第18話 親の義務と子の自由 アカミナの自尊心とリンの遊び
「あー、また勝手に戻して。ほら、別にいいじゃんかよー、減るもんじゃあるまいし。」
いやいや、色々減ると思うぞ。
精神的なヤツが。
「大体何がしたいの?お姉ちゃんを困らせたいんじゃないの?」
「・・・チッ。アイツなぁ。ムカつくんだよ。いつもすました顔しやがって。」
「まぁ、それはあるかもね。知り合いなの?」
「いやね、アカミナが剣の手合いで負けたんよ。5戦5敗。あんたの姉ちゃん超強いのな。ヒッヒッヒ」
「お、おまっ、言うなって。あーもう。クソッ。」
この子アカミナって言うのね。
アカミナにキエラにミエルか。
三人共なかなかいい目をしていると思うがな。
大体見たら分かる。
アカミナって子は指揮官のタイプだ。
姉がどれ程強いのかは知らないが、この子も強いのは分かる。
折られるプライドがある程に。
だがそれは努力の成せる技レベルなのだろう。
対して姉はただ普通にやってるだけ。
姉が本当にそれ程強いのだとしてもさほど驚きもしない。
普通の水準が違うんだと思う。
姉は剣を振るのが普通なんだ。
近くに居てそう思う。
姉が彼女の言う強者なのだとしたら、強さの秘決は多分それだ。
ただ剣を振るのが好きなんだろう。
ただ遊んでいるだけ。
なかなかハードな遊びを。
そしていつも楽しそうに。
まぁ無表情なんだけどね。
俺には分かる。
少なくとも努力しているというイメージは浮かんで来ない。
無表情、そして無意識の努力・・・か。
そして多分ではあるが、ただ遊んでる様に見えて楽しいからって色々考えながらやってるんだと思う。
どうやったら楽しいか、どうやったら面白いか。
どうやったら誰もやった事ない事が出来るか、どうやったら皆が喜ぶかとか。
そういった事を隙さえあれば無意識にやっている人間には、苦痛を伴いながら努力している人間ではとても勝てない。
アカミナはおそらく何かのプレッシャーを受けて努力している。
誰かの為に、何かの為に、頑張って頑張って頑張って頑張っているのだろう。
だからこそ悔しいんだ。
努力してなさそうに見える人間に負けるのが。
誰よりも努力している。
誰よりも努力しているのに勝てない。
実は努力しているからこそ勝てないというジレンマ。
実際僕から見たら誰よりも姉は努力している様に見えるが、本人は努力しているつもりもなく、ただ好きな事をやっているだけ。
好きこそものの上手なれってヤツだ。
姉に限っては他にも色々ありそうだけど、とりあえず必死に努力しているという印象は薄い。
そんな人に勝てるのは、天才か、同じタイプか、数倍の時間を費やした人間くらいか・・・。
「へー、お姉ちゃん強いんだね。知らなかったよ。確かにいつも剣振ってたもんなぁ。遊んでるだけかと思ってたけど・・・。で、勝たなきゃならない理由とかあるの?」
「あー、それな。アカミナはさ、道場の娘なのよ。3姉妹の末っ子なんだけど、姉二人がアレだからって比べられるし、同い年には・・・ねぇ?」
「・・・フン。クソッ。どいつもこいつも・・・馬鹿にしやがって。おい、キエラお前もう喋んな。」
「ヘイヘイ。」
なる程。
つまり姉二人が優秀でいつも比べられて、同級生に負けるとか許されない的な?道場の恥みたいに言われちゃってるのか?
なる程ねぇ。
「んーーーー。」
僕はマジマジとアカミナを見た。
目の奥を見れるほどの距離では無いが、今は覇気を失っている様に見える。
だがやっぱり・・・。
続けてキエラ、ミエルと見てみる。
フムフム。
まぁテキトーだけどちょっと口出してみるか。
「リン姉ちゃんは、剣バカだから勝てないと思うよ。」
「あ?」
「んで、アカミナはそのリンの姉を指揮する指揮官に向いていると思う。ほんでキエラが軍師。で、なんだかんだ一番強いのが魔術師ミエル。って感じかな。僕にはそういう未来が見えるよ。」
「「「・・・。」」」
あ、やっと聞いてくれた。
さっきの子作り講座は興味無かったくせに。
「はぁ?何言ってんだ?つーか、ウソだろ。お前、未来視の魔眼でも持ってんのか?持っててもそんな何年も先見れる訳無いだろ。バカじゃねぇのか?大体お前何歳だよ。帰ってお母ちゃんのオッパイでも吸っとけよクソが。」
あぁ、それいいね。
愛しのお母さん・・・何処ですか?
