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第七話

 その後、王都を出るときに色々あったが、四人は王都から少し離れた街道沿いで野営をしている。


「さて。これからのことだが、俺の傭兵団”鋼の絆”の根城に行ってくれないか」


「信用できるのか?フロー王国のやつらなんか」


「あー。”鋼の絆”団は、奴隷にされたアレイルの国民を買い戻すために作ったんだ」

「大半はアレイルの国民だぜ」


「・・・ガーランド。ありがとう」

 涙ぐんでうつむいたマガリアの頭をガーランドが優しく撫でる。


「二人って?」


「ああ。幼馴染だよ。親父同士が仲良くてな。妹みたいなもんさ」

  

 一瞬、マガリアが不満そうな顔をしたが、頭を撫でられる方を優先したようだ。



 正宗は、月の女神の”裏聖典”について、レイリアと話し始める。

 特に、召喚陣と元の世界の帰還の方法についてだ。


”月の女神に召喚されし勇者”

”月の巫女に愛されし者。この地グランセルは、最高にして、()()()()()とならん”


 スラスラと聖句を読み上げる。

「月の女神ルミナさまが、一度手に入れたものを簡単に手放すとは思えませんわ」


 確かに帰還のことは欠片も書かれていない。


”彼の者、巫女の血満ちて、5度の大地の怒りにより復活せん”

”彼の者とは、月を食べし者なり”


「うふふ。その時は存分に私の血を使ってくださいましね・・・」

この娘の中では、自分が世界を滅ぼすことは確定しているのか。


「帰還の手段か。あるにはあるんだが・・・」


「あるんですかっ」

 涙を貯めた目を上目遣いに見てくる。


 正宗は、そのしぐさにドキリとした。

 レイリアは好みのタイプであるし、可愛いと思う。

 色々行き過ぎた所がなければだが。


 コール(呼び出し)、サンダードラゴン。


 バイク(サポートビークル)すら失われた危機的状態で出す救難信号。

 次元震を利用した信号は、全宇宙的に異世界にすら届くはずだ。

 ただ、24時間、生命が維持出来る分だけを残して、全てのエネルギーを使う。

 その時のエネルギー放出はすさまじく、竜が空に上っていくように見えるため、そのように呼ばれている。

 ちなみに、24時間以内に救助が来ないと、死亡が確定する。


「簡単には使えない。最後の手段だよ」

 何故か、レイリアを宥めないといけないような気がした。



 アレイル王国に近い場所にある、放棄された城。”シラル城”

 シラル湖のほとりにあるためそう名付けられた。

 そこが”鋼の絆”団の根城である。

 

 今、四人は馬とバイクに乗って、シラル城に向かって移動している。


 街道の先に、黒い服を着た男と白い服を着た小柄な女が通せんぼするように立っていた。

 少し離れた所に乗ってきたであろう馬が木に繋がれている。


「よお。6番目の勇者」

「4番目の勇者、トオルだ。少し話をしないか?」


 四人が乗物から降りた。


「6番目の勇者、何が不満なんだ」

「この世界ならやりたい放題だろ」

 隣の小柄な女を見る。胸には三日月の紋章が入っていた。

 怯えたようにびくりと体をこわばらせる。


「・・・仕事をしているだけだよ」


「んん?仕事?」

 意外な答えだったのか怪訝な表情をして

「まあいいか。あんたに、アルフ王から抹殺指令が出てるぜ」


 次の瞬間、トオルの右目からレーザービームが発射された。


「危ないっ」

 レイリアが正宗を突き飛ばした。

 

 レーザービームは、レイリアの右の鎖骨の下と、正宗の左手のソフトスキンを風船のように破裂させながら、通り過ぎた。


「レイリアッ」

 自分の胸に抱きかかえる


「うれしい・・・初めて名を・・・呼んでください・・・ました」


 正宗の脳内に表示された、レイリアのバイタルサインは真っ赤になり、死亡まであと30秒。

 カウントはどんどん減って行く。

 正宗は、周りの人の遺伝情報を(アルフ王ですら)収集している。

「貴女の遺伝情報が欲しい」

 前の世界のプロポーズの言葉が引っ掛かり、レイリアからは収集していなかった。

 遺伝情報がない限り、ナノマシンでの治療は無理だ。


「レイリア」

 彼女の顎に手をかけて、舌を絡ませる深いキスをする。

 彼女の唾液と口内の細胞から、遺伝情報をリアルタイムに解析、即座に回復に入る。

 傷口が薄く輝きながら、みるみる塞がっていく。


 レイリアは最初、ビクッと体を強張らせたが、すぐ目を閉じて体の力を抜いた。


 傷口が治った後もしばらく口を合わせ、「ぷはっ」と唾液の糸を引きながら離した。


「しばらく、おやすみ」

 レイリアの体内にあるナノマシンに睡眠を指示しながら言った。



 正宗たちが打たれた次の瞬間、マガリアは手に持った畳のような盾を、構えて前に出た。


「スキル、”大楯”」

 盾を中心に白い防御障壁が、展開される。

 そこに再チャージの済んだ、レーザービームが突き刺さる。

 ドラゴンのブレスですら防ぐ防御障壁が一発で消滅した。


「取ったっ」

 ガーランドが、抜剣しながら走り込み、トオルに斬りつける。

 次の瞬間、トオルは隣にいた月の巫女をぶつけるように盾にした。

「くっ」

 ギリギリ剣を止める。


 トオルが足元にレーザービームを打ち、煙幕兼石礫とした。

 またしても、月の巫女を盾にしている。

 

 ガーランドは盾で石礫を受けた。 


 トオルは、その隙をついて、後ろに繋いでいた馬に乗って逃げ去った。


「また会おうぜえ」


 二人は、トオルを追おうとしたが、正宗に横抱きに抱えられているレイリアを見て、追うのを諦めた。




目からビームは、正宗にも出来ます。

まぶしいのでやりませんが。

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