第四話
王に指定された村に来た。
村に隣接する森に、ゴブリンが出るので退治してほしいとのことだ。
ゴブリンの巣になっているという洞窟を見つけた。
洞窟の前に3メートルくらいの身長の人型生物が二体いる。
「あれがゴブリンでいいのか?」
「いや、あれはオーガーだ」
「オーガー?」
「下級の巨人族の一種だ。まずいな、オーガーがいる以上、主人であるダークエルフがいる場合が多い」
「どうします。三人で倒すのは難しいと思いますが」
「多分、洞窟の中にもまだいる。王に嫌われたなあんた。ここでつぶす気だぜ」
「どうする、一旦街に戻って人を集めてくるか?」
オーガーとダークエルフに対抗するには、バランスの取れた6人パーティー二つは欲しい。
「人に害をなすのか?」
「オーガーの主食は人間だ」
「そうか」
「殲滅するよ」
バイクのリアシートの左右についている、四角い多目的トランクの一つをとり外し、下半分を左右に開いて、レーザーライフル状態にした。
隠れていた茂みから、立ち上がりレーザーライフルを二回打つ。
オーガー二体の額に黒い穴が二つ空いた。
ズウンと大きな音を立て二体が倒れる。
「瞬殺?!」
倒れた音に気が付いて、洞窟内からオーガーが3匹出てきた。
それと
「目には見えないが、人型生物が4体。ダークエルフか?」
「まずい。透明化の魔法だ」
ガーランドが実戦重視の盾と剣を構える。
レイリアは、両手に持ったロングフレイルを構えた。
「えっと。人に害は?」
「オーガーに餌をやるのが、ダークエルフだ」
「わかった」
見えなくなっても、サーモグラフィには、はっきり映っている。
前を向いたまま、ライフルを持っていない右手を横に突き出した。
姿を消していたダークエルフの顎にクリーンヒット。
しばらく地面を転がった後、動かなくなった。
「〇◇×▽!!」
三体のダークエルフが、突如近くに姿を現し、短剣で一斉に斬りかかってきた。
レーザーライフルの銃身の下に着けられた、高振動ブレードで迎撃する。
迎撃しながら、ダークエルフのスキをついて、近づいてきたオーガー三体の額に風穴を開けた。
最後に、姿を消して逃げようとしたダークエルフを、レーザーライフルで撃って戦闘は終了した。
全ての死体から、DNA情報を収集するのを、忘れない。
「凄いを通りすぎて、呆れるな……」
「……さすが私の勇者様。お姉さまたちの勇者など足元にも及びませんわ」
「姉妹仲が悪いの?」
「自分の勇者様が一番だということです」
(さすが、狂乱と嫉妬の女神)
ほんの少し前
「王様に言えと言われて、ゴブリンと言ったが本当は、オーガーだろう。いいのか村長?」
「仕方ないだろう。オーガーより王様の怒りを買う方が危険なんだから」
三人が森に入った直後の、村人たちの会話である。
その後、無傷で帰って来た三人のために村人総出で宴が開かれた。
◆
王都に帰って王様に報告した。
王は、無事帰ってきたことに失望の表情を隠さなかった。
「ご苦労」と一言、言っただけで、王との謁見は終わる。
王家とは関係なく、冒険者ギルドから、ダークエルフやオーガーに掛かっていた報奨金をもらう。
金貨七枚になった。
いまいちお金の価値が分からない。
悩んでいると、
「明日、街に買い物に行きませんか」
レイリアに声をかけられた。
「行けるのか」
この世界に来てから、完全に軟禁状態だ。外出が許されるとは思えない。
「勇者様との間に”婚姻の印”が出た月の女神の巫女を、誰にも止めることは出来ませんよ」
少し首をかしげて可愛く言う。
「……婚姻の印って」
最初に、胸の前で光ったあれか?
可愛く言ってるがセリフ自体はかなり不穏なんだが。
「……浮気は許しませんわよ」
レイリアの言う通り、外出許可が出た。
朝、城下町の公園で待ち合わせをした。
10分くらいまえに到着すると、同じくらいにレイリアが現れる。
いつものゆったりした司祭服ではなく、襟付きの白いシャツにロングスカートが新鮮だった。
銀髪の一部を三つ編みにして、後ろの回している。
控えめにニッコリと笑った笑顔に、思わず見惚れた。
「うふふ」
その視線に気づいてレイリアは、満足そうに笑う。
レイリアに、街を案内してもらいながら歩いた。
色々買い物をしながら、調査する。
大体、金貨一枚が10万イェン。銀貨が1万イェン。銅貨が1000イェン。小銅貨が100イェン。くらいだと分かった。
司祭服を着ていないのが良いのか、仕事中と休日では態度が違うのか、レイリアは控えめに接してくれた。
夕方まで、普通に楽しく過ごせた。
「私の勇者様は、あまり積極的なのは苦手なご様子」
「別れ際にデートみたいと言ったら嫌な顔はしませんでしたわ」
「落として見せますわよ~。月の巫女の名に懸けて~」
レイリアの作戦は、静かに進行中だ。
無双中。