・・・吸いたい。
にしてもお口が悪いですねぇ。
可愛いお顔が台無しですよ。
そもそもウソとかホントとか、そういう話じゃ無いんだけどな。
僕が未来を本当に見えるかどうかの問題に変わっている。
「魔眼は持ってないけど、大体分かるよ。」
「さっきから何だ?生意気なんだよ。チンチン噛み切るぞ。もういいから早くどっか行けよもう。」
「あぁ〜お前さん。ただのチンチン丸出し小僧だと思ったけど、結構面白いのな。お前んちは変人の集まりなんか?へへ。」
「僕は自分の得意な分野で戦えばいいって言いたいんだ。アカミナの姉ちゃんは剣が好きで好きで堪らないって訳じゃないんでしょ?」
「・・・。」
「アカミナの姉ちゃんは人に好かれる才能がある。現に二人も優秀な人がついている。」
「ただの昔馴染みだ。」
「それも含めてだよ。少なくとも僕の姉にはそんな幼馴染は居ない。そしてアンタには仲間を想う気持ちが人一倍強いし、道場の娘として責任を強く感じている。つまり君は人の上に立つべき人間だと僕は思う。姉にはそれが無い。」
「勝手に言ってろよ。俺はそんなんじゃねぇ。」
「・・・まぁ、確かにさっき会ったばかりだけどさ。僕はアカミナ・・・の姉ちゃんの事好きだし、キエラ・・・のお姉ちゃんも好きだし、緑のミエル姉ちゃんの事も好きだよ?皆カッコいいと思う。だから色々言いたいの。」
あぁ、無差別告白してしまった。
まぁ嫌いじゃなく、実際好きなんだから仕方がない。
「いや、そこはかわいいにしとけよ。」
「アラアラアラアラ・・・。何?何?・・・ちょっとかわいいかも。」
「チッ・・・。ヘラヘラと。」
「・・・。」
ミエルが抱きついてきた。
あー、人肌恋しかったからな。
癒される。
あの〜。
またチンチン見ます?
なんつって。
「あ、そうだ。アカミナの姉ちゃん。剣教えてよ!」
「あ?」
「だから剣教えてって。」
「は?なんで俺が。・・・それにお前、剣持ってねぇだろ。」
「一応ボロいのがある。入り口の所に預けてあると思うけど・・・。」
「・・・チッ。あんのかよ。・・・あぁ・・・ん〜。・・・キエラ、どの辺か・・・分かるか?」
「あぁ、持ち物預かり所の事だろ?さっき抱っこしてくれてた姉ちゃんとか、門の近くの大人に聞けばすぐ分かると思うぜ。」
「んぁ〜、しゃぁねぇな。お前、セレンって言ったか。ほら、行くぞ。ほら。」
アカミナはそう言いながら手を差し出してきた。
手を繋ぐって意味だろうか。
木剣を取りに行く時、僕が迷子にならないように気遣ってくれているのだろう。
やはりこの人は面倒見がいい。
うん。
俺の目に狂いはない。
ーーーー
この子は道場の娘だ。
いつかは道場の看板を背負って立つという覚悟があると見て取れる。
そんな中、剣を教えてと言われれば例え遊びの中であっても断れないだろう。
門下生候補の年下が相手ならなおさらだ。
将来的に僕を道場に引き入れることが出来れば、自分の株も上がるとの下心も芽生えるだろうとの計算もあるだろうし、純粋に僕が剣をこの人からも習ってみたいという好奇心があったから、特に演技している訳ではないというのがまたミソだったりする。
そして僕がアカミナの剣の腕を認めたって意味合いもある。
自分を認めてくれている人間を、人は嫌いにはなれないもんだからな。
「こう?」
「違う。こうだ。」
「・・・こう?」
