表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

第九話

 四番目の勇者を、倒された都市の守備隊は、潜入した部隊の働きもあり、あっさりと降伏した。

 犯罪を犯した者以外は、開放する。

 他国の王族や政治犯、フロー王国を出たいものは、一旦アレイルに逃げてから考えることになった。

 素早く移動を開始する。


 しばらくすると、地震が起きた。


「2回目の”大地の怒り”ですわ」


「5回の”大地の怒り”で何かの封印が解けると言っていたが、大丈夫だろうか?」


「世界が滅びます」


 滅ばれても困るのだが・・・。


 無事、アレイルまで逃げ延びた後、地方都市”エア”にいる。

 これからどうするか相談をした。


「いま、フロー王国は正宗がアルフ王を脅したのと、四番目の勇者が倒されたことで弱気になっている」

「救出した、他国の王族と話し合って、反フロー王国の同盟軍を作るべきだと思う」

「同盟軍の代表として”正宗”になって欲しい」


 元々フロー王国より大きな国だったアレイル王国で、今年だけで通常の1.5倍の小麦の収穫があった。

 フロー王国にうらみのある周辺国に支援も可能である。


「代表はともかく、フロー王国を止めるのには賛成だ」


 周辺国に、同盟軍の結成と支援を知らせる特使がアレイル王国より出された。


 一か月後、反フロー王国の同盟軍が結成された。

 今は、秋の終わり。

 春を待ってフロー王国に攻め入ることが決まった。



 正宗は、地方都市”エア”の正宗が寝泊まりしている館の廊下を一人歩いていた。

 時刻は夜中である。


「むっ」

 廊下の暗がりから黒塗りのダガーが飛んでくる。

 手でダガーをはじいた瞬間、背後の影から立ち上がった人物に背中から刺された。

 振り向いたときには誰もいない。


「ふむ。”影渡”は有効か」

「刃が通らない」

 つぶやきが聞こえて来る。


「誰だ」


「2番目の勇者。暗殺指令が出ている」


「こちらに来ないか?戦う理由がない」


「依頼を受けた。依頼は絶対だ」


 2番目の勇者は”アサシン”か。対人レーダーが効かなかったな。

 その場は、引き下がったようだ。


 寝室に帰るとレイリアが待っていた。


「おかえりなさいませ。正宗様」

 口づけを交わしてから、目が覚めると確実に横で寝ているので、慣れてしまった。

 まだ一緒に寝るだけである。


「2番目の勇者に会った」


「まあ。暗殺者の方ですね」

「”侵入禁止”の結界を張りましょうか?」

「月の巫女の褥は、絶対不可侵ですわよ」


 色々思うところもあるがお願いすることにした。

 ベッドに入ると当たり前のように隣に滑り込んでくる。

 いい香りと柔らかい感触がした。


「私を好きになさってもいいのですよ。正宗様」

 耳元で囁いてきた。


 少しかわいそうな気がしたが、精神の状態を強制的に”平常”でブロックした。

 この方法には限界があるが、最近は限界が来てもいいような気がしている。

 気持ちがいいので抱きしめて寝ることにする。


(うふふ。焦らしプレイですわね。果報は寝て待てですわ)


 次の日から、2番目の勇者の攻撃が始まった。

 食事には毒が盛られ、物陰からは毒が塗られたダガーが飛んでくる。

 どこまで本気でやっているのかわからないが、2番目の勇者についた月の巫女が必ず、近くに隠れているので、来たときは分かるようになった。

 こだわりなのか、プライドなのか、自分以外を絶対に狙わないことが分かる。

 最近は”毒”の情報が沢山収集出来て、現れるのを心待ちにしているような気がする。


 半月ほどして、そろそろ毒の種類が尽きたかなという所で、夜の庭に出て誘ってみた。

 勇者の反応は無いが、月の巫女の反応はある。


「・・・耐え切れなくなったか」

 どこからともなく声がする。

 

 真正面の物陰から、黒い炎のようなものをまとった短刀を片手に、2番目の勇者が出てくる。

 黒い服を着て、顔には髑髏を模した白い仮面をつけていた。


 突然横から斬りつけれる。

 同じ姿をした勇者がいた。


「ジュッ」という音と共にソフトスキンが焼き切られる。


 同時に、正面の勇者が走りこんで斬り掛かってくる。 

 交わした先のもう一人の勇者に背中を斬られた。


ミラージュボディー(幻影体)

 ボソリと言う。


 今、正宗は合計5体の勇者に、休みなく斬りつけられている。

 斬られたソフトスキンは即座に回復に入るが、むき出しになったメインフレームが目立つようになってきた。


「データ解析終了。そこだ」

 正宗は、自分の足元の影に腕を突っ込んだ。

 相手の結界を侵食しながら、本体の勇者の、のどもとを掴み、影から引きずり出す。

 短刀で支えた腕を斬ろうとするが、メインフレームに傷一つつけることは出来ない。

 正宗は、顎の先を空いた手で引っかけるように殴り、意識を刈り取った。

 その時の衝撃で、白い仮面が粉々に砕け散った。

 意外と若い顔をしている。

 ミラージュボディー(幻影体)も消え去っていた。


 隠れていた月の巫女が大慌てで出てくる。

 涙目でこちらを見た後、小柄な体をさらに小さく畳むように、無言で”土下座”をした。


「”毒”の情報を沢山くれたしなあ」

 そっと勇者を巫女の前に横たえた。


 巫女が何度も頭を下げながら、勇者を回収していった。

 小柄な体で、勇者を運ぶのは大変そうだが


「手伝うわけにはいかないよな」


 つぶやいた後、寝室に帰った。


 しばらくした後、3回目の”大地の怒り”が起こった。


2番目の勇者の隷属の腕輪は、痛みに耐えるため意味がないものになっている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