第15話 見習いの礼儀 初めてのダンジョン
今、父とミリダンと3人で家の裏の林を彷徨っている。
外はまだ明るいが、もう2、3時間で暗くなり始めるのではなかろうか。
何処から何処までが明食なのかは知らないが、始まるのだ。
明食が。
アリシアは大丈夫だろうか。
初出陣だと言っていた気がする。
何度思い出しても心配だ。
しかし父は何処へ案内しようと言うのだ?
「もうちょっと先か・・・。」
父が何やら呟いている。
しかしこの父親、出入り口塞ぐなら塞ぐって言ってくれればよかったのに。
ミリダンを僕が家に案内し、閉め出されたと発覚してから5分か10分か。
どうしようと嘆いていた所父がすまんすまんと言いながら何処からともなくやって来た。
それから父に案内され今林に入っている訳だが、地味にそれなりの距離歩いているって現状だ。
この先が全く想定出来ない訳ではないが、ここは何も考えずに従っておくとしよう。
「お、ここだ。この大きな岩の下に入り口がある。行こうか。」
父は大きな岩がゴロゴロしている狭い通路の隙間を縫うように進んでいく。
途中大きな岩を登らなければならず、父とミリダンの助けを借りた。
2人で手を取って持ち上げて貰ったのだが、2人共、手が岩のように固かった。
特に父親のほう。
岩と岩の間(本物の岩)の地面を見てみると、父が丁度1人入れる程の穴が掘ってあった。
穴と言っても斜めに下る穴だ。
足元には石階段になるよう、石が敷き詰められている。
うん。
秘密基地の入り口っぽいな。
奥の方がやや明るい。
何だ?
もう部屋があるのか?
そう思って入り口を少し入ったが、部屋ではなかった。
父がランプを灯のついたまま岩の上に置いていただけだった。
「この先に家の地下工房がある。この穴は非常口兼、裏口兼換気穴の一つだな。ちょっと迷路みたいになってるから俺から離れるなよ。」
あー、なるほど。
そんな感じなのかなとは思っていた。
別の地下室を用意してるのかなとも思ったが、まぁそうではなかったようだ。
しかし地下の洞窟はちょっとワクワクする。
インディーのジョーンズみたいだし。
父の持つものがランプではなく、松明とかだったら雰囲気出たのにな。
罠とか、デカイ石がゴロゴロと転がってくるのかな。
松明でなくとも、ランプの光のその影に移る大きな影2つと小さな影1つが冒険の空気をそれとなく漂わせていた。
狭いには狭いのだが、体が小さいのもあって僕はその辺は気にならなかった。
先頭が父、僕の後ろにミリダンが居るのだが、むしろ彼らの方が苦戦している様に見える。
足元はそれなりに平坦だが、頭上や側面から大きな岩が出っ張っていたり、半分道を塞いでいたりしている。
よって細身だが少し背の高いミリダンは常に中腰で歩かなければならない上に、匍匐前進や、体を横にしてカニ歩きしなければならない事もしばしばだ。
父も匍匐前進やカニ歩きをしているのだが、慣れた手付きというかなんというか。
リュックを手に持っているにもかかわらず、スルスルと進んで行くので苦にしている様には見えない。
「ミリダン、通れるか。」
「ええ、何とか。ダンジョンに潜っていた頃を思い出しますよ。」
「ほう。何処のダンジョンだ。」
「そうですね。幾つか行きましたけど、最後に行ったのはミルヘンドからバイスル山脈のふもとへ向かって、山沿い東に3日ほど行った所にある地下迷宮ラジルですかね。星1つ付いてて1番難易度高かったですね。攻略出来ずにしっぽ巻いて皆で逃げちゃいましたよ。」
「星付き迷宮か。いやいや、生きて帰ってこれただけでも大したもんだ。しかしミルヘンドか。あそこの酒は美味いらしいな。ミルヘンド。確か、ホダタ大陸の東の方だったか。」
「そうですそうです。世界の東端近くの街ですね。果物も美味しく果実酒が特産で。女性に人気なんですよね。知り合いから依頼されて挑戦してみたんですが、そのダンジョンの失敗が痛手で冒険者業からは撤退しました。」
「そりゃ大変だったな。しかし果実酒か。好きっちゃぁ好きだが、その為に行くのもなぁ。」
「あぁ、でもそのお酒目当てで、美人な女性が集まるって事で有名でもありますよ。かく言う私の嫁がミルヘンド出身です。」
へー。
外の世界をほとんど知らないからな。
聞くには面白いが、知らない情報が多すぎて考えるまでに至れずにいる。
しかし男というのは土地名とか道とかの話をするのが好きだよな。
僕は土地名覚えれなくて、ほとんどナビ頼りだった。
こっちの世界では頑張って覚えないと死活問題だろ。
うん。
あ、いや。
閃いた。
移動しなければいいのだ。
そうすれば迷わない。
天才か俺。
それと、あれだなぁ。
冒険者とか、ダンジョンとか、何とかって場所やら、何とか山脈とか、色々あるみたいね。
大変そうだな。
頑張れ皆んな。
「ミルヘンドか。今度セレーヌと一緒に行ける機会があればいいがな。」
「そうですね〜。」
「ん?」
ミリダンが無難な返事で流していると、父が何やら険しい表情っぽい声を出して辺りをキョロキョロしだした。
何だ?