「あぁ、違う。もっと重心を下げるんだ。」
「こう・・・かな?」
ミリダンの素振りの時とは大違いだ。
流派が違うからか、構えも振り方も握り方も違う。
しかもミリダン流のクセが付いてしまってアカミナにずっと怒られている。
よし。
作戦Aだ。
「あーん。出来ないよー。」
「アラアラ、ヨシヨシ。大丈夫よ〜。セレン君なら出来る出来る。」
あー、ミエルちゃん。
癒されるなぁ。
俺は昔から少年の心は忘れた事はない。
更に今は体も少年だ。
つまり問題無いって事だ。
あー、癒される。
「お前!また・・・。」
「ハッハッハ。姉はクソ強いのにな。弟はてんでたな。ハハハ。」
「お前本当にリンの弟か?」
「はい。セレン・アース・ロードと申します。」
「アース・ロードねぇ・・・。けど、アレだよな。お前本当に三歳か?前の世代だから・・・そうなんだろ?」
「あ、この前4歳になりました。」
「あ、そうなんだね。いや・・・、そういう意味じゃねぇって。まぁいっか。・・・あぁ。そうだよな。比べちゃ・・・ダメだよな・・・。」
何か分かってもらえただろうか。
そう。
あとは自分で答えを見つけるんだ。
赤毛の少女アカミナ。
「剣、すんごい強いよねアカミナの姉ちゃん。それでもやっぱりウチのお姉ちゃんに勝てなかったの?ボコボコにされたの?接戦だったの?ねぇ。ボコボコ?」
「あ!?」
「そりゃオメェ。接戦だったぜ?最初の一回目はボコボコにされたけどな!」
「まったオメェ、ペラペラ言いやがって。ボコボコにすんぞ!」
「イヤー、助けてミエル〜。」
「え!?」
「ほら、魔術でさ!」
「・・・あ!はい。分かりました。我に仕えし微精霊よ。空に漂いしささやかなる風を纏し風をかの・・・。」
「ちょー!!待てって。冗談だって。ハッハッハ。どいつもこいつも・・・。バカ・・・。ほんとばっかりだ・・・。どいつもこいつも・・・。」
・・・ホントにミエル魔術使えるっぽいな。
杖みたいなの持ってるっぽかったから魔術使える前提でテキトーに言っただけなんけど・・・。
まぁ・・・僕は昔からテキトー力には自信あるからな。
今回もその流れだろう。
まぁそれは置いといてだ。
アカミナの気分は少しは晴れただろうか。
心なしか彼女の目にうっすら涙が溜まっている様に見えるが、さっき笑ったからだろうか。
それともまた別の何かか。
とにかく逃げるな。
姉に負けたのはにわかに信じがたいが、負けたというのなら事実から目を背けてはならない。
過去の認識を変える努力をし、そして未来を変えるのだ。
過去と未来は変えられるのだから。
このままだと、負ける事は良くない事。
で、終わってしまう。
だが、今からあの時負けといて良かったのかもねと。
あの時負けたからこそ気が付けたよねと。
そういう未来を導く事は出来る。
それが敗北を糧に成長するという事だ。
だから逃げてはならない。
受け止めるんだ。
それが出来てやっと前に進める。
全ての出来事でそうなのだ。
時には逃げる手もあるけどな。
「おらセレン。素振り10000本だ。ほら構えろ。」
「俺のマグナムで素振りなら・・・。」
「あ?なんか言ったか?」
「いや、何でもないです!・・・1!2!3!」
何やってんだろ俺・・・。
・・・親の期待か。
親のレールはありがたいが、それはただの親の義務だ。
子はそのレールに乗る義務は無い。
