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第八話

 四番目の勇者の襲撃の次の日、大きな地震があった。


「大地の怒りです」

 自分の左肩のすぐ近くから声がする。

 四番目の勇者を襲撃の後から、レイリアが引っついて離れなくなった。


「月の巫女にあれだけのことをしたからなあ」

 ガーランドが笑いながら言う。


 時々、熱っぽい目でガーランドを見ているマガリアに、気づいているのだろうか?


 バイクを自走状態にして、レイリアの馬で、レイリアを膝の上にのせて移動している。

 無言で見上げてくるレイリアの視線に逆らえない。

 悪い気は全然していないのだが。


 約三日の移動で”鋼の絆”団の根城、”シラル城”に着いた。

 団員、約500名。

 フロー国の騎士団が勇者に頼りきりになり、腐敗した後、治安や魔物退治を代わりに行ってきた。


「団長。本国の穀倉地帯が回復したっていうのは本当ですか」


「ああ。ここにいる勇者の”正宗”様が直してくださった」

「本国はもう大丈夫だ」


「よく見ると、マガリア様も一緒じゃないですか」


「二人とも正宗様に剣を捧げている」

 

「おおお」


「近いうちに本国に帰るぞ」


「おおおおおお」


「その前に、正宗様から、来年の勇者の生贄200名が、”大監獄”に収監されていると聞いた」

「”鋼の絆”団のこの国の最後の仕事は、生贄の救出だ」


「おおおおおおおおおお」 


「ここは引き払う。出発は、明後日の朝だ。準備しろ」


 精鋭500名の傭兵が”大監獄”攻略に動き始まる。



 ”大監獄、トリニア”

 城塞都市を丸々一つ監獄にしたもので、駐屯している騎士は、約1000名。

 出世から外れた騎士の左遷先であるため士気はすこぶる低い。

 他国の王族や政治犯も、多数収監されている。

 

 ”鋼の絆”団、輜重隊100名を覗いた、400名で攻略予定である。


「大丈夫ですか。隊長」

 基本、城攻めは三倍の兵力がいる。


「1000名と言っても三分の一は、騎士ではなく看守だ」

「声をかけると寝返る騎士もいると思う」

「勇者である、正宗様もいるしな」

「声をかけるだけでいいんでお願いできますか?」

 それと古い下水道から都市内に、潜入が可能なので、潜入が得意なものを、20人ほど送りこむことになった。


 正面門に”鋼の絆”団が集まる。

「門を開けろ。こちらには、アレイル王国で奇跡を起こされた勇者様がいる」

「勝ち目はないぞ」


 門の上の城壁から声がする。

「鋼の絆”団。裏切ったのか」

「残念だな。こちらにも勇者はいるぞ」

「トオル様。よろしくお願いします」 


 四番目の勇者様、”トオル”だ。


「その女。死ななかったのか。まあいい、二人とも今度こそ殺してやるよ」


「全員、射程距離の外までさがれ」

 団員を下がらせる。

 目に仕込んだレーザービームの射程距離を正宗に教わっていた。


 正宗とレイリアだけがその場に残った。

 

 レイリアが緩やかな舞を舞いながら、”神鏡”の祝詞を唱える。

 正宗はゆっくりとレーザーライフルを構えた。

 正宗は、前回のリベンジをレイリアに頼まれたのである。


「うふふ。月の六番目の巫女、”レイリア・アングレウム”参ります」


「ああ。なめてんのか、てめえ」

「まあいい。・・・てめえより先に勇者を殺してやるぜ」


「勇者様。あの舞は・・・」

 四番目の巫女が言おうとするが


「うるせえ!」

 右目から、ビームが正宗に伸びた。


 レイリアが舞いながら、祝詞をあげ、腕を向ける。

 正宗の前に、八角形の神鏡(ミカガミ)が現れた。

 神鏡(ミカガミ)が跳ね返したビームが、城壁に横に一の字を書いた。


「次は、外しません」


「があああ。次はお前だ」

 レイリアに向けてビームを発射させた。


「勇者様。駄目です」

 巫女が、トオルを押しのけようとする。


「邪魔だっ」


 今度は神鏡(ミカガミ)が三枚現れ、三回ビームを反射させ、正確にトオルと巫女を貫通させる。


「馬、馬鹿な」


「ごふっ。神鏡(ミカガミ)は・・・一枚だけでは・・・ありません」

 折り重なったまま二人は絶命した。


「四番目のお姉さまは、一緒に逝けて本望ですわね・・・?」


 正宗は少しの間、無表情に涙を流しているレイリアの顔を、自分の胸で隠した。

レイリアは巫女の中で一番の武闘派です。

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