第2話 転生したけども・・・。
山田は目の前の光景に困惑していた。
異世界の光景ではなく見慣れた職場だったからだ。
「・・・大石リーダー?」
「山田、お前入院中だったんじゃないのか?!」
山田は大石から現状を詳しく聞いた。
3ヶ月前に階段から落ちて意識不明で入院していた事。
その間に社員が2人やめ売場が厳しい状況である事。
「とりあえず休職扱いになってるから事務所に行って話して来い。問題ないなら早めに売場に戻ってくれると非常に助かる!」
「はぁ・・・。」
山田はそのまま事務所に行くと周囲にかなり驚かれたが、電話を借り実家に電話をした。
「もしもし山田ですが。」
「母さん?俺、太郎だけど。」
「太郎?!あんた今どこにいるの?!昨日、病院の先生から急にいなくなったって連絡があったのよ!」
母親に確認すると意識不明の状態で、突然ベッドに姿がなく、病院でも騒ぎになってる様だった。
「元気みたいだけど、辛かったりしたら実家に戻ってくるのよ。」
「・・・ありがとう。また連絡するよ。じゃあね。」
山田は母親との連絡を終えると、事務所スタッフにまず明日病院に行き、問題がなければ明後日出勤する事を伝え職場を後にした。
大家に家の鍵を空けて貰い、部屋に戻ると山田はベッドに倒れ込んだ。
(はぁ・・・。あれは夢だったのか・・・。)
女神アルテとの会話を思い出しながら山田は、普段と変わらない現実を感じていた。
(とりあえず明日、病院に行って問題がなかったら、明後日から会社・・・。これなら意識不明がよかったんじゃないか・・・?
)
ーヤマダ タロウよ。聞こえますか?ー
聞いた事がある声が山田の頭の中に響き渡る。
(!?まさか女神様?!)
ーそうです。無事転生出来た様ですね。ー
「転生って・・・。前と一切変わってないんですけど?!異世界に飛ばされるんじゃないんですか?!」
ー異世界?私はあなたに救いを求める世界に転生させただけですが?ー
「えっ?どういう事ですか?」
山田が入院してから3ヶ月大石は苦悩していた。
(はぁ・・・。山田が入院してから売場がまわらん・・・。それを理由に2人もやめてしまった。マネージャーも俺も限界だ・・・。山田がいればまだましだったのに・・・。クソ!どうにかしてくれ!!!)
ーその願い承りました。ー
(?!何か聞こえた様な・・・。)
そう、売場がまわらない大石の願いが山田を転生させたのだ。
「えっ?じゃあ売場が厳しいから俺はそれを救うため転生したんですか?」
ーそうです。ー
「しょっぼ!俺がいなくてもどうにかなるでしょ?!そんなん!」
ーですが、あのうり・・世界はあなたの助けを求めていました。ー
「今、売場って言おうとしませんでした?!」
ー・・・・と、とにかく、彼を救うためにあなたは転生したんです!ー
「規模が小さい!全然救いたいと思わない!」
ーそう言わず、便利なスキルを授けましたので頑張って下さい!ー
「・・・どんなスキルですか?」
ーステータスと言って見てください!ー
「・・・ステータス!」
山田がステータスと唱えると、HPとMPと書かれたバーが2つ、目の前に現れた。
「・・・・これは?」
ーあなたのステータスが見れます!HPはあなたの体力、MPはあなたの精神力を表しています♪ー
「・・・。」
ー因みにHPが0になると死にますし、MPはスキルを使ったり、精神的に良くない事があると減って、0になると発狂します。体調管理に役立ちますよ♪ー
「そんなファンタジー要素いらん!!!」
山田は怒りの叫びをあげた。
怒りと共に徐々に減って行くMPを見て、さらに怒りに燃えるのであった。
翌日、病院に行くと医者から「異常はありません。むしろ健康です。」と言われ、明日からまた働かなければならないと山田は嘆くのであった。
ー第2話 完ー