子供は自由なのだ。
我が道を行けば当然失敗も挫折もするだろう。
親の言う通りにやっておけば良かったのにと言う人も居るかもしれない。
だが、もしそのレールが無くなったら。
結局困るのは自分だ。
何も考えずに親のレールに乗って、失敗したからといって親のせいにするのも間違っている。
自立していないとはそういう事だ。
最終的に親のレールに乗るってのは全然アリ。
むしろ理想だ。
だがそのレールには、自分の意思で。
子供の責任で子供が率先して乗らなければならない。
親が無理矢理レールに乗せるものでは無い。
だが親は、自分が挫折したからとか、苦労させたくないからとか言ってレールを敷いて無理矢理乗せたがる傾向にあるような気がする。
気持ちは分かる。
優しくしたいのは分かる。
だが本来は自分で自分のレールを敷けるよう、厳しくも愛情を持って訓練させるのが親の義務だと考える。
きっとそういう気持ちでアカミナの親も厳しくしてくれているのだと思う。
事実がそうでないとしてもだ。
そう思うようにしよう。
いい友達も居る事だしな。
間違えたっていい。
失敗もしていい。
人のせいにするな。
転んでも逃げずに立ち上がるのが大事だ。
むしろ若い頃から転んでいた方がいい。
転ぶのに慣れていないと、大人になって転けたら痛いじゃ済まないからな。
受け身の仕方を学ぶのもアリだし、転んだ先で地面に落ちている何かを拾うのも大事だ。
転ばないよう石橋を叩くのは愚者の行いだと思う。
それが大事な場面もありはするがな。
姉の件でアカミナはいい経験をした。
リンを恨むな。
リンに勝てない自分を恨め。
そして強く優しく。
なれたらいいよね。
僕はただアカミナの幸せを願う。
まぁ他人事だけどな。
自己満足に僕はそう思った。
ーーーー
「左から、ミエル、アカミナ、キエラだよ。んで、久々に再開したリン。」
「知ってるよ。」
「ども。」
「あわわわ・・・。」
ミエルは人見知りなのか?
まぁいい。
「お姉ちゃん、アカミナが今度一緒に剣の稽古したいんだってよ。」
「んぁ?そ・・・」
「いいよ。ちょうど強い人とやりたかった所だし。大人相手じゃぁちょっとね・・・。セレン、お友達だったの?」
「いや、僕が虐められてただけだよ?」
「え?いや・・・え!?」
「いや、弟さんと将来の勉強の為に色々とねぇ?だよね?セレン君?」
「ハハハ。」
「笑って誤魔化すなよ。おい。・・・おいって!!」
「仲・・・良さそうね。アカ・・ミナさん、セレンと仲良くしてあげてね。宜しくお願いします。」
「あ、・・・あぁ。」
「それにしてもセレン。少し見ないうちに大きくなったわね。」
まぁ、口調変えてるからな。
大人っぽく見えるのだろう。
おそらく身長とかの話では無い。
さすがに1か月じゃそんなに身長は伸びないだろう。
僕もまぁそろそろ赤ちゃん混じりの言葉が恥ずかしくなってきたからな。
成長と捉えてくれるなら好都合か。
というか、この3人組には普通にペラペラ喋っちゃったけど大丈夫だろうか。
大丈夫だと思うが・・・。
というか、それを言うなら姉も少し見ないうちに更に大人びている気がする。
元々姉は親の前とかでは子どもっぽく振舞うが、僕と二人の時とかはいつも大人な感じだった。
今回また一段と大人っぽくなった気がする。
アカミナとかと打ち合って自信が付いたとかか?