かと思えば今度は壁に手を付いて目を閉じている。
反省でもしているのか?
「あ、やっぱり。通り過ぎた。ちょっと戻るぞ。」
どうやら軽く道に迷っていたようだ。
しかし何で目を閉じているのに分かったんだ?
超能力か?
まぁ魔術絡みだろうな。
普通に。
方向音痴だからな俺。
後で聞いてみよ。
奥の方に灯が見える。
恐らく父の工房だ。
火を付けっぱなしで危ないのではとふと思ったが、周りに燃える物がないからまぁ問題無いだろう。
一酸化炭素中毒とかも気を付けないとな。
換気はしっかりやってるっぽいから大丈夫だとは思うが。
ココに来るまで、入り口から幾つかの分岐があった。
入ってきた場所に戻れと言われても戻れる自信が無い。
その前にランプが無かったら暗くて何も見えないだろうしな。
途中でランプが消えたらと思うと、とても1人では行けない。
あの道は喚起と防犯の意味で掘った穴かと思ったが、道中の話によると、どうも違うらしい。
元々は換気の為に掘り始めた穴なのだそうだが、防犯や珍しい石、金属を発掘する目的にも変わったのだそうで、余計迷路の様になってしまったのだとか。
ちなみに途中何処かに幾つか部屋がポツポツあるらしい。
10年以上放置している為、今はどうなっているか分からないらしいが。
エロ本でも隠したかったのかな?
大きくなったらこのダンジョン攻略せねばなるまいな。
「さぁ着いた。工房の他に3部屋作ってある。自由にしてくれ。水は湧き水を流してあるからいつでも冷たい水が飲めるぞ。便所は下流の方に用意してある。間違っても水の中に入るなよ?死ぬぞ。」
デンジャラストイレ。
ちょっと後で確認しとこ。
しかし気が付かなかった。
工房の奥の方にはあまり行った事なかったかな。
奥の方に川というか、用水路が流れている。
井戸水とか、湧き水とかだろうか。
流れた水は何処へ・・・。
色々と疑問冷めやらぬが、まぁここは置いとこう。
やはりトイレの仕組みはどうなっているか早めに確認しておいた方がいいだろう。
僕がどんぶらこしてしまうスペースが空いてれば対策して貰わねばなるまいて。
しかし3部屋とはどんな部屋だ?
