第五話
次に、アルフ王に言われたのは、アレイル王国の元首都エクシルの調査だった。
アレイル王国は、元々グレン大陸一の大国だったが今はこの国に降伏している。
何故、元首都かというと、3年前に謎の大爆発によって一日で壊滅してしまったからだ。
「流石にそれはちょっと無いんじゃないですかねえ」
ガーランドが大声を出した。
周りの人間がざわめいた。
衛兵が剣に手を掛けようとしたとき、
「構わないよ」
正宗が言う。
「しかし、知っているのか。あの国は……」
「一度、調査する必要があると思っていたんだ」
「しかし……分かった。どうなっても知らんからな」
次の日、三人はアレイル王国へ旅立った。
大体馬で1週間の距離である。
「正宗。アレイル王国の首都エクシルはな。魔力の高い勇者の魔力を、わざと暴走、爆発させて壊滅させられたんだ」
「お前もつけている”隷属”の腕輪を使ってな」
「これのことだろ」
腕輪を見せる。
「魔法爆弾と呼んでいたよ。趣味の悪いことだ」
「知っていたのか。じゃあこれは知らないだろう」
「この国が一番、勇者を憎んでる。無事には帰れないぜ」
「二人は残るか?」
ガーランドとレイリアに聞いた。
「いや、あそこには昔のなじみがいる。会ってみてもいい」
「逝くときは一緒です。それに言っておきますけど”隷属”の腕輪は月の巫女にも発動可能ですよ」
「元々、月の女神の嫉妬の加護ですから」
三人がアレイル国に入ってしばらく行った所にある森の中だった。
「囲まれてるな」
正宗が周りを見回すと同時に、木の影や茂みから一斉に武器を持った兵士が出てくる。
「月の巫女と一緒。勇者か」
隊長らしい男が、苦虫をかみつぶしたように言った。
「ついてきてもらおう」
連れていかれたのは、騎士団の野営地だった。
その中でも一番大きいテントに案内される。
テントの中にいたのは、白いアーマードレスを着た大柄な女騎士だった。
白い肌と金髪。身長は高いがスタイルはよくスラリとしている。
傍らには、畳の様な盾と、ウオーハンマーが置いてあった。
「元近衛騎士団、団長マガリアだ」
「勇者がいまさら何のようだ」
エメラルドグリーンの目が睨みつける。
「久しぶりだな」
「ガーランド。お前生きてたのか」
「ああ。今フロー王国で勇者の見張りをしている」
「……で何番目か知らないが、勇者は何をしに来た」
「首都エクシルの調査に」
「ふんっ。お前たちが何をしたのか。案内してやる」
次の日、マガリア達に案内されたのは、小高い山の上だった。
王都があった平原が一望できる。
「これは……」
王都があったと言われる場所から、同心円状に黒く色が変わっている。
「見ろ。勇者の呪いだ。黒い部分に入っただけで精神が侵される、不毛の大地だ」
「しかも、年々広がっている。昔は小麦で金色だったんだぞ」
「お前たちのしたことだ」
「勇者様はその時、この世界にはいませんでしたわよ」
そうなんだが、今言うべき時じゃないな。
◆
次の日から、黒い大地に近づいて調査を始める。
1週間ほど調査して、呪いが何なのかは分からないが、対処法は分かった。
確かに少しづつ広がっている。
一応、公社の規則に従って聞いてみる。
「この黒い大地をどうにか出来るとしたら、どうする?」
マガリアに聞いた。
「呪いをどうにか出来るのか。出来るのならやってくれ」
「このままじゃ。この国どころか大陸全土が呪われる」
「分かった。ふふ。奇跡を見せてやる」
テラフォーミングプログラムレベル2まで開放許可申請。
至急土壌改良の必要あり。
バイクのコンピューターに申請する。
”データを照合”
”人命に多大な影響を与える危険ありと認定”
”レベル3まで開放を許可する”
”ファーストビルのために”
ファーストビルのために
<呪いに浸食された土壌を焼却せよ>
バイクの多目的トランクで製造された、焼却用ナノマシンが黒い大地に広がって行く。
全ての黒い部分に広がった瞬間、一斉に虹色に輝き、高温で炙られガラス化した。
<土壌を形成せよ>
土壌形成用のナノマシンが、ガラス化した大地を黒々とした農耕地に変えていく。
<植物よ。地に満ちよ>
収集された、この世界の植物のDNA情報の中で、正宗が選んだのは、”小麦”だった。
クローン製造用のナノマシンが、大地から材料を集め、”小麦”を形成していく。
土の中から小麦が立ち上がり、みるみる内に実っていく。
辺り一面、見渡す限り金色の大地となった。
フィールドオブゴールド