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第二話

 次の日、王様に謁見の間に呼び出された。


 黙って立っていると

「フロー王国、国王アルフ様の御前である。跪け」

 と太った騎士に言われた。


 素直に跪く。


「言葉が分かるようになったのは本当か?」


 首を縦に振る。

 

「では、勇者よ。我が国は危機に瀕している」

「周りの国は攻めてくるし、北の魔物の森から魔物が出てくる」

「我が国に、戦うために呼び出されたのだ」

「役に立ってくれるな?」


 隷属の腕輪をちらりと見る。


「……元の世界では、生命はとても貴重なものとして扱われてきた。殺す、殺さないは自分が決める」

 跪いて、うつ向いたまま答えた。


「こいつ、偉そうに」


「よいっ。しかし勇者がどれだけの強さを持っているかわからぬ。試させてもらおう」

 

「魔力は知っているか?」

 背がひょろ高い魔術師の男が、台に乗った水晶玉が出してきた。


 首を横に振る。

 

「手を当てろ」

 男にさげすむような表情が浮かんだ。


 水晶玉に手を当てるとほんの微かに光った。


「魔力量、3、下級市民より少ないですね」

 わざとらしくため息をついた。


水晶玉に触った時、生体部分に何かが干渉してきたようだ。記録に残すことにする。


「剣はどうだ」


 首を横に振る。


 すでに、顔に侮蔑の色を隠そうとしない。  

 昨夜の会話から、かなり酷いとは思っていたが、予想以上だった。

 高出力のレーダー波を浴びせて、体の内側から蒸し焼きにしてやろうかと思ったが、情報収集のために我慢した。


「では、何ができるのだっ」

 アルフ王が、こちらを指さしながら言う。


 もはやまともに答える気がしない。

 一応、魔術師の方に向かって言った。


「過酷な環境下での浸透調査」


「バイクの動力炉である”次元振動炉”の暴走による、惑星焼却」

 人類にとって致命的な生物やウイルス、他、何かある場合、星ごと消滅させるのだ。


「なんだそれは。ワクシ―とはなんだ」

 さすがに気味が悪くなって来たようだ。声に勢いがない。


「まあ良い。お前に合わせたいものがいる」

「呼んでまいれ」


 呼ばれてきたのは、身長約170センチの自分より、頭一つ分背が高いがっしりした男と、白いローブを着た小柄な女性だった。

 白いローブの胸には三日月の紋章が入れられている。

 女性と目を合わせた瞬間、女性の胸の前に、複雑な模様が光ながら浮かび出た。


「グランセルへようこそ。私の勇者様。」

 女性が膝をついて言う。

 肩までの、銀髪がさらりと流れた。


「ふん。一応聖女には認められたか。ガーランドと聖女、勇者に説明しておけ。さがれ」

 王は、一瞬、聖女を忌々し気に見た。


  

「こっちだ」と連れてこられたのは訓練場のようだ。

 練習用の武器がたくさん壁に掛かっている。


「俺の名は、ガーランド。傭兵隊の隊長をしている。こっちが」


「月の女神ルミナに仕える巫女、レイリアと申します。6番目の勇者様。何なりとお申し付けください」

 膝をついて、恍惚とした表情で言う。


「えっと」


「あ~月の巫女は大体こんなもんだ。で、勇者様の名前は?」


「ぶふっ」

 思わず噴き出した。


「なんだよ」


「いや。すまん。この世界に来て初めて名を聞かれた」

「正宗だ。遠い昔に作られた(ブレード)の名前からつけられたと聞いている」


「ははは。違いねえ。正宗か。……すまんな」

 ガーランドは、隷属の腕輪を見ながら言った。

「でだ。これから、あの王様に色々やらされるわけだが、俺と巫女の仕事は正宗のサポートだわな」

「武器を選んでくれ。どれだけ戦えるか見てみたい。ま、俺くらいじゃ相手にならなさそうだが」


「う~ん。内緒にしといてほしいんだが、その武器では傷一つつかないよ。あまり目立ちたくないんだ」

 ガーランドが手に持った剣を見ながら言う。

 軍が使う戦闘用のソフトスキンだ。

 正宗の機械の体は、デザートワームの胃袋の中でも、一週間は生存できるように作られている。


 結局、ガーランドの全力の一撃を、何回か素手で受け止めた。


「俺はこう見えても、王国一の剣士と言われてんだがな~」

 微妙に悔しそうにしていた。



 巨大な洞窟の奥深く、見上げるほどに高い氷の壁の前に、白いローブを着た女が一人立っている。

 胸には、三日月の紋章が入っていた。


「勇者様。勇者様。勇者様。なぜ。なぜ。なぜ。私を一緒に連れて逝ってくれなかったのですか」


「あいつらが。あいつらが。あいつらが」


 女は、複雑な装飾の着いた片刃の銀のナイフを、首筋に当てた。


 血で赤く染まった氷の壁の奥に、何か巨大な黒い影があった。

勇者を使い捨てにするタイプの異世界。

ブ○ードランナー。

”表の聖典”には”巫女”ではなく”聖女”と記載されている。

王は、勇者にしか仕えない巫女に、わざと聖女と言っている。

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