裏口から入ってすぐはダイニングキッチンの様な広めの部屋になっている。
まぁ、普段生活している訳ではないからな。
簡素な感じだ。
真ん中には、石をくり抜いて作った様な長テーブルと長椅子がドンと置かれている。
その上にあるのはミリダ父が守ったというパンだろう、それが置いてあった。
魔物の肉を焼いた時に父が持ってきたパンはもう食べ終わって無くなったが、まだ15個〜20個程まだ残っている。
さっき焼いた魔物の肉も持ってきたし、1日、2日は地下に篭っていても食べ物には困らないだろう。
天井にはシャンデリア・・・かと思ったが、鉄の端材を継ぎ接ぎしてあるだけのロウソク立てだった。
と言っても地味にいい味が出ていると思う。
僕は好きだ。
その鉄屑シャンデリアには太めのロウソクが6本程刺さっていて思ったより明るい。
部屋の隅から隅まで明るいとは言い難いが、ある程度は見える。
そしてよく見れば部屋の隅に荷物が山積みされているのがわかる。
色々と見覚えのあるものが多い。
あぁ、なるほど。
避難してしまえば1年は居ないからな。
家の中に侵入され盗まれるのを警戒して母屋の方から両親が持ってきたのだろう。
というか地下室が無い人はどうしているのだろうな。
大変だ。
その中に母が用意してくれた非常食もあった。
これで食料に関しては本格的に心配無くなったわけだ。
「ほう。土魔術ですか。便利ですね。」
「これしか出来んがな。」
「失礼ですが、精霊もその系統で?」
「あぁそうだ。基礎系統の土だ。ドワーフの血が強いヤツは大体これだからな。アンタは騎士系統の誰かが降りてるのか?いい所の出だろう?」
「ええ、まぁそうなんですけどね。色々と大変ですよ。蛾が強かったり、色々と要求されたりで。本当にいざという時にしか呼び出さないですね。冒険者を引退したのなら基礎系統が一番ですよ。パン屋に英雄精霊は必要無いですからね。ハッハッハ。」
「学生時代は色々あったけどなぁ、そんなもんなのかねぇ。確かに炎系統は便利だがな。ちなみに何処の英雄なんだ?」
「特に歴史に名を残したって人でも無いのですがね。何処かの国の剣術指南役だったとか。その辺、精霊の記憶が欠けてましてね。分からないのですよ。まぁ最終的には相性でしょうね。」
何の話をしているのだろう。
どうせ暇になるし、聞いてみるか。
「精霊って何?」
「精霊は・・・精霊だ。」
どっかで聞いたことあるぞこのニュアンスの返事。
姉だ。
姉も確か僕の誕生日の時こんな感じで言っていた。
何だっけ。
忘れたな。
父の事を聞いたんだっけか。
あー、そうそう。
確か、お父さんの単語が出て来て知らない振りをして聞いたんだっけな。
そしたら姉が、「お父さんはお父さんよ。」
みたいな返事をしてきた気がする。
2人とも感覚派なのだろうな。
少し笑える。
しかし思い出した。
今頃姉と母とアリシアは何をしているのだろうか。
大丈夫かな。
「精霊は・・・まぁ精霊ですね。」
お前もかミリダン。
それほどこの世界では当たり前の事なのだろうか。
精霊とは・・・素朴な疑問ってことになるのだろうか。
「精霊は過去の人や動物、植物等の魂と言われています。」
「へー。」
コレは僕では無い。
父が「へー。」と言ったのだ。
「学術で習ったハズですよ。」
あぁ、父のポジションが大体分かった。
「多分アレだ。ミリダンの学校は先生が優秀だったんだろうな。うん。そうに違いない。でー、火とか、土の精霊は何なんだ?」
父が生徒でミリダンが先生か。
なんか妙な感じだが好都合だ。
「コレもまた諸説ありますけどね。精霊は元々は魂の変化したものだという説があります。魂は単体だと不安定で、何かと結びつこうとするらしいです。それが水だったり、土だったり、風とかだったり。そしてそれぞれの精霊と呼ばれるものになるそうです。中には単体でも活動出来る強い魂もあります。その状態で長期間維持出来れば准精霊と呼ばれるようになり、一定の条件を満たせば生きた人間と話す事だって可能です。またその准精霊にも色々ありまして。」
ほー。
本当に先生みたいだな。
疑問冷めらやぬ所はたたあるが、まぁ大体は分かった。
他にも色々とありそうだ。
実に面白い。
こういった流れでは、教えてもらう方にも礼儀がある。
礼儀というか、教える側から引き出す方法。
適度なリアクションを取る事だ。
理解しようと努力している事を表情や言葉に出して相手に理解してもらうのだ。
というのも、まず教える側も不安なのだという事。