というか、他の3人もしっかりしてるよな。
親が命のやりとりをしているからか、肝が座っていると言うか、将来を見据えているというか。
生前の大人達よりしっかりしている気さえする。
「リン姉ちゃんも大きくなってると思うよ。」
「そうかしら。そうかもね。」
「・・・リン・アース・ロード。」
「・・・何?」
「・・・。・・・また、明日。」
「うん、・・・また明日。今日はセレンを面倒見てくれてありがとう。」
「あぁ・・・、いや。あ・・・なんでもねぇ。じゃぁな。」
「セ・・・セレン君、ま・・・またね。」
「またなぁ〜。」
「バイバーイ。」
何処に行くのかは知らないが、門を出た3人の娘は揃って何処かへ行ってしまった。
楽しかったなぁ。
あのまま変態な事をエスカレートさせていっても面白かったと思うけど。
まぁあの辺で止めといて正解だった筈だ。
「いつ帰ってきてたの?お父さんは?」
「昼頃には着いてたよ。あの広場でお姉ちゃん探してたらあの3人に絡まれてね。」
「意地悪なことされたんじゃないの?」
「ん?いい人達だったよ?」
嘘は付いていない。
アカミナが意地悪してきたのは事実だが、悪い人ではない事もまた事実。
そして僕は姉の問いを否定したわけでは無い。
よって僕は嘘をついていない。
「そう。ならいいけど。」
姉も自分が嫌われてるって自覚があったようだ。
自分を嫌ってる人を好きになる事は無いだろう。
って事で姉はアカミナの事をあまり良く思っていなかったに違いない。
って事は僕に気を遣ってアカミナ達と接してくれていたのだろうか。
3色三姉妹の事は僕は好きだけど、姉は3人の事どう考えるのか。
姉が他人と接しているのをあまり見た事がないから判断しかねる。
まぁ、その辺は本人達に任せよう。
僕が無理矢理仲良しにする必要もないだろうし。
ーーー
「セレン!あぁ良かった。本当に心配したんだから。」
「セレン君!大丈夫だった?お、しばらく見ないうちにまた大きくなったねぇ。」
姉と門付近で話していると、母セリーヌと愛するアリシアが迎えに来てくれた。
あぁ愛しのアリシア。
まぁ、軽く3人に浮気してるし、ミエルに軽く癒してもらったからな。
ちょっと後ろめたい。
まぁいい。
正式なお付き合いはまだしてないのだから、堂々といこう。
アリシアも大きくなったと言った。
僕も気が付かない内に大きくなってるんだろうか。
「お母さん!シアネェ!!ただいま・・・でいいのかな?ハハ。大丈夫だったよ。お父さんと楽しかったよ!」
「あらそう。それは良かった。あの人時々抜けてる所あるから・・・。でも大丈夫そうでよかったわ。ほら、こっちおいで。」
母に物凄くハグされた。
胸を押し付けられて苦しい。
母だからか、やはり全然興奮しない。
本当は美女に抱かれて本当は嬉しいはずが、ほんと何でもない。
母を引き剥がそうと手を押し出すが、どうしても手が胸に当たってしまう。
ラッキースケベで柔らかいのだが本能が好意を抱かないよう制御しているのがわかる。
この気持ち悪い感覚。
母よ。
そろそろやめてくれ。
「あら、いいじゃない。もっとほらこっちおいで。」
やっとの思いで脱出したが、母がまだ僕を求めてくる。
まぁ、久々の再会で本当に心配してくれたんだろな。
ここで突き放すのは親不幸か。
仕方がない。
もう少し抱かれてやるか。
「あぁ〜。いい子いい子〜。」
母は幸せそうだ。
アリシアはお預けを食らっている。
まぁ子供はちやほやされるわな。
あとな。
母よ。
リンの事も気を遣ってやってくれ。
僕ばっかりやると、姉が自分を見てくれないと悲しむぞ。
「あ、そうだ。お姉ちゃんって剣物凄く強いって知ってた?」
「あら、知ってたわよ〜?小さい時から頑張ってたからね。セレンも鍛えてもらいなさい。」
「セレン君、お姉ちゃんのとこにも!ほら!おいで!」
ペットじゃあるまいし。
・・・とかいいつつ、両手を広げて迎えているアリシアを見て内心めっちゃ興奮している。
だがここは冷静に、興味無いフリをするのだ。
僕はアリシアの元へ、トボトボと。
「よいしょっと。あ、やっぱり大きくなったわね。だいぶ重たくなった。もっと大きくなったらカッコ良くなるのかな。お姉ちゃん楽しみ!」
まぁ、唾付けられてる(物理)からな。
期待してくれているのは分かる。
だがな。
カッコ良くはならないと思うぞ?
