第一話
まとめてみました。
惑星開発公社の職員、正宗は見知らぬ所で目が覚めた。
横に、バイクが自立状態で自分で立っている。
開発途中の惑星の砂漠の中を、調査のために走っていたはずだ。
正宗は、脳と生殖器官以外をサイボーク化している。
全身、ソフトスキンを使用しているから普通の人と見わけはつかない。
黒い小手と膝当ての着いたブーツを履いている。
黒い目の様に見えるカメラで周りをスキャンした。
光り輝く円の中にいることが分かった。
その周りに古めかしい服を着た人が複数立っている。
何人かは杖を持っていた。
意識がなかった時間を調べると、カウント自体がなかった。
GPS反応もない。
「どういうことだ」
小さくつぶやいた。
周りの人たちがざわめくが言葉の意味が分からない。
バイクとリンクが切れていたため再接続する。
言葉の意味をバイクに搭載されたコンピューターで検索しても翻訳できなかった。
いつの間にか光の円が消えており周りの人間が手招きしている。
バイクと一緒について行った。
ホールを抜けて一旦外に出る。
バイクはここで留まった。
広い建物の中に入る。
中世のヨーロッパの城のようだと検索して分かった。
では、前にいるのは、王様と王妃様とお姫様だな。
王様は、こちらを見て怒っているようだが何を言っているかわからない。
その日は、寝室に連れていかれ眠った。
メイドが服の着替えを手伝おうとしたが、脱がせ方が分からず諦めたようだ。
◆
正宗の元の世界の話である。
今から二世紀ほど前、太陽が突然赤色巨星化し、太陽系全てを飲み込んだ。
非公式であるが人為的な災害であると言われている。
幸い人類はワープ航法を得ており、居住可能な惑星を三つ発見していた。
人類が太陽系から避難するとき、地球上の全ての生物のDNA(生物の設計図)情報が集められている。
公社には、一つの計画があった。
DNA情報とバイオテクノロジー、テラフォーミング技術を使い、別の惑星にもう一度地球を創る。
人類の妄執に近い計画。
ファーストビル計画である。
残念なことに、二世紀に渡る移民船時代に、DNA情報の一部が失われた。
公社の仕事は、
居住可能な惑星の開発。
地球に似た環境の惑星を探す。
DNA型宇宙生物から、失われたDNA情報を代替えできるDNAを収集する。
ことである。
朝食は、固いパンと具の少ないスープだった。
正宗のサイボーグの体は、バイクのコンピューターとリンクして、経口摂取でDNAを採取し分析する機能が備わっている。
生体部分がほとんどないため、食料は最低限で十分だ。
パンを食べた。
70パーセントしか残っていなかった小麦のDNA情報が100パーセントになる。
同じように、スープに入っていた玉ねぎも100パーセントになった。
「二つのDNA情報の報奨金だけで一年遊んで暮らせるな」
食べ終わった後、手首に黒いリストバンドをつけろと言われたのでつけた。
その後、城の図書館に連れていかれ、辞典のようなものを渡される。
リストバンドをつけられてから、周りの人間の態度がさらに悪くなったような気がする。
辞書と二三冊の物語の本を、目で見てバイクのコンピューターに送り解析させた。
突然、近くにいたメイドに、この世界の言葉で流暢に話しかけたら、大変驚かれた。
◆
正宗が召喚された日の夜、城の会議室で5人の男たちが話をしている。
「今年の勇者は外れだな」
フロー王国、国王アルフが心底失望したようにため息をついた。
「魔力がほぼ感じられませんね。翻訳の魔法もかかりませんでした」
筆頭魔術師は、使えないと言わんばかりだ。
「前の前の勇者は、魔力だけは高かったから魔法爆弾として敵国に送り付けたんですよね。敵国の首都が吹き飛んだんですよなあ。一度見てみたい」
太った大臣がぐふふと笑う。
「いつも通り、隷属の腕輪は用意してあります。しかし鉄の馬を連れているのは気味が悪い。とっとと使い捨ててしまいましょう」
騎士服を着た、騎士団長だ。
「来年の召喚のために生贄は集めているんだろうな」
アルフ国王は、一人だけ椅子に座らず立っている粗野な男に声をかける。
「げへへ。生贄の候補となる人間を収容する建物が、手狭になってますです」
もみ手をしながら人さらいの頭は言った。
「ふん。大監獄があっただろう。生贄200人くらい簡単に入ろう。美女はわしの所に連れてくるんだぞ」
勇者召喚に生贄100名、予備に100名。大臣が頭の中で計算する。
「適当に恩赦を出して罪人を出すか」
アルフ国王が顎をさすった。
この国に”勇者召喚”の魔法が発見されて6年。
毎年、”勇者”をいいように使い、フロー王国はグレン大陸一の国になったのだ。
「ふーん」
次の日の夜。
この世界の言葉を解析してから、視界越しにバイクに記録した映像や、広域収音モードで収集したデータを片っ端から翻訳している。
上の会話は、記録されたデータの一部である。
正宗の世界のワープ航法は、異世界理論を突き詰めて発見された。
次元的な位置が確定できないから、異世界に行かないだけである。
手首に巻かれた黒いリストバンドを見ながら、
「ここが、ファーストビルでいいのかもしれないな」
この世界にとって最悪の侵入者は、小さな声でつぶやいた。
高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない。
エン〇ドビルではありません。