教える側は相手の理解度が現状どれ程なのかを模索しているのだ。
ならば教わる側は、自分がどれだけ理解出来たか、或いは理解出来ていないかをある程度の間隔で伝える必要がある。
表情の変化や、頷いたり、疑問を投げかけたり。
教える側を邪魔しない程度に。
そしてそれは、こちらの教わりたいという意欲を伝える事にも繋がる。
相手に教わる意欲があると分かれば、教える方も楽しいものだ。
結果、自分が教える価値のある人間だと認識してもらう事が出来たのなら、いい循環によって簡易的な師弟関係が成り立つのだ。
ミリダンは教えるのが上手だと思うから当てはまらないが、教える側の人間が優秀とは限らないのもある。
教える立場だった僕が下手クソでそうだったから間違いない。
優秀だからといって、教えるのが得意とは限らないのだ。
まぁ僕が優秀だった言う意味では無いが。
どれだけ教えるのが得意だろうと、教える手順が完璧な事はありえないのだ。
それは教わる側の問題が出て来るから。
逆に、教える側が苦手でも教わる側が有能であれば教える手順など関係も無く師弟関係は成り立つ。
つまりだ。
自分が成長出来ないのは誰のせいでもなく自分のせいだって話。
そう思う方がお得って話。
自分の顔は今キラキラしていると思う。
興味深々でミリダンの話を聞いているからだ。
「精霊・・・准聖霊・・・。お友達に出来るの?」
三歳だからな。
こんなもんだろう。
「多分お前の精霊はコイツと似たようなヤツだ。」
父は掌を上にし、しばらくすると掌から淡い光。
黄色か茶色かの光が漏れ空中に漂いだした。
父の意識とは関係なくフラフラと周囲を散策している様に見える。
「練度が高いですね。詠唱無しで呼び出せるのは凄いです。」
「まぁ、仕事ではいつも相棒と一緒だからな。慣れたもんだ。」
「僕のは詠唱も必要ですし、血の代償が無いと言う事を聞いてくれません。大変ですよ。」
「まぁ、その代わり強いんだろ?俺とは世間の評価は雲泥の差だ。ひっくり返ってもアンタにゃ勝てねぇ。羨ましい限りだよ。」
「んー、そうですかねぇ〜。」
ミリダン、そんなに強いのね。
もしかして本当に明食を自力でやり過ごせたんじゃないか?
一応美魔女夫人とピンク饅頭を助けれたつもりだったんだけど、余計なお世話だったか?
「ちなみになぁ、コイツ、土をよく食うんだ。あぁ、そう言えば。」
父はそう言うと、箱を持って来た。
あぁ、秘密基地を掘った時に出たあの土が中に入っている。
父は特に何を言うでもなくその土を指差した。
父の精霊は顔とかは無いのだが、その土と父な顔を交互に見ている様に見える。
父はそれを見ると小さく2回頷いた。
すると精霊は箱の中の土に飛び込み見えなくなった。
「へぇ〜。」
「面白いだろう。けどな、学校じゃあんまりいいこと言われないぞ。あんまり期待するなよ。」
まぁな。
地味だし、しょぼそうだからな。
子供のイジメは純粋で残酷なものだ。
純粋だからこそタチが悪い。
生前もイジメられていたが、それはまぁ自業自得だと思っている。
耐えるという事も学んだし、アレはアレで良かったのだと思う事にしている。
アレのお陰で強くなれたのだ。
感謝せねばって感じで。
ん?
箱の中のを見てみると、箱の中の土というか岩か?
あの掘り起こした土を圧縮してあるヤツがだいぶ減ってる。
どゆこと?
食べたヤツはどうなるの?
「上手なヤツは食べさせた土から魔力を抽出したり、結晶にして出したりとかも出来るんだがな。俺はもっぱら鉄を抽出する位しか出来ねぇんだ。まぁ、それが出来れば十分だけどな。」
あぁ、あの剣を打つ時に振りかけていた粉がその抽出したヤツなのかな?
多分そうだ。
へー。
色々とやれる事あるんだな。
「そういうの出来たらなと思いますよ。」
「ミリダン、アンタもまた色々ありそうだな。」
「ええ、まぁ。」
「ねぇねぇ。僕はいつ使えるようになるのかな?」
「そりゃぁオメェ・・・、もうすぐだ。」
「大体8歳過ぎて、小等部に入ったら降霊の儀がありますから、その時授かりますよ。」
「しょうとうぶ?」
「セレン君はまだ知らないか。学校は8歳〜12歳の小等部、12歳〜16歳の高等部、16歳〜の賢帝部に別れていまして、16歳になると成人です。それぞれの部に上がる時に昇霊の儀が行われます。その時に微精霊から准聖霊、賢聖霊、大聖霊とクラスが上がる事があるかもしれないのですが、ほとんどの人が微精霊か准聖霊ですね。」
准聖霊?
