第13話 恐怖の種類と対処 パンを巡る戦い
「スーーー。フーーー。」
正直頑張ると言っても特にやれる事がない。
父の仕事を見ながら座禅を組んで瞑想している所だ。
本当はもっと静かな所や、雑念の無いところでやりたいのだが、今のところこの場所で済ませている。
一応ギャグではない。
三歳児が座禅組んで瞑想してたら笑えると思うが、ギャグではない。
真面目なヤツだ。
父の仕事も見たいしな。
色々あってこういう結論に至ったのだ。
母と別れて8日が経った。
あいも変わらず父がハンマーで鉄を叩く音が響く。
父の作業も最後の工程にしかかっている様だ。
この工程が済めば仕上げにし掛かるんだと思う。
そんな感じがする。
食事は主にパンだ。
あれから帰宅した後、ピンクの美魔女の旦那が夕方訪ねて来て結構な量のパンを置いて行ってくれた。
母が用意してくれている食料もある。
が、一カ月分全部用意されていた訳ではない。
その為パンと一緒に食べて丁度一カ月分って感じだ。
干し肉や魚の干物、カラエルから貰ったような干し芋や豆などが主で、父が軽く調理して食べるのだが、案外バランスの良い食事になっていると思う。
明食は明日だ。
今日の昼頃にはミリダンがやって来て、一緒にシェルターに非難する流れになっている。
ちょっと聞こえた話では、こっちに滞在中はパンを定期的にくれるのだそうだ。
父も流石に申し訳ないと思ったのだろう。
幾らかは分からないが、金銭の受け渡しをしていたのも見た。
材料費だけは払うとかの流れだろうか。
分からないが、そんな感じだと思う。
明食か。
父が居るからか、そこまで緊張や恐怖は感じない。
カラエルは8000年以上明食と今の歴史が続いていると言っていた・・・よな?
前世の世界からすると、エジプトのピラミッドを建てていた時代から変化が無いって事になるか。
凄いか凄くないかは置いといて、とんでもない事だ。
まぁ正直どうでもいい話ではあるのだがね。
この世界の歴史だから、ある程度は知っておかねばなるまいて。
生前の世界では、100年、いや、数十年の内にインターネットやパソコン、スマホ等が普及したのに比べると、ほとんど変化の無い世界になる。
むしろ全く変化がないレベルかもしれない。
それほど明食の影響が大きいという事だろうか。
4年の内1年が丸っと警戒体制になるんだからな。
経済的には致命的って事だろう。
しかもどうやって封印したのかは知らんが、あんな宇宙に元凶があるのではどうしようもないって感じか。
なる程ねぇ・・・。
長い物には巻かれろって言うしな。
世界を理解した上で有意義な人生を歩みつつ、次の世代にバトンを繋ぐ。
実際、世界が変われど生前とやる事は変わらない。
自分に出来る事を、やるべき事を、義務を果たすだけだ。
その中で自分の好きな事も同じくらい頑張る。
そんな感じでいいと思う。
もう母達はとっくに城都に着いていて、引きこもっているのだろうか。
母はだいぶ心配してくれていた。
やはり何度体験してもやはり怖い物なのだろうか。
怖いにも色々種類がある。
その中に知っている恐怖と、知らない恐怖があると思う。
明食。
僕は怖いと感じた。
それは何故かと考えるに、対処法が分からないから、何も知らないから。
なのだと思う。
恐怖の種類か・・・、こういう恐怖は初めてだが、論理的に考えてみると恐怖を緩和できるかもしれない。
恐怖・・・恐怖・・・。
例えばそうだな。
生前の話でいうならば、車を運転するのにビクビク怯えながら、恐怖しながら運転する人は居ない。
まぁ恐怖を意識して運転する事は大事なのかもしれないし、免許取り立てかぺーパードライバーならあるかもしれないが、今回はそういう話ではない。
運転が何故怖くないのか。
それは知っているからだ。
運転の仕方、交通ルールを知っているからだ。