カッコ良くなりたくないし。
まぁ内面のカッコ良さは自分なりに追求しているが、自己満足だからな。
そしてそれが万人受けするとは思っていない。
その時アリシアが僕の事をどう思うか。
それ次第だ。
僕は自分の信じる道をゆく。
それだけだべな。
ちなみに僕は来るものは拒まず去るものは追わずのスタイルだ。
楽だし、色々あってな。
そういうスタンスで生きてきた。
生前、結婚した後になって知った事だが、惚れた相手と対峙すると惚れた側はチンパンジー並の判断力になるそうだ。
実際これは経験して痛い目を見ている。
間違いないと思う。
つまりはだ。
という事はだ。
恋愛において惚れたら負けって事だ。
まぁ、前世で色々失敗したからな。
この考えは変わらないだろう。
僕がどれだけアリシアを求めようとも、アリシアが僕を求めない限り何もしない。
僕を求めてそうな雰囲気、脈がありそう、気があるようなら普通にこっちから動くけどな。
3人に無差別告白したのは、僕が3人を認めていると示したかったからだ。
自分を認めてくれて自尊心を満たしてくれる人を人は嫌いにならない。
まぁ僕が四歳だから使える技だがな。
僕は。
分け隔てなく接して、僕を認めてくれた人と結婚したい。
その中に僕の感情は入れない。
細かく言えば他にも色々とあるのだが、今はちょっと置いとこう。
ん?
アリシアの様子が少し変だ。
顔が少し赤い。
あぁ、無意識に俺の左手と右手が同時に勝手暴走していたからか。
僕は抱っこされている訳だが、二つの小山の頂上を。
両の手の丁度いい所にアリシアが押し付けてくるもんだから・・・。
コリコリと手が勝手にアリシアを攻めている・・・。
あ、ヤベェ。
アリシアと目が合った。
あ、笑った。
OKですね。
了解しました。
・・・コリコリ。
お客さん。
気持ちいいですか?
やれやれだぜ。
「あ、セリーヌさん。この後はどうしましょう。私はここからでも大丈夫ですけど。」
「そうね。でもせっかくだから一緒に行くわ。」
何の話をしているんだ?
しかもずっと攻めているのに普通に喋っている。
なんか悔しいのとエロいなぁってのが凄い(語彙力)。
母とアリシアと再会して、しばらく歩いているな。
時間にして5秒以上は歩いていると思う。
アリシアを攻めているからか、体感時間が異様に短い。
ちなみに僕はまだアリシアに抱っこされていて姉は自分で歩いている。
なんなら姉は僕の荷物の鞘と木剣を持ってくれていて、母がバックとスコップを持ってくれている。
至れり尽くせりだ。
そろそろ厳しくされるだろうからな。
最後だと思ってありがたく思っとこう。
アリシアに抱っこされていて視点が高くなったし、昼間父と到着した頃に比べて人が少なくなった事で周りの状況がある程度把握しやすくなった。
首を伸ばすと城壁が見える。
ここは城壁の外の様だ。
父と一緒だった時に壁の中と思われる場所に一回入った事がある。
中には古い建物や噴水、時計塔みたいなのもあったのを覚えている。
文明はそれなりにあるなぁという印象は受けたが、人混みのせいで印象を受けただけにとどまった。
色々と分析したかったのだがな。
また今度だ。
父との行動での経験で、今ここが壁の外だと判断出来る。
中に比べて外は簡易的に造られている建物が多いのが目立つ。
見渡すと簡易的な住居がズラリと並んでいる。
そして見てみるとやはり女の比率が高い。
出生比率が単純に女が多いのか?
まぁ、男は苦手だからいいんだけど。
かと言って女性の事を理解出来ている訳ではないが。
正直、人が多くて疲れてきた。
新しい情報が多過ぎて、脳内での処理も大変だ。
結果的にはアカミナ達と仲良く出来たが、ハッキリ言って下手すればイジメのターゲットにされ地獄の始まりだった可能性もあった。
アカミナも色々とストレス溜め込んでいるようだしな。
それに多分だが、ミエルとキエラも訳ありだと思う。
色々としてあげたいが、お節介だろうか。
まぁ、不自然でないタイミングがあれば力になりたい所だ。
それと・・・あ、穴掘る場所探すんだった。
忘れてた。
それと・・・・・・あ、今から寝る所に行くのかな。
どんな・・・場所かな・・・。
えーっと・・・。
僕はアリシアに抱かれて眠ってしまった。
皆に愛され、幸せな一時だった。