賢精霊?
何が違うんだろう。
でも、コレ聞いたらかなり長くなりそうだ。
どうしよう。
というか、理解しているかどうか怪しい三歳の子供にこんなに色々と説明してくれるとはありがたい。
まぁ、意味分からんけどな。
「へぇ〜。お姉ちゃんも土の精霊さんなのかな?」
「あぁ、リンか。女は大体母親の血を引き継ぐからな。セレーヌは水精霊の准級だからな。水系統じゃないか?」
へー。
違うんだ。
母の旧姓とかあるのかな?
まぁいいか。
地下室に水路があるのも母がやってたりするのかな?
姉が泳ぐの得意なのも関係するとか?
聞いてみれば納得って感じもする。
姉が穴掘ってるの想像出来ないからな。
偏見か?
「明食が終わって、終焉祭が終わった後だろうな降霊の儀は。俺は見てられっかな。また招集来るだろうな。そういやミリダン。おめぇ星付きなんだよな。第二夫人は・・・?」
「実は、御察知の通りまだ娶ってないんですよ。バネッサは早く迎えたいようなのですが、まだ出来かねている所です。」
「そりゃぁまたアレだな。だったら税金も結構な額払わないとだろう?第二夫人娶れば税金も免除、子供が産まれれば補助金だけで暮らせるってのに。」
へー。
色々あるんだな。
星付き?
星付きは第二夫人を娶って税金免除?
子供が生まれたら補助金?
何か分からない事も多いが。
第二夫人とか俺の中の常識に当てはまらない。
色々と問題あると思うけど、大丈夫なのか?
大丈夫なんだろな。
この辺、僕の挟める口はないだろう。
「今の所蓄えがあるのでしばらくは問題無いのですが、うちの子三歳になり落ち着きましたし、そろそろ考えないとですかね。」
第二夫人って立ち位置どんなんだろうな。
肩身が狭い気もするがな。
それに女性って、独占欲の塊みたいなイメージなんだが。
これもまた偏見なのだろうか。
でもまぁ、金が絡んで来るから許容されたりするんだろうか?
とりあえず国の方針的に、優秀な遺伝子をより多く残したい。
みたいなのは伝わって来るかな。
うまくいってるかは知らんが。
「それこそミルヘンドに行くべきだろう。嫁さんのバネッサ・・・だったか。彼女と気の合う人が一番だろうしな。」
「それもそうですね。なる程。ありがとうございます。考えてみます。」
ミルヘンド。
美人が多いって所だよな。
俺も行きたい。
父も便乗する気じゃなかろうか。
「さてと・・・。続きやるかな。ミリダン、ゆっくりしていってくれ。」
「はい。セレン君と遊んどきますよ。」
「助かる。」
父はそう言うと、奥の暗い工房へと消えた。
まだ仕上げが残っているからな。
残っているというより、仕掛かったばかりだが。
さて。
俺も何やるかな。
俺の脳のスペック的にこれ以上情報を入れ込んでもパンクしそうだ。
あぁ、せっかくミリダンも居るし、さっきの構えと素振りやってみるか。
僕は腰に巻くエロドラゴンの牙のベルトを肩に掛け、タスキのように掛けている。
裏口から洞窟を通ってここに来る時からそうしているのだが、ナイフを忍者のように刺し、ちょっとカッコいいかなとか思っている。
腰に巻いてちゃズレて歩けたもんじゃないからな。
一応周りを見渡して安全を確認し、ナイフを抜いてみる。
ちょっとまだ手の長さが足りないか。
ナイフを抜く時におぼつく。
確か、こう構えて、こう。
ミリダンは何も言わずにこちらを見ている。
ちなみに僕は褒めれば伸びるタイプではない。
論理的に間違った所を指摘してほしいタイプだ。
「いいね。上手上手。」
シュッ
シュッ
まぁいい。
とりあえず、頑張れるって素晴らしいね。
僕は父の作ったこのダンジョンの中で、ひたすら眠くなるまでナイフを振り続けた。