ある程度の車の仕組みを知り、交通ルールを学び、運転した経験を経て知識となり知恵と変わり恐怖しなくなるからだ。
これは全てに置いて応用出来る話だと思う。
今回僕が何故怖いと感じたのか。
それは明食を知らないから。
経験した事がないから。
解決法を知らないから。
交通ルールを知らずに道路のど真ん中に居れば、当然車が突っ込んでくる。
怖いに決まっている。
運転の仕方を知らずにアクセルを踏めばスピードが出て怖い。
ブレーキの踏み方を知らなければ車が止まらなくて怖い。
馬鹿みたいに当たり前の話だ。
馬鹿みたいに当たり前の話なのだが、それを分かっていない人が殆どだろう。
実際今回僕がそうだった。
僕があの日初めて明月を見て何故か恐怖した。
それが何なのか考えてみると、それは知らなかったから恐怖したのだと後になって気がつく。
恐怖のメカニズムをある程度理解していだとしてもやはり恐怖してしまった。
という事は、人間は感情の生き物であって、理性は後からついてくる物という事だろうか。
どれだけ理解していても恐怖は感じてしまう。
実際恐怖を克服するにはどうすれば良いのか。
知れば良いってことか。
恐怖を避けられないのであれば、すぐに切り替え恐怖に対処すれば良いという事だろうか。
となれば心を鍛えれば、そう言った無知なる恐怖に立ち向かえるのかもしれないな。
恐怖から無知を察し冷静になる。
知れば良いのだと冷静になる。
知ってしまって恐怖する事もあると思う。
だが僕は知るも知らずも同じ恐怖ならば、僕は知りたいと思う。
それもあって瞑想している。
瞑想というより、頭の整理と言った感じか。
こんな感じで恐怖とはと、自問自答したりしている昨今だ。
つくづく面倒な人間だと自分でも思う。
しかし父は2週間も熱した鉄を打ち続けている。
休憩は多めに挟むが、それでもかなりの運動量だ。
やはりこの後の工程を知らないのもあってモヤモヤとした感情が込み上げてくる。
本当に自分にも出来るのだろうか。
これも無知から来る恐怖の一種なのだろうか。
無知と言えば、僕は自分の事を全く知らない。
それに自分の体を自在に操れない。
自分の事を知らないというのも無力来る恐怖の一つと解釈している。
自分を知る。
そして自分を好きになれるよう努力する。
瞑想もその流れの一環だ。
色々とそれっぽい事をそれっぽい雰囲気で考えていると、階段の上の方から少しだけ聞き覚えのある声が聞こえてきた・・・誰だ?
「リネイル!リネイル!」
「!!」
いつの間にかガリガリとヤスリのようなものを剣に押し当てていた父が、スッと腰を上げた。
ーーリネイル視点ーー
何だ。
魔物が出たか。
あの声はーーあの男、ミリダンと言ったか。
しかしパンは美味かったな。
礼を言わねば。
息子は・・・大丈夫そうだ。
簡易部屋の中で大人しくしている。
しかしセレンは聞き分けの良い子で助かるな。
私が子供の頃は何も考えてなかったが、色々と見えているようだ。
ある程度したら聖帝か誰かに見てもらうのもいいかもな。
もしかしたら・・・いや、過度な期待はすまい。
それよりも今は外だ。
明食前後はやはり魔物が出やすい。
ちょっと出入り口を塞いで外を見に行くべきだろう。
「セレン、ここにじっとしているんだぞ。分かったな?」
「はい。」
「いい返事だ。怖くないからな。何かあったら隠れとくんだぞ?」
土の精霊の力を借りるか。
色々と用意するのには時間がかかるしな。
私は出入り口の目の前に立ち、セレンと目を合わせ、右手でその場に留まって静かにするよう促した。
「我と共にあり我と成す友よ。大地の力を呼び起こし、共に智を経て意のままに。ロックウォール。」
深呼吸と共に土精霊を呼び起こし、精霊と思考を同期させる。
