけどね。
まぁCでも十分大きいけど。
とりあえず、ありがとうございます。
暗くなっても母親達は帰って来なかった。
かろうじて理解できる彼女の「大丈夫」という言葉に意味があったのだろうかと、今になって少し思う。
僕はいつものように「ワンギャワンギャ」と泣き叫ぶが、彼女は嫌な顔一つせず、オシメを変えたり、体を拭いてくれたりしている。
相変わらず泣くしか出来ない自分が不甲斐ない。
一段落した時。
僕は無性にケツが痒くなった。
今思えばこのケツが痒くなった事がファインプレーだったかもしれない。
拭き残しがあったのか、拭き過ぎて傷でも入ったのか。
原因は定かではないが、とりあえずやたら痒くなったのだ。
外は暗かった。
「オンギャーオンギャーオンギャー」
僕は無慈悲にも泣き叫んだ。
彼女はと言うと、僕に離乳食を食べさせようとしたり、お尻の方を触って感触を確かめたり。
思考錯誤してくれている。
パチンという音と共に炎の明かりが灯った。
ライダーにでも火をつけてメモ紙を読んでいるのだろうか。
ちょっと聞きなれないライターの音だなと思ったが、そんなことはどうでもいい。
最終的にはどいしよう、どうしようと言った感じになってしまった。
それもそうだろう、ケツが痒いなんて彼女に分かるはずもない。
言語の壁は厚いのだ。
喋れればいいのにな。
僕は冷静になりつつ、痒いのをきっかけに暴れ馬を暴走させていた。
ごめんなさい。
お嬢さん。
「オギャーオギャーオギャー」
彼女は何を思ったのか服をはだけだした。
ポロンと可愛い乳房を出し、僕に柔らかい中にある少し硬くなったソレを咥えさせようとした。
真剣なおももちだ。
「ごめんね。お母さんまだ帰って来ないみたいなんだ。咥えられるかな?」
母が居なくて寂しくて泣いていると思ったのか、出るはずもない乳を僕に与えようとしてくれた。
僕は離乳食を食べているとは言えまだ乳離れは終わっていないのを知ってか知らずか、高鳴る鼓動と共に迫り来るポッチに、僕は慣れた手付きで無意識に飛び付いた。
チュパチュパレロレロ
「ん・・・んん・・・」
彼女の頬はやや赤い。
もう、さっきまでケツが痒かったのがどっかに吹っ飛んでしまった。
チュパチュパチュパ
「オッパイ出ないけど・・・ん・・・」
チュパチュパ
「よかった。大丈夫そう。あぁ、かわいいなぁ」
僕は本能で行動している。
んー。
かわいいのは君の方だ。
母親とは全然違う。
罪悪感が物凄いと共にめっちゃエロくて興奮する。
多分この子は僕の血族ではないだろう。
本能的に。
チュパチュパチュパ
なんて健気でいい子なんだ。
この子なら僕の子供もしっかり育ててくれるだろう。
しかし良く見ると目に涙が浮かんでいる。
「お姉ちゃんが居るからね。寂しくないよ。お母さん。早く帰って来るといいね」
見間違いではなさそうだ。
声が少し涙声になっている。
彼女が何を言ってるのかはわからなかった。
が、もて遊んだ責任とってよねと言われたのであればれば、もちろんさと応えよう。
冗談は置いといて、この涙は何だ。
今の僕には確かめようも無いことだが、彼女が不安にならないような、一緒にいて安心出来るような人間にならなければと思った。
まぁ、そんな事があったその日から、僕は彼女に夢中なのである。
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