ロックウォールは久々に使ったが、相棒の調子は良いようだ。
すんなりイメージが形になってゆく。
ちょっと壁が薄いかもしれんが、どうせまた壊すのだ。
このくらいで丁度いいだろう。
ーーよし。
塞がった。
時間にして1分もかかっていないだろう。
それなりに早い方だと思う。
ミリダンにはまだこの地下室を案内していなかったな。
声では何処にいるか分からなかった。
私は出入り口付近に掛けてある剣を、鞘付きのベルトごと取り、階段を駆け上がる。
これまた学生の頃練習した、片手でカッコよくベルトを装着するってのがまた地味に役に立つ。
今となっては階段を駆け上がりながらでも、手元を見ずに片手で装着出来る。
どうだ息子よ。
カッコいいだろう。
あぁ、この角度では見えんか。
しかも失敗して、結局最後は両手でベルトをしめた。
見られなくて良かったかもしれない。
階段を駆け上がると、すぐ正面にある窓から飛び出す。
「ミリダン!!・・・ミリダン!!・・・居るか!!」
「ーーーー!」
何かが聞こえた気がするが、場所が特定出来ない。
移動したのか。
「チィ。・・・フゥーー。」
地面に剣を突き刺す。
息を大きく吸って吐き、体の魔力を剣に注ぐ。
さて、届くか。
「・・・。」
・・・。
ダメか。
届かない。
・・・詠唱がすんなり出てこない。
自分の頭のスペックの悪さには嫌気がさす。
「えーと。あーーーー。我と共にあり我と成す友よ。地を這う力の在処をここに示せ。サーチ。」
・・・居た!!
少し離れている。
25メートルくらいか。
林の方だ。
建物に被害が及ばないようにこの場から離れたのか?
もうすぐ明食なんだ。
建物など気にしてる場合でもあるまいて。
まぁ、ありがたい話ではあるが。
敵の数は・・・4か。
この感じ、恐らくはアイズウルフだ。
星の付いていない魔獣だが、目を瞑って倒せる相手でもあるまい。
毒でももらったら厄介だ。
急がねば。
連日、剣を打っているせいか、疲労が溜まっている。
大丈夫かと少し心配したが、思ったより体が動く。
が、一時的なものだろう。
そのうちまた疲労が襲い掛かってくるだろう。
長期戦は避けたいところだ。
・・・居た。
ミリダンは林の中に入ってすぐの場所に立っていた。
背中に荷物を背負って、それを庇いながら戦っているようだ。
手には細身の剣を持っている。
サーペントソード。
細身で剣先半分が湾曲した異国の剣だ。
また妙な趣味の剣だな。
ふと思ってしまったが、そんな事を考えている場合ではないだろう。
「大丈夫か!」
「あー!!あの・・・パンを!!・・・この・・・パンをいいですか!!」
あ?
あぁ、あの背中の荷物はパンか。
ミリダンは背中に背負っていたパンの入った荷物を片手に持ち替え、こちらに差し出している。
「ヴゥーー・・・。」
やはりアイズウルフだった。
アイズウルフは彼を、ミリダンを囲って威嚇している。
アイズウルフは赤い目が四つある狼の魔物で、数匹、多い時は20匹以上の群れとなり行動する。
普段は遭遇しても逃げていく程の臆病な魔物のはずだが、明食が明日に控えているのもあって凶暴化しているのだろう。
たまに単体でうろついている個体も居るが、アイズバウンドと呼称されている強化個体に派生する可能性がある為注意が必要な魔物だ。
「おっと。あーあー。」
アイズウルフは何度かミリダンを襲っているが、ミリダンは辿々しく避けたり蹴ったりして、アイズウルフの攻撃をなんとかいなしている。
どうも汚れるのを嫌っているようだ。
まぁ、彼の言う通り荷物を受け取りたいのだが、ちょっと距離がある。
それに彼との間にアイズウルフが居る。
邪魔だ。
剣でぶった斬る事も考えたが、とりあえず彼の荷物を受け取る流れだろう。
剣をベルト付きの鞘に収めながら蹴りを入れた。
ミリダンを注視していたアイズウルフは不意打ちの蹴りをくらい、キャインと情けない声で鳴き5メートル程吹っ飛んだ。
彼の元に駆け寄り両手で荷物を受け取った。
空気を読める男リネイル。
ここに参上。
「ありがとうございますリネイル。自分のケツは自分で!!30秒ください。後は任せて。下さい。」
パンを受け取った私は地味に標的になっている。
少しゆっくり、なおかつ急いでミリダンから距離を取る。
確かにコレを持って戦うのは厳しい。
避けたり蹴ったりはなんとか出来るが、脚を噛まれたり、爪で裂かれたら厄介だ。
たまに爪や牙が毒化している魔獣も居ると効く。
普通の切り傷だとしても治癒は苦手だしな。
もっと勉強しておけばよかったと今に思う。
「!!」
あの男が、ミリダンが何かを使った。
挑発系の特技か呪文か。
俺にも効果が出て彼を警戒してしまう。
つい彼に対して腰を落として攻撃体制になってしまった。
ついでに荷物も落としそうに。
危ない危ない。
アイズウルフも同じく、全ての個体がミリダンにターゲットを移したようだ。
さっきとは違い、また一段と激しくミリダンを威嚇している。
ミリダンは、抜いた剣を右手に持ち、顎の前辺りに立て構えている。
左手は腰に。
足をピンと揃え、胸を張っている。
彼自身が一本の剣のようだ。
「出来るな・・・コイツ。」
・・・いつか言ってみたかったんだよね。
地味な願いが叶った。
まぁ冗談もあるが、実際そう思ったのは事実だ。
一匹のアイズウルフがミリダンに突進し噛みつこうと飛びかかった。
ミリダンは花びらの様にするりとかわし、すれ違いざま、ぐるりとアイズウルフの首を剣でなぞった様に見えた。
するとアイズウルフの首が音もなくズレ、まもなくぼとりと首が地面に落ち、血を撒き散らした。
ミリダンはと見ると、いつの間にか剣を鞘に収め普通に歩いている。
彼の周りの大気が少し歪んで見える。
また威嚇系とは別に何か使ってるのだろう。
強化系か何かか。
残り三匹は依然として臨戦体制だ。
「ヴヴヴゥゥ!!!」
ミリダンは三匹の丁度真ん中に足を踏み入れた。
アイズウルフは、せーのと言わんばかりに同時にミリダンに襲いかかった。
ミリダンはどこを見るでもなく、スッと姿勢を低くし、左手で鞘を引き、右手を剣に添える。
3回、瞬く間にカン高い風切り音が聞こえたと思う。
正直何をしたのかはよく見えなかったが、3回音がした。
その後瞬時に後方宙返りを数回繰り返し、ミリダンはその場から離れた。
真っ二つにされた3体分の魔物の肉塊が空中でぐちゃりとひとまとまりになり、さっきまでミリダンがいた場所に血を撒き散らしながらドバドバと地面に落ちた。
なかなかやるな。
小走りでミリダンはこちらに近付いて来る。
アイズウルフの死体を避けながら。
服に少し血が付いてしまった事をとても気にしながら彼は言った。
「フゥ。いやぁすみません。アイズウルフ、連れて来ちゃいました。僕のパンが食べたかったんですかね?ハハハ!!」
「ハハハ!じゃないぞ!アンタ。あ、いや・・・。」
つい突っ込んでしまった。
綺麗な剣さばきの後に変なこと言い出すもんだから・・・。
「俺達だけならまだいいが、子供も居るんだ。早く戻ろう。」
「そうですね。すみません。」
色々と言いたい事はあるが、今は息子が心配だ。
サーチで確認する方法もあるが、確認してヤバイ状況なら目も当てられん。
サーチをしている時間が無駄になる。
出入り口は塞いではいるが、覗き窓が空いている。
小さな魔物なら・・・。
瞬時な判断としては悪くないとは思うが、完璧ではない。
大丈夫だとは思うが・・・。
パンの入った荷物をミリダンに返し、周囲の魔物を警戒しつつ地下へと急いだ。
ーーセレン視点ーー
父が出口を塞いでどっか行ってしまった。
いや、父が何かブツブツ言って岩が現れて来たのは良かったよ?
凄いと思ったよ?
けどさ、俺、最遊記の悟空みたいに岩の中に閉じ込められちゃってるんだけど。
父に出入り口を塞がれ、暗くなってしまった秘密基地が僕の不安を煽っている。
ん?
最悪、父が帰って来なかったら、僕はここで餓死するしかないのか?
そう考えると、正直怖い。
確かに魔物が入って来たらここに隠れて安全なのはまぁ分かる。
けど、完全に自分の生きるか死ぬかを他人に握られているというこの状況。
そしてこのなんともし難い悲愴感。
男としてダメな気がする。
所詮吾輩はまだ子供なのだ。
はぁ。
この世界。
最低限の力がないと生きていけないな。
少なくともここから自力で脱出出来る程の力は欲しい。
この恐怖は現状を把握出来ていないという無知から来るものかもしれないが、無力から来る恐怖だとも思う。
一応ある程度は冷静なようだ。
鍛錬の賜物か。
父が出て行ってから5分程経っただろうか。
帰って来たのか足音が聞こえて来た。
ん?
けど足音が一人じゃない。
なんだ?
・・・もしかして父じゃない!?
最悪のパターンは父が死んでて僕も死ぬ。
まぁ悪くない人生だった。
アリシアと、母と、姉も悲しんではくれるだろうか。
そう考えると普通に怖い。
恐怖を克服する方法はまだいくつかあると思う。
死を覚悟する事だ。
死でなくとも、最悪のパターンさえ想定し、覚悟さえしてしまえば、案外冷静になれたりするものだ。
僕が死んだからと言って世界が崩壊するわけでもあるまいし。
世界から、宇宙から見たら、そう大騒ぎする事ではないのだ。
とまぁそんな感じ。
と言ってもまぁ死にたくないからな。
出来る限りのことはする。
息を大きく吸ってゆっくり吐く。
深呼吸。
呼吸は大事だ。
物事は理解が必要で、理解するには脳を動かす必要があり、脳を動かす為には酸素が必要で、酸素を取り込む為には呼吸をしっかりせねばならんという訳だ。
当たり前の事だが、混乱、緊張している時こそ呼吸が浅くなっているものだ。
僕はゆっくり息を吸い、静かに息を吐いた。
落ち着け・・・落ち着け・・・。
覗き窓から覗いても簡単に見えない場所にゆっくり動き、またゆっくり呼吸した。
今度は気配を消すのだ。
僕の出来る数少ない行動。
最善を、今出来る最善を尽くすのだ。
「セレン、大丈夫か。」
父の声だ。
しかしここでひょいと出て行っていいものか。
父の声と似ているだけかもしれない。
もう一人の足跡の正体もまだ明らかになっていない。
普通に考えてミリダンだろう。
が、冷静になって考えてみる。
考えるに、僕が返事をして正直いい事がないという結論に至った。
父が本物だった場合。
僕が返事をしても返事をしなくても、この場所を知っているだろうから、どうせ助けてくれる。
反対に偽物だった場合。
僕が返事をしたら完全に悪手だ。
居場所がバレて殺されるとか。
悪い事しか起きない。
そして僕は気配を殺す。
まもなくザクザクと音がして掘られた壁の穴から光が漏れて来た。
しかし、ヤツが壊している場所はさっき父が塞いだ場所ではない。
普通ふさいだ場所を壊さないか?
やはり父ではないのか!?
ドキリとして緊張が走る。
・・・まぁ、なるようになるか。
出来る限りのことはやったのだ。
悔いはない。
ガラガラガラ・・・。
大人一人の上半身がすっぽり入る程の穴が空いた。
逆光で誰だか分からないが、誰かが顔を覗かせてこっちを見た。
ギョロギョロと目が光って見えるのは気のせいだろうか。
「お、居た。セレン、お前、魔物の肉食った事あるか?」
「あぁ・・・。無いです。」
「そうか。」
肉ねぇ。
呑気なもんだな。
あと・・・そだな。
帰って来てくれてありがとう父上。
あとは・・・。
そだな。
頑張ろ。




